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第十六幕 関屋

「もっと簡単にできる方法はないの?」

 

「あるにはあるが、火の魔法が使えぬとできぬ」

 

「魔法は誰もできないね」

 

魔法は持って生まれた資質であるから後天的に得ることはまずない。

 

魔力を持っている者は多いが使える者は少ない。

 

魔獣でも限られていて、人では王家に囲われている。

 

「ねぇ、ロディ」

 

「どうした?」

 

「おじさんがね、理はこの世を確立させるためのものじゃないって」

 

「ふむ、それは興味深いことだな」

 

「どういうことか分かる?」

 

「われでも無理だ」

 

理を見たことがあるのはエルフだけだ。

 

それ以外の魔獣は理を外から眺めて近づくと危険だと認識している。

 

あまり近くにいると力の流れで自我を飲み込まれてしまうから近づかない。

 

「調停者であるエルフは理を守ることはしても伝えることはせぬ。案内をするというのなら別の力の流れに組み込まれることになる」

 

「別の力の流れ?」

 

「さよう。だが分かるのはこれくらいだ。理は触れてはならない禁忌であるからな」

 

「良いのか?禁忌に近づこうとしているのだが」

 

「近づくことと触れることは別物だ。エルフがいるのなら悪いようにはならぬよ」

 

エルフが何をして何をしないのかを正確に知っている。

 

だが本能的に知っていることであり説明をするのは難しかった。

 

中には怖いもの見たさで近づき触れる魔獣もいるが一体も帰ってこない。

 

「そろそろ着くぞ」

 

「魔獣は町に入れるのか?」

 

「今のわれを見て魔獣と分かる者はおるまい」

 

大きな犬としか見えないのと話さなければ問題が無かった。

 

ギルドは開いているが大量の核を渡すのは気が引けた。

 

「まずは宿を探すと良い」

 

「そうだな」

 

「あとはジョーバーに連絡だな」

 

他の軍人にロディの姿を見られるのを避けようと人知れず出立した。

 

マキシムが代わりに伝言を引き受けてくれているが直接連絡はしたい。

 

ギルド同士なら連絡手段がある。

 

「宿を取りたい」

 

「ちょうど一部屋空いている。カギはこれだ」

 

「あとマスターのジョーバーに連絡を取りたい」

 

「そこに伝令玉がある。初回はタダにしてやろう」

 

完全に男言葉だが体は女性だった。

 

男勝りなだけだがマスターとは変わっていないと務まらないものなのだろうか。

 

「いい男だな。どうだ?今夜、一緒に」

 

「あいにくと相手には困っていない。別を当たってくれ」

 

「そうか。軟弱な男が多くて退屈していたんだがな。そっちの魔獣でも良いぞ」

 

「・・・分かるのか?」

 

「昔から魔力に敏感なだけだ。普通のやつなら分からんさ」

 

「われは人は対象外だ」

 

「そうか。連絡が終わったら懐にあるものを出しな。鑑定してやるよ」

 

当たり前のように言っているが魔力を感じることができる者も少ない。

 

その能力で女性でありながらマスターになっていると言える。

 

伝令玉ではジョーバーが焦っていた。

 

「いきなりいなくなって驚いたのよ。マキシムから聞いたから良かったけど」

 

「悪かった」

 

「ハンターは明日生きてるか分からない職業だけど、いきなりいなくなったら心配くらいするわ」

 

「悪かった」

 

「それくらいにしてやれ、ジョーバー」

 

「あら、ヴィリシアのところにいたのね。お説教はこれくらいにしておくわ。また顔を見せてちょうだいね」

 

「あぁ」

 

伝令玉を使うのは緊急の時にしかない。

 

一回に使用する金額が高いから普通は手紙にする。

 

初回だからと言って無料にすることもない。

 

「さ、依頼を確認するぞ」

 

「これがカードだ。あと核だ」

 

「ランクはC+か。薬草と討伐で、金貨五十枚と銀貨二枚だ。ランク報酬が出たな。C+++級への昇格だ」

 

「討伐の報酬が少ないと思うが?」

 

「金貨五十枚で昇格申請だ。功績はギルドマスターだ。ランクはB級」

 

マスターを十年以上勤めれば昇格申請が出せる。

 

ただし申請に金貨五十枚かかるからほとんどしない。


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