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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
103/154

103、勝利!

103、勝利!

 やったー!

 ついに神の御霊を取り戻した!

 神の御霊が入った電気釜SR-18は、荒ぶる様子もない。ダークネームの呪縛から完全に解放されたようだ。

 そして神の御霊と分離された魔神オカマは、地デジカのフンの山から空を掴むように腕を突き出したまま、ピクリとも動かない。

 大活躍の地デジカも、達成感とフンを出し切ったスッキリ感を噛みしめ、輪っかの中へカポカポと帰っていった。

 大量のフンを残して……


 「地デジカ帰ってもフンは消えないのね」

 「そうだね……クサ」


 本当ならみんなで勝利のバンザイをして大喜び、のはずなのだが。

 みんなの表情は暗い。この勝利の代償があまりにも大きかったからだ。


 「ヴ……ウゥゥ……ウワーン」


 リーちゃんはSR-18を下に置き、ボロボロになったレイちゃん達の前で崩れ落ちるように泣いた。

 ミーちゃんもサンヨーも、なんて声かけていいのか分からない。

 みんながうつむいて立ちつくす中、熱でブサイクになったダイさんが歩み寄り、そっと話しかけた。


 「リーちゃんよぉ、つれえのは分かるが、ここで泣いてたってどうしょうもねえ、ヒエール様んとこにレイちゃん等を連れてって、直してもらおうぜ。ワシもこの顔何とかしてもらわねえと帰れねえしよ」


 ダイさんは、ひしゃげた顔で精いっぱい笑った。


 そう言えば、幽体離脱している家電達が傷ついたら、本体はどうなっちゃうんだろ?

 以前、リーちゃんのお母さんが、すずちゃん本体のコードを足に引っかけ、抜いてしまったことがあった。扇風機は倒れ、前カバーの一部がへこんでしまった。

 その後ジャブ君がコンセントを刺した瞬間、すずちゃんの顔の同じ部分がペコっとへこんだ。

 そう、本体と家電達は見えない何かでつながっていて、本体が傷つけば家電達も傷つくのだ。

 と、言う事は、逆に家電達が傷ついたら本体の方も破損してしまうことになる。

 今、仮に停電が復旧し、家電に電気が通ったら、松下家の冷蔵庫、洗濯機、テレビに扇風機が一気にぶっ壊れてしまう。

 修理された家電は即、買い替えられてしまい、レイちゃん達は廃棄されてしまうだろう。

 これはヤバい。松下家の家計にも大打撃だ。


 その頃、そんな事とは夢にも思わないリーちゃんのお母さんは、太陽光発電システムを自立運転させようと、トリセツを見ながらペチペチとボタンを押して格闘中。


 「おっかしいわねえ、ブレーカー落としたでしょ? そんでもってここ押してモード切替したらぁ、ホイ」

 「ブブー、今はマズいのだー、イェイ」

 「何これ、なんでこんなふざけたアラームが出るのよ! リセットしてぇ、もういっぺん、ポチっと」

 「ダメダメイェーイ!」

 「んもー! なんで? 私って機械オンチー?」


 お母さんはエアコンの切れたクソ暑いリビングでブチ切れ、トリセツを放り投げた。


 手順通りやっても、なぜか言う事を聞かない太陽光発電システム。

 そして再び場面は鉄塔の山へ。


 ダイさんの言葉に、少し落ち着きを取り戻したリーちゃんは、すっと立ち上がって言った。


 「そうね、分かったわ。レイちゃん達を連れてヒエール様のところへ行きましょ」

 「おう、その意気だぜ。善は急げだ」


 リーちゃんは腰のケースからコンポーダンボールを取り出した。壊れてしまったレイちゃん達をこれで一旦回収し、ヒエール様のところへ運ぶためだ。


 「こいつもヘブレ―ジボックスに入れておかないとマズいんじゃね? また逃げ出したら大変だからな」

 「私は逃げないわよ。それよりあんた達は何者なの? ヒエール様の家来?」


 その声にサンヨーは不満そうに振り向き、ヘルメットを脱いでSR-18に顔を見せた。それに続いて東芝とソニーもヘルメットを脱いだ。


 「家来じゃねーし、分からないのかよほら、オレだよオレ」

 「あっ、あんたはあの時のクソガキじゃない。あなたもあなたも。ついこの前なのに懐かしいわ」

 「お前今までのこと、なーんにも覚えてないのかよ」

 「うーん、あんたが私にシールを貼った後、急に苦しくなって気を失ったの。それから先は時々意識が戻るんだけど、またすぐ何かに押さえつけられて気を失っての繰り返しで、よく分からないのよ」


 SR-18は、やはりタマシールのダークパワーに支配され、リーちゃん達と戦っていたことはほとんど覚えていないようだ。


 「ヒエール様の所へ行くんならさっさと行きましょ、私も飛べるんだから、そんな箱に入れないで。もう閉じ込められるのはまっぴらよ」


 ダークネームの呪縛(じゅばく)から解放されたSR-18は落ち着いた様子で、もう逃げたり攻撃をしかけたりすることはなさそうだ。

 SR-18は、フンの山から突き出された腕を見上げ、ため息をついた。そして破壊されたレイちゃん達をチラッと見てリーちゃんに(たず)ねた。


 「そこのガラクタ家電達は何? あんたたちの仲間?」

 「なっ! ガラクタにしたのは誰よ! 動けないレイちゃん達に攻撃したのはアンタでしょ!」

 「え? 私がしたの? こんなひどい事」

 「そーよ、あたしの大切な友達なのに……んにゃろっ!」


 一旦落ち着きを取り戻したリーちゃんであったが、SR-18の言葉に逆上し、SR-18を蹴っ飛ばそうとした。

 サンヨーとソニーが慌ててそれを制止。


 「リー! 落ち着けって、またバトルするつもりかよっ」

 「だ、だって……」

 「分かったわ。じゃ、私が直してあげる」

 「え? アンタにそんなことできるの?」

 「私はまだ名前をもらってないから神様じゃないけど、ダークネームにあちこち突っつかれて、ちょっとはパワーアップしてんだからね。空を飛べるだけじゃないわよ」

 そう言ってSR-18は、合掌しブツブツ呪文を唱え始めた。するとSR-18の体から湯気のような光が染み出すように漏れはじめた。その光は地面を這うように移動し、レイちゃん達をすっぽりと包み込んだ。


 「あっ、これ秘密基地で見たやつだ」


「レパリアン!」


 SR-18は合掌した手のひらをゆっくりと離し、タンと打ち鳴らした。

 レイちゃん達の体を包み込んでいた光がさらに輝き出した。


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