第二十一幕 少女
そのときにある種族が巻き込まれ滅んだとされた。
何人かいる生き残りが細々といるが彼らは自分たちを失われし一族の末裔と名乗る。
「魔獣でも魔族でもない人ならざる者か」
「合ってるわ」
「そんな人ならざる者がハンターをやっている理由は?」
「なりゆきかしらね。始めたら止められなくなったのよ」
「そうか」
人とは違うがはっきりしない気配に警戒をしていたルルーシェは警戒することを止めた。
得体の知れない者だったから警戒しただけだ。
「さてと、町に着いたけどギルドに行くので良いかしら?」
「あぁ」
「坊やも良いかしら?」
「坊やって言うな」
アイリーンが人ならざる者ならルルーシェは赤子同然だ。
坊や扱いでもずいぶんと年上になる。
「うん?早かったな」
「依頼が被ったんだ」
「依頼が?ふむ、確かにここより二つ先の町でも同じ依頼があるな。それで一緒にいるということは共闘したということで間違いないか?」
「あぁ」
「ないわ」
「では、カードを」
手続きを進めて報酬を算出する。
「アイリーンとカイルは変化なし。キルシェとルルーシェはそれぞれランクがひとつ上がったぞ」
「あの依頼で?」
「アイリーンとカイルが受けていた依頼のランクがA級扱いだったからな」
ハンターを集めるためにランクをわざと高く設定して依頼を出すこともある。
その影響でランクが上がった。
キルシェがB+級で、ルルーシェがB+++級になった。
「この調子で依頼をどんどんしてくれ。箱の中の依頼を全部片づけてくれても構わない。むしろしてくれ」
「本当に人手不足なのね」
「こんな田舎に来てくれるハンターは少ないからな。依頼も溜まるさ」
高位ランクのハンターがいるうちに片付けたいという気持ちがありありと分かる。
アイリーンも分かるのか箱から適当に選ぶ。
「とりあえずはこれくらいかしらね」
「チームで良いか?」
「やだ」
「ルル」
「私たちと組めば依頼を受ける上限が無くなるわよ」
「やる」
ルルーシェの性格を見抜いて手玉に取る。
アイリーンの方が一枚も二枚も上手だ。
「気になったのがあれば選んで出すと良いわ」
「じゃあコレ」
「ポイズドラゴの討伐ね。良いの見つけたわね」
毒を持った魔獣だが死んだ後の血は万能の薬の原料となる。
生体数は多いが討伐が難しいからランクが高い。
「いちいち手続きするのが面倒ね。適当に受諾しておいてくれるかしら?」
「分かった。適当に戻ってきてくれ」
森とギルドを往復するのが鬱陶しくなったのだろう。
適当に魔獣を討伐して帳尻を合わせることにした。
森の奥に進めば魔獣が多くなる。
間引かなければ森から魔獣が溢れて人を襲うようになる。
「準備をして行きましょうか」
「そうだな」
「準備?」
「ポイズドラゴは群れが大きいから装備をきちんとしないといけないのよ」
毒消しの薬も用意しておかないといけない。
経費がかかるから取り掛かるハンターも少ない。
「倒せば良いんじゃないの?」
「倒したあとに血液の採取と死体の処理と色々と面倒なのよ」
「精製していない血は土を腐らせるからな」
「切ったりするのダメなの?」
「できたら打撲とかの方が良いわね」
土が腐ると植物が育たない。
そして動物も死に絶える。
ポイズドラゴは面倒な魔獣だ。
「繁殖力は低いから一度倒せば被害は最小限で済むわね」
「倒しにくいから生体数が増えただけだろうからな」
「燃やしたらダメなのか?」
「血液が良い値で売れるから燃やさないわね」
ポイズドラゴの討伐依頼のときには血液と合わせてされることが多い。
血液が採取できない場合は報酬が半値以下になる。




