第二章
“Yシャツに灰色のジーンズ。黒いケープとリユックサックを身に着けた青年ヨセフはある日、「五万年ぶりにアルトロと再開する。広く透き通った湖の周辺で。」そんな夢を見た。”
クレーテ・ヲードが新しい星を見つけたそうだ。その星は青く白い霧のようなものもある。大気圏へと突入し、ゆっくりと大地へと降りる。すると、また樹木の根が暴れだし、根は大地を突き刺してその体を固定した。
景色は地球そのものだった。もしかしたら本当に地球なのかもしれない。青い空の下に森や小さな動物が沢山いたからだ。この光景には砂漠の星で生きていた少女も非常に感動しているようだ。
「本当に助かったよ。今までありがとう。僕はここで降りるけど、君はどうする?」
「私はここに残ります。クレーテ・ヲードが悲しみますから。」
ヨセフが下へ降りる直前、少女はヨセフに旅をする目的を尋ねた。ヨセフはただの娯楽だと答えたが、彼自身も何故旅するのか、理由が分からなかった。ただ夢で見たアルトロという好青年にどうしても会いたい。そんな気持ちでいっぱいだった。
ヨセフはリュックを背負い、階段を降りた。そして、最上階にいる少女に手を振り、クレーテ・ヲードから立ち去った。
ヨセフは森の中へと足を踏み入れる。砂漠の星とは違い、森の中の空気はとても澄んでいて、涼しい風と時々森の中から聞こえる小鳥の囀りがとても心地よかった。
この星を歩き続けて数時間が経過した。さらに奥へ進んで行くと、いたる所に赤いレンガで出来た小屋やログハウスがあったが、その家は全て半壊していた。小屋の中を覗くとミイラ化した人のような形をした死体、そして首や胴体が切断された骸で部屋が散乱していた。そして恐竜だろうか。人間より五倍くらい大きい怪物の死体も転がっている。
「ここで一体、何が…。」
その時、ヨセフにいきなり頭痛が襲い掛かる。
“燃え広がる夜の町”
“夜の町を破壊する数多の龍”
“数多の龍に半身を喰い千切られる人々”
“人々を守る傷ついた兵士たち”
“そして兵士たちの先頭に立つ一人の青年”
ヨセフの頭の中にその光景が記憶として出てくる。
「何故だ?この光景…見覚えがある!」
あまりの痛みに一瞬、怯んでしまった。右に振り向くと少し向こう側に湖が見えたので、ヨセフは頭痛に耐えながらそこで体を休めようと一直線に駆け足で湖まで向かう。たどり着くと、湖の片隅にぽつんと立っている人影が見えた。
「ハァ、ハァ…。誰かいる…?」
そこには黄緑色のケープにリュックサック、そして目つきが鋭く、ストローハットを被った長い金髪の好青年が湖の底を眺めながら立っていた。彼はおそらく僕と同じ旅人なのだとヨセフは感じた。その青年はヨセフの方に顔を向け、話しかける。
「やあ、君も俺と同じ旅人かい?」
「あぁ…。遠い星から来た。君はこの星で生まれたのか?」
「そう、そしてこの星を旅し続けているのさ。」
「ここは何故、人間の死体がこんなに多いんだ?」
「それは俺より、君自身が一番よく知っている筈だ。」
青年がそう答えた瞬間、さっきまで耐えていたヨセフの頭痛がさらに強くなり始めた。頭の中でまたあの光景がフラッシュバックし始めたのだ。
「まさか…。龍が食い殺した!?あれ?何で僕はそれを!?」
「やっと思い出してくれた。そうだ…まだ俺の名前をまだ行ってなかった。俺は…。」
「アルトロ…!君の名前だろ…。僕は…。」
「ヨセフ…かな?」
ヨセフの頭痛は徐々に治まった。
「可笑しいな。僕らは初対面の筈なのに、何で君の名前を僕は知っているんだ?それに…君の顔を見ていると…。不思議だ。懐かしい…。」
アルトロは全てを見透かしているかのような鋭い目つきでヨセフを見つめ、そして微笑んだ。
「お帰り、ヨセフ。五万年ぶりの再開だ。」
ヨセフは不思議そうにアルトロを見つめる。何故なら、頭痛が起きたヨセフの頭から浮かび上がった光景
“そして兵士たちの先頭に立つ一人の青年”
その青年の容姿が、すぐ側にいるアルトロにそっくりだったから。
イラストレーション
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