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全ての始まり (3)

「少年。タバコ、いいかね?」



相手の確認を取らずに内ポケットからタバコを取り出し、テーブルに置いてあるライターで口に咥えて火をつける。



「ふぅー。どうだ少年も?……ハハハッそうか、そうだな、少年はあの国に住んでたからな。その顔見たら一瞬で何が言いたいのか分かったよ。」



タバコは煙を肺一杯に含んでから息を吐きながらハンスは小馬鹿にするように笑う。



俺がどんな顔していたのかは分から無いが、こうも馬鹿にされるような言い方は流石に頭にくる。



そこで、ハンスが差し出してきたタバコとテーブルのライターを取り、火をつけて思いっきり息を吸う。



正確には吸った瞬間その煙は全部吐き出したんだけどね。



「ゲホッゲホッ、なんだよ。おっさん、あんたよくこんなの吸えるな。」



その姿を見て更に気分を良くしたハンスはニヤニヤしながらこちらを見ている。



「ハハハツ!いやー少年から面白いもの見せてもらった。それじゃ少年いじりもここまでにしてそろそろ本題に入るかねぇ。」



そこで一瞬の静寂の後にハンスはおもむろにに話し出す。



「中東アジア戦争ってのは知ってるな?少年。」



「あぁ、度重なる領海侵犯にC国とその他周辺の国々が経済的同盟から派生した戦争の事だろ?」



中東アジア戦争(略して中ア戦争とも言う。)。



それは21世紀中頃に始まった戦争で今日まで続いているがいまだ終わる気配の無い戦争だ。因み日本はこの戦争が始まった時、どちらにも参加しない対応をとった為、こうして対岸の火事になってはいるもののその年から日本の領海はC国とごっちゃな状態だ。



「間違っちゃいねえが、正しくはない。この戦争の発端はA国の食料及び軍事物資の支援が事の始まりであり、戦争が終わらない大きな理由の一つだ。」



A国?なんだってあんな遠い所が戦争を引き延ばしているんだ?



楽の心情を察したのかハンスが続けて話す。



「少年はこの戦争がどういう形で終わるとおもう」



ハンスがさっきから言っている事が頭の中をぐるぐると回る。



「中ア戦争の終わり?それと俺たちが向かう先が何かかんけ……まさか違うよねぇ…」



「違わねぇよ。今回limitが向かう先は中ア戦争の最前線の補給基地があるT国だ。滞在日時は今日入れて2日。なんでも、昨日から短時間ながら休戦を結んだらしいからその時間を使って商品を送り届ける。」



現在のT国は治安はアンチC国ムードで、とてもじゃないが進んで入って行く国ではない。



現場の事を考えるととてもじゃないがやる気は出ない。たとえ休戦してたとしても。



「まぁ、この飛行機はT国の隣国に着陸した後商品を海上輸送するからそれまでは気楽なんだけどな。ハハハハ。」



なんだ!直接T国に行くんじゃないんだ。それじゃあもしかしたらこの人達と離れられるんじゃ。



「あ、因みに隣国ってのはお隣のC国な。」



敵対国家じゃねーかー!!!!おいおいおい、四面楚歌⁉︎これが本当の四面楚歌⁉︎



「それじゃあ、次に今回運ぶ商品だが。んっ」



次の話題に移ったのか内ポケットからスマートフォンを取り出しながらもう片一方の手で新しいタバコを取り出す。



なにその器用さ⁉︎てか、『んっ』って言われてスマホ渡されても困るんだけど。



液晶には一つの見慣れない銃とその名称、詳細が事細かに書かれていた。



「ん?なにこれえーけーえむで良いのか?」



「あぁ、少年も武器商人になるんだったら武器の知識は覚えていくと良い。これは、AKM。正式名称アブトマット・カラシニコバ・モデルニジロバニ。本来なら兵器運用が主で武器運用はしないのだが今回は兵器よりも大事な未来のウェポンディーラーがいるからそれになった。他に質問は?」



灰皿にタバコの灰を落としながらこちらを見てニヤニヤしている。てか、この人終始ニヤニヤしてんなぁ。



「あーもう。そういう悪意に満ちた笑顔良いんで、それになるって決めたわけでもないから。それじゃあ最後に一つ。limitってなに?制限?」


会話の途中で時々入るその言葉はどうやら何かの名前なのだろうが意味が分からない為話がついて行けてなかった。



「おお、大事な事忘れてた。limitはお前が務める会社の社名だ。正式名はLogistics ・customer and Inventory Management ・Integrated・Transport・incorporated

日本語読みだと『兵器運搬及び、在庫並びに顧客管理の統合会社』って意味かな。んで、この長ったらしい名前の頭文字をとった形がlimitってわけだ。」


なるほど、limitは会社名か。なんか凄い略し方だけど名前としては確かに覚えやすいな。



それにしても全く、今頃母さんと妹が心配してるだろうな。早く帰りたいけどこのままだと早くて1日は確実に向こうにいるのか。


話が終わった事を確認して、もう一眠りしようと席に座り、目を閉じる。



「純……これで良いんだよな……」



一瞬親父の名が呼ばれた気がしたが今日の出来事があまりにもショックだったのか睡魔の波は目を閉じるとすぐに来て誰が何を口にしたのか分からなかった。


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