102、地デジカの秘策
102、地デジカの秘策
リーちゃんが呪文を唱えるとB-CASカードがボワッと光り、そして消えた。
パッパラッパラッパラー♪ パッパラッパパッパラー♪
どこからともなくラッパの音が響き渡り、山道の辺りにモクモクと雲の輪っかが現れ、その中から地デジカがカポカポと走り出してきた。
地デジカは、呼び出すときに「○匹出てこい」と言わない限り、呼び出されたところの広さに応じて出てくるのだが、リーちゃんが「全部出てこい」なんて言ったもんだから、何千、いや何万匹、出てくるわ出てくるわ。地デジカ限定の大マラソン大会、といった感じだ。
その大勢いる中の、リーダー格の地デジカが、命令を聞く為いつものように五重丸の所へ行き、そして無残な姿を見て驚いた。
「デジェジェッ! 五重丸様やられてるデジよ? 誰デジか? ボク達を呼んだのは」
「あたしよ、あたしが呼んだの」
「デジッ、あなた様は誰デジか? そのいでたち、この町のご当地ヒーローデジか?」
リーダー格の地デジカとリーちゃんは初対面ではないが、戦闘スーツを着ているので誰だか分からなかったようだ。
「ご当地じゃないの。あたしは正義のヒーロー、リーピンクよ、五重丸……様の仇を取りたいの、魔神オカマをやっつけて」
「デジャッ……オ、オッケーデジデジッ……」
「え? どうしたの? ムリ?」
地デジカは呼び出した家電達の命令を(そこそこ)かなえてくれる。
しかし、今回の命令はちょいと重たいようだ。数では圧倒的に有利だが、勝てる気は全然しない。歯切れの悪い返事をしたリーダー地デジカに、リーちゃんは歩み寄りを見せた。
「やっつけられなくてもいいの、アイツの動きを止めてくれれば、あとはあたしが何とかするから。ほら、学校の屋上でやった『発情期』でボコってやって」
(動きを止める……それくらいならいけるかも)
「オッケーデジデジッ。キョェェーン!」
命令のハードルがちょっと下げられ、地デジカのやる気スイッチがONになった。学校の時のように筋肉が盛り上がり、肉食獣のような形相になり雄叫びを上げた。
それを見た他の地デジカも続々とパンプアップ、鉄塔や木にひょいひょい登り始め一斉に襲いかかった。
「地デジカキーック! パーンチ! デジデジデジデジデジデジ」
「あーうっとおしい、シカがオレ様に勝てると思ってるのか?」
やる気だけで勝てたら苦労はしない。発情期フルパワーで立ち向かった地デジカだが、魔神オカマの着合い一発で第一陣はほぼ全滅。やられた地デジカは光の玉のようなものになって、フラフラと雲の輪っかの中へ帰っていった。
しかし、出された命令は(そこそこ)かなえなければならない。新しい地デジカが続々と補充され、魔神オカマへ立ち向かっていく。
ところで何匹いるの? 地デジカって。
答えは∞(無限)である。地デジカは妖精のようなものなので、やられても死ぬことはない。光の玉となり元の世界に戻ればすぐ再生できてしまうのだ。
バタンキューにならない魔神オカマVS頭数∞の地デジカ。
このままじゃ……ミーちゃんが不安そうにつぶやいた。
「リー、マズいんじゃない? 終わんないよ」
「こんなことしてたら、そのうち誰かに見つかって警察が来るぞ」
「オレ達捕まって死刑になるじゃん、リー何とかしろよ」
「そんなこといってもさぁー、あれ? 一匹こっちに来るよ」
一回やられて再生してきたリーダー地デジカが困り顔でリーちゃんのところへカポカポ走ってきた。
「リーピンク様、だめデジ、歯が立たないデジよ。アイツの弱点みたいなのないデジか?」
「弱点? うーん……」
(何かしら……魔法攻撃は地デジカ出来ないし……あ、そう言えばレイちゃんがよく言ってたっけ、「キッチン家電は清潔が一番」って……あっ)
リーちゃんの頭上に閃き電球が輝き、思いついた作戦を地デジカに耳打ちをした。
それを聞いた地デジカは、前足で口を隠し顔を赤らめて動揺した。
「デジッそんな……そんな事でイケるデジか?」
「分からないけど、やってみて」
「オ、オッケーデジデジッ」
戸惑いながらもリーダー地デジカは、頭のアンテナで、作戦を全地デジカに伝えた。
「デジェ~?」
山中に地デジカの驚きの声が響いた。でも迷ってる暇はない。
地デジカ達は魔神オカマを取り囲むように大きな輪を作り始めた。そして螺旋状にどんどん積み重なってゆき、やがて魔神オカマをすっぽり囲む地デジカの筒が完成した。
よく見ると、すべての地デジカは、魔神オカマにお尻を向けている。
「くだらないギャ、こんな事でオレを閉じ込めたつもりかギャ?」
「んな訳ないでしょ、行っけー地デジカ! シカのフーン!」
「オッケーデジデジッ!」
魔神オカマを取り囲んだ数万匹の地デジカは、膝を少し曲げ一斉にふんばり、お尻からフンを発射した。
ポロポロポロポロポロポロポロポロポロポロポロポロポロポロポロポロポロポロポロ……
「ウギャーッ!何するギャ、くっせー!」
サンヨー達は、レジャズ達をズリズリ引きずり迫りくるシカのフンから避難した。そして大量のフンはアッという間に魔神オカマを埋め尽くした。姿は完全に見えなくなり、動かなくなってしまった。
「リー! なによこの攻撃、サイテーッ!」
「お姉ちゃんらはそこにいて、ウンコ踏まないようにね。東芝、それちょっと貸して」
リーちゃんは東芝のランドリースピアをふんだくって、フンの山のてっぺんに向かい、鼻をつまみながらフンの山を突っつき始めた。
「あークサ、この辺かしら、えいえい」
あちこち突いていると、コツっとなにか手ごたえがあった。リーちゃんは両手でランドリースピアをグッと差し込んでみると、突然爆発するような勢いでフンをぶちまけながら、中から青い光の玉が飛びだしてきた。
「イヤーッ! 汚い! 水、みずーっ!」
「コラッ戻れっ! も……ど……る……ギ……」
フンの中から魔神オカマの片腕が現れ、光の玉を必死でつかもうとしたが、力尽き沈んでいった。
「あなたは神の御霊? そうなのね。ほら、これに入って」
リーちゃんはヘブレ―ジボックスから電気釜を取り出し、光の玉の前に差し出した。
「あぁ……私の体……お前が持っていてくれたのね……」
「そうよ、ほら早く入って」
青い光の玉は、吸い込まれるようにスゥーッと電気釜の中へ消えていった。




