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全ての始まり (1)

プロローグ



「……楽。本当にいいのか?父親としてはこの仕事をお前にさせるのは反対だ。もう、お前は今の学生には戻れない。もう同い年の友達とも一緒に遊べないし、酒もこの先一緒に飲めないかもしれない。お前が進もうとしている道はそういう道なんだ……。」









「親父……わかってる。俺が進む道は蔑み憎む人間はいても羨望される事がない道だ。だけど決めたんだ。俺は俺なりに生きていこうって。それでみんなが笑える世界を作ろうって……」






全ての始まり。〜1〜



ごくありふれた。だけど少し退屈する様な授業風景。なかにはつまらないって言う奴もいるけど、俺、草薙 楽はこの風景がとても好きだ。


「それでは今日の授業はここまでにします。明日の宿題忘れるないように。」


いつもと変わらない放課後。ただただこの生活がこのまま続くんだと誰も疑わなかったし疑う理由が無かった。


「なぁ楽、今日学校早く終わったし、カラオケ行かね?みんな行くってさ。」


「そんな急に話進めるなよ。すまん、今日は家の用事があるから無理なんだ。」


友人が俺をカラオケに誘ってくる。そしていつものように愛想笑いを浮かべながらやんわりと断る。ここら辺の行動は大人も子供もやってることは同じだ。







結局、生きづらい世の中なんだなと思う。







「お兄ちゃん!」


帰路につこうとする少年に後ろから可愛い声で走りながらちかづいてくる音がする。俺は聞きなれたその声に振り向きながら声をかけた。


「どうしたんだ?柚葉?」


「どうしたじゃないでしょ!今日はお父さんが帰ってくる日なんだから。」


そう言って俺の隣りに移動してくる。まったく可愛い妹だ。


親父は海外勤務のせいでほとんど家にいないし、たまに帰ってくると。家でゴロゴロしながら新聞を読んでたりするぐらいでなにもしない。


「そうだな。親父が俺達をご飯に誘うなんてよほどの事だし。早く帰るか。」


そうして二人で一緒に家に帰っていると、ポケットのスマホが鳴り響く。


(だれだろ…?)


そこには草薙 純。親父の名前が記され、何気なく電話に出る。


「もしもし?どうした、親父。」


「楽か。悪いんだが、お使い頼まれてくれ。その後にレストラン来たんでいいから。」


話の内容はどうやら何かをもらってきてほしいって事だったから引き受けた。親父からお願いなんてそうないからな。


妹は「お兄ちゃんと一緒に行きたい!」なんて言ってたけど父から一人で行くようにと言われていたから。「柚葉もお年頃なんだからブラコンはやめてくれ」と言って別れた。


頬をリスの様に膨らませて面白かったな、などと考えながら目的の場所に着く。


そこは裏路地にひっそりと佇む雑居ビルの一室だった。


扉を開けて奥に進むと外の古さとは異なりオシャレなオフィスになっていた。その中で1人、デスクワークに勤しむ女性と目があう。



彼女は白髪碧眼でモデルのようなすらっとしたプロポーションをしていてこちらを見て一瞬だけだが驚いていた。


「あ、あの俺…」


ここに来た要件を話そうと口を開くより前に立ち上り彼女は接客をする。


その姿はさながら一流企業の受付嬢のような立ち振る舞いで少しだけ心が躍ったのは内緒だ。(まぁ、学生だからテレビでしか見た事ないから受付嬢なんか知らないんだけどね。)



「草薙 楽さんですね?」



「は、はい…」



「話は聞いてます。取り敢えずこちらにどうぞ。」


彼女が仕事していた机とは別の細長い立派な来客用の席を勧められそのまま座る。


彼女はコーヒーをすっと俺の席の隣に置くと、突然後ろにギュッと手を回して抱きついてきた。


「あ、あの〜?」


突然の出来事にどぎまぎする。え?俺今何されてるの?


すると後ろからとても可愛らしい声で彼女が口を開き頭を俺の背中に埋めてグリグリと頭を押し付けてくる。



「らっくーん。会いたかったー‼︎分かる?何年振りかな?9年?10年?あの時はまだ小さかったから覚えてないかな?らっくんもついにこっち側の仕事始めるって聞いて、お姉ちゃん嬉しいよ!。」


先ほどまでの役人の様な態度から一変して今は可愛い弟を甘やかす姉のようだ。


父親と幼少の頃から海外を転々とした結果、人とは誰でも気兼ねなく接する楽だがさすがにこれには驚いた。いや俺じゃなくても驚くだろうこんなの。



「ちょっと待って。一旦落ち着こう!そっちは俺の事知ってるみたいだけど俺全く記憶無いんだよ。あんたみたいな綺麗な女の人。」


そう言って彼女の手を自分の肩から離す。なんか、すごく泣きそうな顔してるんだけど、えっ?俺悪い事した?


「何よー、せっかくお姉ちゃんが可愛い弟の為にウェポンディーラーとしての知識を教えようと思ったのに。」


「…………はい?」


目の前の女性が何を言ってるのか分からないまま、数秒頭をフリーズさせているとポケットのケータイが鳴る。見ると親父だった。


銀髪の彼女に一言詫びを入れて席を立つ。


「もしもし!親父⁉︎なんか頼まれた物貰おうとしたらすっげー美人の銀髪美女出会って、更にその人に下の名前で昔の愛称で呼ばれるし背中ギュッてされるし、しまいにゃ俺の進路決まりそうなんだけど⁉︎これって一体……」


「おーおー。いい反応wwwまず一つのづつ説明していくとな、そこでもらう物はない。更にそこにいる女の人だが俺の隠し子でお前の血の繋がった実の姉な。それで最後だがお前はウェポンディーラー。つまり武器商人としてこれから働いてもらう事になったから。大丈夫!書類はお父さんが全部しといた!因みに拒否権はない‼︎他に聞きたいことは。」


「え?あの…え?」


「質問はないな。それじゃあ、あとは頑張れ!大丈夫、学校には仕事が休みの日は通わせてやる。そんじゃ、きるぞ。ガハハハハハッ」


親父は大声で笑いながら電源を切った。あの笑い声がまだ聞こえているような気がした。


草薙 楽 16才。銀髪の美女の姉が出来まして、職業:ウェポンディーラーになりました。

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