106、家に帰ろ
106、家に帰ろ
「さあ、乗った、乗った……ピッカピカの新車やでー……へこんだ所も治ってるしー、若返ったみたいキャー」
みんなは早速レジャズに乗り込んだ。最後に乗った五重丸が臨場感パブリックモードをかけ、リーちゃん達の姿はブロックノイズのようにかき消されていった。
「飛行準備かんりょー! ……離陸しまーす……超特急だよー」
レジャズは一気に垂直上昇、家路を急いだ。飛びながらレイちゃんはみんなに尋ねた。
「教えてや、ボクらが気を失っている間に何があったん」
リーちゃん等は、一斉に停電のこと、気絶している間に攻撃されて、レイちゃん達が破壊されたこと、地デジカのフンで魔神オカマをやっつけたこと……等々、競うように話し出した。
「そんなことがあったのか。しかし地デジカのフンで攻撃するとはね、ボクには思いつかない作戦だ。凄いよリーちゃん」
「へへっ」
五重丸に褒められ、リーちゃんは照れたように笑った。
「でも、停電して気を失っている時でよかったね、戦っている時にそんなの喰らってたら死んでるところだったね」
「何言うてんねん、気絶してなかったら、そんなん喰らうようなドンくさい事せえへんわ、ヒョイと避けてドーンとお返ししたるわ」
「ははっ、そうだね失礼、失礼」
などと喋っているうちに、レジャズはリサイクルショップの上空を通り過ぎようとした。と、サンヨーは慌てて、レジャズの胴体を叩き言った。
「あー、ストップストップ! 帰る前に電気釜をヒエール様に渡してDSもらわなきゃ」
「え? 今からいくの?」
「そうだよ。お前だって褒美もらう約束してんだろ?」
「うん……」
「サンヨー君ちょっと待って、あれを見てごらん」
「なんだよ、五重丸」
サンヨーは五重丸の指さした所、リサイクルショップの入り口を見た。いつもなら黄色い電球で縁取られた電光掲示板がピカピカ光っているのだが、今は消えているし店内も真っ暗だ。
「この辺はまだ停電しているようだし、店の中には入れないと思うよ」
「それにもう遅いしさあ、行くのは明日にしようよ」
「ちぇ、しょうがないな、そうすっか」
DSゲットではしゃいでいたサンヨーだが、五重丸とリーちゃんにそう言われ、つまらなそうに腰を下ろし、そしてまた思いついたように身を乗りだした。
「あっ、そうだ、欲しいソフトが増えたからヒエール様に電話して足してもらおっと」
そう言えば、魔神オカマをやっつけ神の御霊を取り戻したこと、まだヒエール様に連絡していないよな。ソフトの追加とかよりそっちの方が先だと思うけど……ま、みんな必死だったし。
仕方ないか。
「あたしもご褒美を変えてもらおうかしら」
「別の物が欲しくなったのか? 何もらうんだよ」
たしか、リーちゃんはシルバニアファミリー用のダイニングテーブルだった。ちなみにミーちゃんは赤い屋根の大きな家、だったよな。
「ううん、もらうんじゃなくって、してもらうんだよ」
「してもらう?」
「そう、してもらうの。レイちゃん達を人間にね」
「えっ、そんなことできるのか?」
「分かんないけど、頼んでみるの」
今回の戦いでリーちゃんは考えた。家電達はいろんな魔法を使えて頼りになるんだけど、他の人には見えないし、長く居過ぎるとバタンキュー状態になっちゃうし。
それに……ずっとずっと一緒にいられるわけじゃない。
もし本体が壊れてしまったら、新しいものに買い替えられてしまうから。
そうなったら、コンセント抜かれて廃棄処分。永遠にサヨナラだ。
でも、
もし、人間にしてもらえたら、ずっと友達でいられるし、そう、魔法は使えなくなっちゃうかもしれないけど……
別にいいの。
ずっと友達でいられるなら……
「そっかぁ、あんたにしてはいい考えね。でもちょっとムズイお願いだし、わたしも赤い屋根の家はやめて、それにするわ。2人分のお願いならヒエール様も聞いてくれるでしょ」
「……お姉ちゃん」
「ちぇ、しょーがねーな、DSは母ちゃんに買ってもらうから、オレの褒美もそれでいいや。3人分なら絶対聞いてくれるだろ」
「じゃ、オレも」
「僕もそれでいいよ。これで5人分だ、絶対叶えてくれるよ」
「ううっ……」
リーちゃん達の話を聞いてレイちゃんは胸がジーンと熱くなった。冷蔵庫だけど熱くなった。
人間か……全然覚えてないけど、冷蔵庫になる前はボク、人間やったみたいやし。
タマシールの力で冷蔵庫になって、リーちゃんが友達になってくれて、一緒に遊んだり魔神オカマと戦ったり……もし今度、人間に生まれ変わったらこの記憶もまた消えてしまうんやろか?
それでもまたリーちゃんと友達になれるかな?
「レイちゃん、通り過ぎたよ。東芝のマンションそこだよ」
「え? ああごめんごめん」
レジャズちゃんは慌てて引き返し、駐輪場の奥で東芝とトコちゃんを下ろした。
「じゃあ東芝、また明日ね。トコちゃんもゆっくり休んでね」
レジャズちゃんはソニーの家に向け出発。大通りのガソリンスタンドに明かりがついているのが見えた。町の停電も徐々に復旧してきているようだ。
「ソニーもまた明日、ダイさんお疲れさま~」
二人を送り届けたリーちゃん姉妹とサンヨーは、いつものように玄関の横に着陸し、家と家の隙間にこそっと降りた。
「はぁ~、母ちゃん怒ってるかな」
「そうね、覚悟して帰らなきゃ」
「ちぇっじゃまた明日な」
サンヨーはそう言いながら道路を渡り、インターホンを押した。何を言っているのか分からないがお母さんの騒がしい声が、リーちゃんの所まで聞こえる。
サンヨーは振り向き、変な顔をしてこっちを見てきた。まもなくしてドアが開き、お尻を掻きながら中へ入っていった。
「あ~ぁ、あたし達も怒られるのかしら」
「ボクらがお母さんに見えるんやったらボクが謝ったんのにな」
ピンポーン
「ただ今帰りましたぁ、開けてー」
返事はなかったが階段をトントン下りてくる音が聞こえる。リーちゃん姉妹は、一応申し訳なさそうな顔を造り、鍵が開くのを待った。
ガチャ
「あーら、お二人ともお早いお帰りで」
「ごめんなさぁい、オヤツの時間には帰ろうと思ってたんだけど……」
「後ろにいる冷蔵庫君とかが、もっと遊ぼって言ったの?」
「違うの、遊んでたんじゃなくって……え?」




