104、新品同様
104、新品同様
ペコペコ、ベコッ、パキパキパキ……
レイちゃん達を包み込んだ光の中から、鋼板を折り曲げるような音が聞こえてくる。眩しくてよく分からないが、やがて光は4つに分かれスッと消えた。
そこにはキズが修復され、新品同様になったレイちゃん達が横たわっていた。
「フーッ、いっぺんに4体はキツイわね。ちょっと休憩させてね」
そう言ってSR-18は日陰のある木にもたれかかり、腰を下ろした。
「わぁすごーい! みんな元通りに直ってる」
「あちこち傷んでた所もついでに直したから新品同様よ。テレビは新しかったから、たいして変わらないけどね」
神の回復呪文レパリアンの効果は絶大だ。その様子を近くで見ていたダイさんは、木陰で座っているSR-18の所へ行き、ねだるように言った。
「おうおう、Sの字の旦那、ワシのこと忘れちゃいねえか?ワシもちょちょいっと直してくれよ」
「あ、そうだったわね。じゃ、そこに座んなさい」
SR-18はダイさんを正面に座らせ、両手をかざした。すると蛍のような光の玉が無数に現れダイさんの体の周りで弾け、熱でひしゃげた顔はみるみる元通りになった。
依然電気の方が復旧していないため、レイちゃん達は気を失ったままだが最悪の事態は避けられたようだ。
「おぅ、ありがてえ、これで堂々と帰れるってもんよ。サンキュウベリマッチ」
「よお、ところで今何時なんだよ。なんか腹へってきたんだけど」
何事もなければ今日も予定通り空を飛ぶ練習をして、オヤツの時間に間に合うよう帰るはずだった。
ところが突然、魔神オカマの逆襲に遇い、必死で戦っているうちに、随分と時間がたってしまっていた。
山の上なので辺りに時計もないし、腕時計的なものなんか誰も持っていない。
サンヨーの腹時計では大体4時~5時くらいかな?
「とにかく帰りましょ。リー、レイちゃん達をコンポーダンボールに入れて」
「うん……でもお姉ちゃん、どうやって帰ろうか」
「どうやってって、空を飛んで帰るしかないでしょ。家まで遠いし」
「丸見えで? これ着て飛んで帰るの? すごく目立つと思うけど」
「あ」
そうだった。いつもなら五重丸の臨場感パブリックモードで姿を隠してもらい、空を飛んでいたが、停電で気絶しているので魔法が使えないのだ。ちっこいヒーローと電気釜が群れなして空を飛んでたら間違いなく大騒ぎになるだろう。
「リー、もう魔法使えないのかよ」
「ムリ、B-CASカードはもうないから魔法は使えないわ」
「ワシもそんな気のきいた魔法は使えねえしな」
仕方がない。
人気のない山のふもとまでは飛んで行って、そこから家まで歩くか……何時に帰れるんだ? 怒られちゃうよ……
遅くなった言い訳をどうするか話し合っていると、山道の奥の方から自動車の走る音が近づいてくるのが聞こえてきた。
「ウソッ、誰か来るぞ」
「ヤバイ! 隠れなきゃ」
リーちゃん達は、変電設備の裏へと走った。生い茂る雑草の隙間から山道の方を見ていると、オレンジ色のライトバンが現れた。車はフンの山を見て急ブレーキをかけて止まり、電力会社の作業員が飛びだしてきた。
「わっ! クセー、何だこりゃ? 何かのフンみたいだけど何でこんな山のようになってるんだ? この前はこんなの無かったぞ」
「主任見てください、フンだけじゃないっすよ、電子レンジやら何やら、いっぱいあります。不法投棄ですよ」
「悪質な産廃業者が、トラックで大量に投棄していったんだな。本部に連絡しておこう」
「フンは? フンの山はどうします?」
「それも報告するけど、どうしょうもないだろ、自然の物だし。とにかく点検して修理をするぞ。アラームはここから出ているんだからな」
そう言って作業員は工具箱を手に持ち、リーちゃん達が隠れている変電設備の方へ歩いてきた。
「うわっ、ヤバヤバ、こっちに来るぞ」
「シーッ、みんな静かにもっと低くなって。あの人らが機械を直し始めたらスキを見て飛ぶわよ」
ミーちゃんの言う通りみんなは、草むらに這いつくばるように隠れた。作業員はリーちゃん達には気が付いていないようで、鉄塔を囲っているフェンスの鍵を開け、キュービクルの方へ歩いて行った。
「よしよし、気づかれてないわ。みんな、あの人らが機械の扉を開けたら逃げるわよ」
みんなはうなずき、作業員の動きに注目した。
鬼ごっこでもしているような、このスリルにちょっとワクワクしてきた。
リーちゃんもドキドキしながら前を見ていると、目の前に……ん?
でっかいカマキリがぴょこっと、カマを構えて現れた。
「きゃーー! 虫! むしー! カマキリいやーっ!」
「バカッ! でっかい声出すなって、見つかるだろ」
と、注意してももう遅い。しっかり見つかってしまった。作業員は作業を中断し、リーちゃん達が隠れている草むらの方へ走ってきた。
「誰だ! そこにいるのは! あれ? 子供? 君たちこんな山奥で何をしているんだ」
リーちゃん達はあたふた逃げ出そうとした。怒られる、警察だ、死刑だぁー!
絶望的な単語が頭の中を駆け巡る中、ダイさんが大きな声で言った。
「おめえら、ジタバタするんじゃねえ! ここはワシとトコで何とかするから、堂々と飛んで逃げろっ! もうヤケクソでぃ」
もちろんダイさんの声は、作業員には聞こえない。ダイさんは作業員の後ろに回り込み、吸い込み口を構えた。
「サイクロンバキューム!」
「わっ、なんだ? 前に進めないぞ? てか、後ろに引っ張られてるみたいだぞ」
「何が起きてるんだ、あっ主任、あれ……」
「勝手に雪ウサギ! 団体さーん」
ダイさんに吸い込まれ、よろける二人の頭上に大量の雪ウサギが降りかかる。作業員の悲鳴が山に響き渡った。
「こら! おめえら面白そうに見てんじゃねー、さっさと飛べぃ!」
「あ、そうか、みんな行くわよ、それっ」
あまりに面白いので、つい見行ってしまっていたリーちゃん達は我に返り、とりあえずカッコいいポーズを決め飛び上がった。
「あ……飛んだ! 子供らが飛んで行きましたよ」
「何者だあいつら……ひょっとしてあの噂、宇宙人って本当だったのか?」




