CHAPTER-1 《召喚、魔の軍団?》
今日、私は召還魔法を実践しようと思う。
陽光照りつける広大な肥沃の地、ラダナスの台地で一人の見習いメイジの少女が、足元に撒かれた魔方陣のまとめられた大量の羊皮紙を踏みつけながら、『ある魔方陣』の描かれた羊皮紙を叫びながら探している。
「もー、どこなのよー!!お師匠様のバカアアアーーー!!!」
焦燥感と怒りが取り憑かれた様に亢進し、頭を掻き毟りながら悪態をつき、四つん這いで羊皮紙を漁る姿はメイジとしての尊厳や威信、誇りを粉々に打ち砕くほど下品極まりない姿であった。
「ったく、あのクソジジイ・・・ちゃんと魔方陣には名前ぐらい書いときなさいよねぇ・・・自分は分かるからいいにしても、お陰でルーンから調べなきゃいけないじゃない・・・ッチ!!!」
ルーンの記された辞書を見ながら、一枚一枚読み漁る。探しているのは《召喚魔法》に必要な魔方陣である。あれも違う、これも違うと苛立ちが動作に表れる。ふと、少女はあることに気付く
「・・・たしか、《召喚魔法》の魔方陣ってクソジジイが十代の時に思いついたヤツよね。もう、相当昔の羊皮紙だから、一番汚い羊皮紙を探せばいいんじゃな~い!!!!ふふ~ん♪」
羊皮紙の山から一番汚いとされる黄ばんだ羊皮紙を何枚か抜き出し、見比べ、その中でも一番汚い羊皮紙を見つける。端々が朽ち、印されている魔方陣自体も所々虫に食われていたり、擦れていて読めないルーンもあるが、ほかの魔方陣と比べると緻密で年季を感じる。
「あったああああーーー!!!絶対これよ!!!!きったなくて読みづらいけど、まぁ、私の生まれ持った天才的な頭脳があれば余裕余裕~♪では、さっそく・・・」
少女は、羊皮紙を地面に敷き、その上に召喚に必要とされる供物を置いて準備する。【ダイアウルフの舌】【炎妖精の鱗粉】【水龍の心臓】その他もろもろ・・・手に入りやすそうでそうでもない微妙な供物に少女は半信半疑の気持ちが隠せないでいる。
「・・・本当にこれであってるわよねぇ・・・せっかく盗m・・・いえ!借りてきた物、そうよ、借りてきた物なのよ。また後で返せばいいのよ!!!」
ついでに借りてきた羊脂玉のついた古い樫の杖を手に、魔方陣から少し離れて詠唱する。普通の魔法には、それなりの魔力を杖に乗せて、一言程度の簡単な詠唱で済むのだが、《召喚魔法》と呼ばれる魔法は唱えるだけではなく、魔方陣と供物、莫大な魔力と詠唱、その莫大な魔力に耐えうる秘宝クラスの杖が必要なのだ。
「えーと・・・『我はエストガルドの民にして、偉大なる魔術師オーラスが師、アルド=シルバーバック也、地と天、人と獣に於いて、創造の神の名の下に、我が厳命に応え、其の身を顕現させよ』!!!」
「・・・これでいいわよね・・・?」
少女が怪訝そうに魔方陣を見つめると、先ほどまで快晴だった空は暗転し、鈍色の雷雲が包み込むみ、辺りでは獣が鳴き、草木は朽ちるように撓る。遠くで雷鳴が響き、生温い淀んだ風が少女の全身を舐めまわす様に撫ぜる。
すると、魔方陣は雷雲に呼応するように青白く光る。
「えっ!?もしかして成功した・・・の?・・・いいじゃない!いいじゃない!!早くその姿見せなさい『魔の軍団』!!!!」
その刹那、轟音と共に巨大な稲妻が魔方陣に落ち、周囲は白く煌く