105、バレちゃった
105、バレちゃった
「あーあ、とうとう見られちゃったねー」
「見られちゃったねー、じゃねぇよ。でっかい声出しやがって」
「だって、カマキリだよ? こーんなのが目の前に……」
魔神オカマを一撃で真二つにした奴が何言ってやがるコノヤロ……と男子達は思った。
まあ、見られたっていっても戦闘スーツを着ていたので、どこの誰かってのはバレていないと思うが、空を飛んでいるのを見られたのは非常にまずい。
「僕が聞いた話では、UFOでやってきた宇宙防衛軍が、侵略者をやっつけて帰っていったってことなんですけど」
「いや、オレの聞いた話だと、実はその防衛軍が一番の悪者で地球を明け渡さないと、地球をカチ割るって脅してきたらしいぞ」
「えっ? そ、それじゃ地球人は全員殺されちゃうんですか?」
「さあな、奴隷にされるか喰われるか分からんが、今空を飛んで行ったのは絶対その宇宙人だ」
「ど、どうしましょう、警察に連絡しますか?」
「いや、宇宙人は何処かに行ってしまったし、通報しても仕方ないだろ。いたずらに騒ぎを起こすより、先ずはここを修理しよう」
「わかりました、大急ぎで修理しましょう」
やはり、人の口に戸は立てられぬ。学校の屋上で五重丸プロデューサーが企画した「緊急速報!現実か幻か?謎の円盤UFO現る」で魔神オカマとの戦いを目撃した先生や野次馬に口止めはしたのだが「ここだけの話」的な口伝えにより話はどんどん大きくなり……
宇宙人が地球を侵略しにこの町に来ている。
……などというとんでもない話になっている。
「宇宙人って意外と小さいんですね。僕が聞いた話では、シカに似た大きな動物のようだったってことなんですけど」
「つかまった宇宙人の写真見たことあるだろ? 小さいんだよ、意外と……ほら、口より手を動かせ」
「あ、ハイ」
作業員が、暑さと悪臭に耐えながら壊された設備を修理しているその頃、リーちゃんの家では……
変なメッセージに心が折れそうになっていたお母さんが、おでこに冷えピタを貼り、トリセツを拾い上げ、再度太陽光発電システムの自立運転にチャレンジしようとしていた。
「めげてる場合じゃないわ、晩御飯作らなきゃいけないんだし。そういやミーたちも遅いわねー、おやつの時間にも帰ってこなかったしぃ、どこで遊んでんだろ……えーっとブレーカー落としたでしょ、これ? このボタンっと」
お母さんがトリセツの手順通り、ボタンを押そうと手を伸ばしたその時。
「イェイェイェーイ、どうやら家電達も治ったようだイェイ、準備完了だイェイ」
「わーっ! え? まだ押してないのに、何で?」
「ホッホッホー、お母さーん、お待たせイェイ! ソーラーパワーゴーーッ」
まだボタンに触れていないのに、突然流れ出す音声メッセージ、ってかクセのある喋り方。機械オンチ? のお母さんでもまともじゃないのはすぐわかった。
「対話式って言うのかしら、こういうの。私のこと勝手にお母さんって呼ぶし……顔認証? いやそんなの付いてないはずよ」
ウイーン ココ……コココ……
「あ、冷蔵庫が動いた、よかったー……あれ? ピッカピカじゃん! 新品みたいになってる、何でー?」
「ホッホッホー、お母さん心配するでない、家電の神のサービスじゃイェイ。家電の神なかなかやりよるイェイ」
「サービス? なんの? ちゅーかあんた誰? 私いったい誰と喋ってんのー?」
「我は家を護る家宅の神々イェイ、この度、太陽光発電システムの完成と同時に、そなたの娘リーちゃんの張り付けたタマシールの力により融合されたのじゃイェイ」
「リー? リーが何かしたって?」
「イェイ、まもなくみんなが帰ってくるイェイ。彼らを見れば分かるイェイ」
「? ? ? 彼らって?」
突然神様と遭遇し、パニくるお母さん。
とにかく、周りの家はまだ停電したままだが、松下家だけは太陽光発電の自立運転により電気は回復した。
その頃、山の麓を目指し、飛行中のリーちゃん達は……
「あそこ、あのでっかい看板の裏に降りましょ」
みんなは辺りに人がいないか注意しながら、道端に立っている看板の裏に着陸した。
「ふーっ、飛べるのはここまでね、ここから家まで歩いて帰らなきゃ」
「こんなとこ来たこと無いし帰り道わかんないよ。お前、道知ってる?」
「分かんないけど、向こうの方にリサちゃんの看板が見えるだろ? そっちの方に歩いて行ったら帰れるんじゃないかな」
「わーっ! すごく遠そう。何時間かかるのかしら」
「文句言わないの。あ、それとSRさんはヘブレ―ジボックスに入ってね、目立つから」
「仕方ないわね。嫌だけどそうするわ」
いつも空を飛んで行き来していたので気にしたこと無かったが、家から鉄塔のある山までは、結構な距離があるようだ。子供の足で歩いて帰ると確実に日が暮れてしまう。
しかし、歩くしか手段はない。5人はトボトボと歩き始めた。
少し先に広い道が見える。多分それが大通りだ。とりあえずそこを曲がってみるか……
などと話していたら、リーちゃんのショルダーバッグからギャーギャーと騒がしい声が聞こえてきた。
「わーっ! ここはどこやねん、何か箱の中みたいやけど……ボク死んだ?」
「あっ、その声はレイちゃんか? これは多分コンポーダンボールや。オレは前にも入ったことあるから分かるけど」
「ぼく達は魔神オカマと戦っていて、なぜか気絶してしまったんだ。その後のことはよく分からないな」
「ってかー、これに入れたのリーちゃんなんでしょー? リーちゃーん出してー、わたし達元気よー」
「キャインキャイン」
「あっ、レイちゃん達が目を覚ましたわ、治ったのかしら」
「やったー! これで空飛んで帰れるぜ」
リーちゃんは急いでコンポーダンボールを取り出し、家電達を解放した。
ボボボボボーン
「あービックリした、死んだかと思ったわ。リーちゃん魔神オカマはどうなったん? やっつけたんか」
「バッチリよ、でも大変だったんだから。レイちゃん達もぶっ壊されるし」
「え? ボクぶっ壊されたん! どこが……あれ? 何かきれいになってるし、そこらじゅうピカピカでサラみたいや」
「分からないけど、とにかく早く帰りたいの。レジャズちゃんになって」
「そうだね、もう5時前だし家に帰らなきゃね」
五重丸は画面に時計を表示した。時刻はただ今4時55分。
「わーっ! やべー絶対怒られるわ。レイちゃん早く早く」
「よっしゃまかしときー。ジャブ君、すずちゃん行くでー。せーのぉバビエオ!」




