103、勝利!
103、勝利!
やったー!
ついに神の御霊を取り戻した!
神の御霊が入った電気釜SR-18は、荒ぶる様子もない。ダークネームの呪縛から完全に解放されたようだ。
そして神の御霊と分離された魔神オカマは、地デジカのフンの山から空を掴むように腕を突き出したまま、ピクリとも動かない。
大活躍の地デジカも、達成感とフンを出し切ったスッキリ感を噛みしめ、輪っかの中へカポカポと帰っていった。
大量のフンを残して……
「地デジカ帰ってもフンは消えないのね」
「そうだね……クサ」
本当ならみんなで勝利のバンザイをして大喜び、のはずなのだが。
みんなの表情は暗い。この勝利の代償があまりにも大きかったからだ。
「ヴ……ウゥゥ……ウワーン」
リーちゃんはSR-18を下に置き、ボロボロになったレイちゃん達の前で崩れ落ちるように泣いた。
ミーちゃんもサンヨーも、なんて声かけていいのか分からない。
みんながうつむいて立ちつくす中、熱でブサイクになったダイさんが歩み寄り、そっと話しかけた。
「リーちゃんよぉ、つれえのは分かるが、ここで泣いてたってどうしょうもねえ、ヒエール様んとこにレイちゃん等を連れてって、直してもらおうぜ。ワシもこの顔何とかしてもらわねえと帰れねえしよ」
ダイさんは、ひしゃげた顔で精いっぱい笑った。
そう言えば、幽体離脱している家電達が傷ついたら、本体はどうなっちゃうんだろ?
以前、リーちゃんのお母さんが、すずちゃん本体のコードを足に引っかけ、抜いてしまったことがあった。扇風機は倒れ、前カバーの一部がへこんでしまった。
その後ジャブ君がコンセントを刺した瞬間、すずちゃんの顔の同じ部分がペコっとへこんだ。
そう、本体と家電達は見えない何かでつながっていて、本体が傷つけば家電達も傷つくのだ。
と、言う事は、逆に家電達が傷ついたら本体の方も破損してしまうことになる。
今、仮に停電が復旧し、家電に電気が通ったら、松下家の冷蔵庫、洗濯機、テレビに扇風機が一気にぶっ壊れてしまう。
修理された家電は即、買い替えられてしまい、レイちゃん達は廃棄されてしまうだろう。
これはヤバい。松下家の家計にも大打撃だ。
その頃、そんな事とは夢にも思わないリーちゃんのお母さんは、太陽光発電システムを自立運転させようと、トリセツを見ながらペチペチとボタンを押して格闘中。
「おっかしいわねえ、ブレーカー落としたでしょ? そんでもってここ押してモード切替したらぁ、ホイ」
「ブブー、今はマズいのだー、イェイ」
「何これ、なんでこんなふざけたアラームが出るのよ! リセットしてぇ、もういっぺん、ポチっと」
「ダメダメイェーイ!」
「んもー! なんで? 私って機械オンチー?」
お母さんはエアコンの切れたクソ暑いリビングでブチ切れ、トリセツを放り投げた。
手順通りやっても、なぜか言う事を聞かない太陽光発電システム。
そして再び場面は鉄塔の山へ。
ダイさんの言葉に、少し落ち着きを取り戻したリーちゃんは、すっと立ち上がって言った。
「そうね、分かったわ。レイちゃん達を連れてヒエール様のところへ行きましょ」
「おう、その意気だぜ。善は急げだ」
リーちゃんは腰のケースからコンポーダンボールを取り出した。壊れてしまったレイちゃん達をこれで一旦回収し、ヒエール様のところへ運ぶためだ。
「こいつもヘブレ―ジボックスに入れておかないとマズいんじゃね? また逃げ出したら大変だからな」
「私は逃げないわよ。それよりあんた達は何者なの? ヒエール様の家来?」
その声にサンヨーは不満そうに振り向き、ヘルメットを脱いでSR-18に顔を見せた。それに続いて東芝とソニーもヘルメットを脱いだ。
「家来じゃねーし、分からないのかよほら、オレだよオレ」
「あっ、あんたはあの時のクソガキじゃない。あなたもあなたも。ついこの前なのに懐かしいわ」
「お前今までのこと、なーんにも覚えてないのかよ」
「うーん、あんたが私にシールを貼った後、急に苦しくなって気を失ったの。それから先は時々意識が戻るんだけど、またすぐ何かに押さえつけられて気を失っての繰り返しで、よく分からないのよ」
SR-18は、やはりタマシールのダークパワーに支配され、リーちゃん達と戦っていたことはほとんど覚えていないようだ。
「ヒエール様の所へ行くんならさっさと行きましょ、私も飛べるんだから、そんな箱に入れないで。もう閉じ込められるのはまっぴらよ」
ダークネームの呪縛から解放されたSR-18は落ち着いた様子で、もう逃げたり攻撃をしかけたりすることはなさそうだ。
SR-18は、フンの山から突き出された腕を見上げ、ため息をついた。そして破壊されたレイちゃん達をチラッと見てリーちゃんに訊ねた。
「そこのガラクタ家電達は何? あんたたちの仲間?」
「なっ! ガラクタにしたのは誰よ! 動けないレイちゃん達に攻撃したのはアンタでしょ!」
「え? 私がしたの? こんなひどい事」
「そーよ、あたしの大切な友達なのに……んにゃろっ!」
一旦落ち着きを取り戻したリーちゃんであったが、SR-18の言葉に逆上し、SR-18を蹴っ飛ばそうとした。
サンヨーとソニーが慌ててそれを制止。
「リー! 落ち着けって、またバトルするつもりかよっ」
「だ、だって……」
「分かったわ。じゃ、私が直してあげる」
「え? アンタにそんなことできるの?」
「私はまだ名前をもらってないから神様じゃないけど、ダークネームにあちこち突っつかれて、ちょっとはパワーアップしてんだからね。空を飛べるだけじゃないわよ」
そう言ってSR-18は、合掌しブツブツ呪文を唱え始めた。するとSR-18の体から湯気のような光が染み出すように漏れはじめた。その光は地面を這うように移動し、レイちゃん達をすっぽりと包み込んだ。
「あっ、これ秘密基地で見たやつだ」
「レパリアン!」
SR-18は合掌した手のひらをゆっくりと離し、タンと打ち鳴らした。
レイちゃん達の体を包み込んでいた光がさらに輝き出した。




