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プロローグ 鬼の手

 不治の病、呪い、偶発的且つ先天的な奇形。


彼の両腕は━━━━志木城倖都しきじょうゆきとの両腕は、鬼の腕だった。

一見して、一般人の腕にしか見えないそれは、しかし、紛れも無く、鬼のものなのである。


邪鬼。


 呪い、若しくは怪異、それか、憑依型の幽霊のようなもの。現代科学の最先端を寄せ集めた医療機関であろうとも、彼の腕を直す術は無かった。邪鬼は、圧倒的な暴力の象徴であり、銀を嫌う。その上、一度リミッターが外れると、家族友人知人、関係なく被害を振り撒く。


銀製のブレスレット、対になるそれを両腕手首に装着する事で、普段の暴動は抑えられた。

しかし、それでも周囲との軋轢は、人として自分とのすれ違いや葛藤は、抑えられない。


 両親には見放され、基本的に人間として最低限の施し以外は拒否。月に何万、という大金を渡され、食事代を込みで、別々で生活。水道、光熱費は負担してくれているが、身の回りのものは勿論、部屋の掃除から衣服の洗濯、料理に至るまで全て倖都が背負い込む。政府側の処置で、二世帯住宅となり、主に倖都は二階で生活し、一階で両親が生活する、というスタイルに落ち着いていた。


ただ、一見して辛いこの生活だが、以外にも倖都は快く受け入れていた。


簡単だ。


化け物を見るような目で、不愉快そうに顔を突き合わせて飯を食べるより、幾分もマシなのだから。


 事情が事情なわけで、倖都には一部制約が課せられ、学校へと通っている。取り敢えず、原則として抑制用のブレスレットの取り外し禁止、球技系の参加も禁止、体育大会等の「身体を動かす」類のお祭り事には、公私において禁止されていた。今更ではあるが、倖都は高校二年生であり、高校に通っている。


束縛と言えば束縛だが。

倖都はその命令に忠実に従っていた。

簡単だ。このルールの中に居れば、倖都は人なのだから。


 人が皆、憲法や法律によって、欲望とモラルを住み分けて考えるように、鬼となったこの身体と、人間の精神を住み分けて考えるべきなのだ。倖都が例え善人であろうと、聖人であろうと、彼の意識とは関係ない、無意識の内に彼の両腕は人を襲うのだから。当然、制約があって、契約があって、束縛があって、当然、然るべきなのだ。


そう、前提条件が違うのだ。

人としておかしい事も、鬼としてならおかしくない。

人の尊厳を踏みにじろうと、鬼に尊厳は存在しないのだから。


倖都に信頼出来る友人は居なかった。


 人と交わる事を嫌っていた、というわけではないが、イヤだったのだ。もし、心の底から友情を分かち合うような仲間が出来たとして、彼らが倖都の両腕の真実を、鬼の手の正体を知って、どう思うだろう。この両腕は、余力を大量に残した状態でさえ、人の首など平気で圧し折る。いざ、この腕が全力を発揮し、倖都の管理下を完全に離れたら、歴史に名を残す無差別的な殺戮者の完成だ。


嫌われるのが嫌だから、好かれないようにした。

けど好かれたいから、嫌われないようにした。


クラスの一員、学校の生徒、その立場で十分だった。

事情を知っている先生は、倖都の顔を見る度にギョッとし、目線を逸らして逃げていたけれど。

家に居るよりは、一人惨めに薄暗い部屋でする事も無く宙ぶらりんな生活を送るよりは。


数千、数万、数百万、マシに思えた。


死にたい、と思った日は数え切れない。


 両親に怪我をさせた日、学校で暴力を振るった日、周囲から蔑視され続けた日、恐怖と怯えから他人と距離が出来た日。死に物狂いで、生きる意味を探していた。自分が死ぬ事で得られるメリットを、生きる事で得られるデメリットを、同時に排除していった。自分が生きていて得られるメリットを、模索した。


そんなある日の事だった。


「志木城倖都くん、ですよね?」


声を掛けられた。久々の間隔に思わず驚いて後ろを振り向く。

そこに居たのは、倖都が通う学園の才女、麗しの姫、深窓の令嬢と名高い一人の美少女。


紅咲亜莉栖くれないざきありすだった。


 名前の通り、燃え上がるような、目に鮮やかな真紅の髪を優雅に腰まで伸ばし、それとは対極的な、澄んだ曇りの無いラピスラズリを思わせる美しい瞳。陶磁器を連想させる、淡雪のような白い肌、そして世の男性を執心させる、魅惑のプロポーション。その全てが、何処か人ではない、まるで妖精のような、そんな儚さや美しさを際立たせている。


そして、勿論、というか、無論。

紅咲亜莉栖と、志木城倖都に交友は無く、きっとお互いに面識の無いまま、名前だけを知っている。

そんな曖昧で不確定な状態だからこそ、彼女は疑問形で倖都に訪ねたのだろう。


倖都は一応、名前と顔が一致する程度には、紅咲亜莉栖を知っているのだが。


「え………あ、は、はい。そうです、けど、何か?」


思わず挙動不審な対応を取ってしまう倖都。

時は放課後、先生方からの用事というのも考えにくい。

となれば、個人的な用事か、若しくは誰かから倖都への伝令役だろうか。


「あ、申し遅れました、紅咲亜莉栖、と申します。亜莉栖、と気軽に呼んで下さい」


「は、はぁ……」


申し遅れるのはどちらかと言うと倖都の方だ。

何せ、入学当初からその美貌と知識、身体能力、あらゆる面で期待の新人とされていた彼女だ。

別に倖都から声を掛けたわけではないので、彼女に他意はないのだろう。


と、そんな事よりもだ。


「で、何か俺に用事でも……?」


「はい。これから、役員会議に参加しますので、放課後とは言え、六時近くになってしまうのですが、屋上で待っていて欲しいのです。約二時間、お待たせしてしまう事は大変心苦しく思っていますが、少しばかり事情がありまして………お願い、出来ますか?」


「え、ええ、よ、喜んで」


「それは良かった…」


役員会議、と言うのは生徒間で風紀を取り締まる、各役員の定例会議の事だ。

仕方が無い理由とは言え、亜莉栖は、倖都を長らく待たせる事に心を痛めていたのだろう。

快諾してみせると、安堵したような、柔らかな笑顔を浮かべた。



「(うわ……可愛い、な)」


その笑顔は、専ら殺人的で、ナチュラルにこの笑顔を振り撒いているなら、勘違いする人間も多そうだ。

きっと本人に自覚は無いのだろう。思わず固まった倖都を見て、はて、と小首を傾げた。


と、その時。


ピンポンパンポォォン、と。

妙に間延びしたアナウンスが流れ出し、役員会議の開始が告げられた。


非常に焦っているのか、冷や汗を流しながら、では後で! と言い残して走り去っていった。

紅咲亜莉栖。台風のような女性だな、と倖都は思った。


「(六時まで、ね。一体何の用事だろうか? わざわざ屋上を選ぶ辺り、人目に付かない所で話したい内容、という事に違いないだろう。六時の屋上と言えば、残り三十分で扉が施錠されてしまうし、最悪取り残される可能性もある、放課後すぐの時間帯は賑わっているが、まぁ、そもそも五時を回る頃には校舎に人なんてあまり居ないんだけどな…)」


現在四時十五分。

約二時間の暇を、どう埋めたものか。

図書館で本を読むにせよ、五時半には閉館してしまう。


どの道三十分は暇になるわけで。

それなら、いっそ屋上で居眠りでも決め込もうか、とも思ったのだが。

先程言った通り、今は人で大賑わいだ。主にカップルや、男女の大集団で。


「んー………。仕方ない。文庫本も持ってきてるし、教室で何とかやり過ごそう」


そう決めて、帰り掛けていた足を、再び教室へ向けて、歩き出した。






◆     ◆     ◆






 「アリスさん、成功しますかねぇ?」


時を同じくして、一方。


≪エルグドラシア≫にて。


 ≪エルグドラシア≫は、大小100を越える国家からなる、巨大な大陸を六つ抱えた、地球の約五倍近い面積を誇る広大な惑星だ。この星には、魔物や魔獣、モンスターが棲んでおり、同時に、多くの種類の生物が共存していた。獣人などの、≪亜人≫も、また良い例と言えるだろう。


≪エルグドラシア≫、≪ドライル大陸≫南東部、≪イーリアス帝国≫


そこが、紅咲亜莉栖━━━アリス・スカーレットの、本来在るべき世界。

彼女もまた、倖都とは違う意味で、人外なのだ。


誰一人として返答しない、間抜けな声に対して、はぁ、と溜息が漏れた。


「何で皆溜息付くんですかぁ。心配じゃないんですかぁ?」


たゆん、と。

一目見ただけで対象を(男性に限るが)悩殺しそうな勢いの、巨大な胸を揺らしながら。

薄い桃色のショートボブを揺らし、ついでに臀部にひょっこり生えた尻尾を揺らし。


≪サキュバス族≫が一人、メロリア・クラシスが問う。


 殺人的な外見に加え、どう考えても非合法なくらいの童顔。地球と言う惑星の、日本という国においては、我先にと規制が入りそうな出で立ちだ。くりっとした瞳で、ふっくらとした柔らかそうな頬、背丈の割りに主張が激しい胸部と、それを補強せんばかりの、くびれや全体的な細さ。


理想の女性形、それを見事に体現していた。


其れに対して、一人の男性が言い放つ。


「お前は過保護なんだよ、メロ。アリスだってお前と同い年じゃねーか。それに、どっちかってーと、アリスのがお前より強いしな、てか、アイツは俺らん中でも群抜いてんだぜ? 適役だろ。それに、今回の≪捕獲対象≫は、あんまり暴力沙汰を良く思ってないだろうしな」


「ジンくんはぁ、逆に冷たすぎるんだよぉ。仲間なんだから、心配して当然でしょぉ?」


「………兎しか居ねえ土地で、何でライオンが身構える必要があるんだっての」


「……? 兎しか居ない土地って、あるのぉ?」


「物の例えだ! 色ボケ女!」


「ひっどぉい!!」


ぷんすかぷんすか、とお怒りのご様子を呈するメロリア。

ジンさん、と呼ばれた男は、七面倒くさそうに、後頭部をがりがりと掻いた。

そして、先程から衆目の集まっている、一つの水晶玉をぐい、と覗き込む。


「経過は?」


「問題ありませんわ。予定の時刻を迎えましたので、アリス嬢も作戦に移る頃合いでしょう」


「そうか」


メロリア、ジン、そしてその他多くの衆目が集まる中。

水晶玉が映し出していたのは、倖都、亜莉栖が通う、あの学園の屋上であった。


時計が時を刻む。


六時。


水晶玉の中に映る、学園の屋上の扉が、開いた。






◆     ◆     ◆






 「ごめんなさい、遅れてしまって」


誤差一分。たったその程度の事なのだが、律儀に亜莉栖は頭を下げた。

呼気が荒い。どうやら階段を駆け上がってきたのだろう。

 

 若干その息遣いにドキドキしてしまう倖都は、雑念を追い払う意味と、大した事じゃない、という意味を込めて、ぶんぶん、と効果音が付きそうな勢いで首を横に振った。


「だ、大丈夫」


「そ、そうですか。それは良かった」


「それで、用件は……?」


そう言うと、途端に口篭ってしまう亜莉栖。

言い出しにくい事なのか、切り出しにくい事なのか。

それか、決心して、決意してこの場へ来たが、いざというこのタイミングで、怖気づいてしまったのか。


「(告白、とかその手のシュチュエーションじゃないんだよなぁ。どう考えても)」


人に愛される、という経験を持たない倖都が言うと、偏見そのものなわけだが。

事実、彼女から放たれる雰囲気からは、照れ隠しとか、甘酸っぱさを感じさせる恋の香りは一切しない。

どちらかと言うと、これから命を懸けた舌戦を繰り広げよう、といった感じだ。


「あ、そ、そのですね……」


「う、うん」


「えーっと………」


何処から切り出すべきか、そこを悩んでいるように見えた。

途方も無い事、若しくは突拍子もない事、或いは脈絡の無い何かを話すつもりなのだろうか。


それとも━━━?


「まず、確認したい事があります。と言っても、今更確認する意味はないのですが……」


「構わないけど…」


「貴方は、志木城倖都、で間違いありませんよね?」


「ええ、まぁ」


「それなら」


そう区切って。

彼女は、本題を切り出す為の、糸口を口にした。


「貴方の両腕は、≪鬼の手≫である事も、間違いありませんか?」


「ッ!?」


サッ、と、距離を取った。

取り敢えず、普通の人間なら一足飛びには近づけない程度の距離だ。

その反応を見るや否や、慌てた様子で、彼女━━紅咲亜莉栖は手をワチャワチャと忙しなく動かす。


「お、おちつ、落ち着いて下さい! 危害を加えたり、この情報を無責任に垂れ流すつもりは一切ありません!」


「………」


「……と、言っても、信用して下さいませんよね? なら、これでお相子です」


そう言うと、彼女は制服のブラウスの上に来ていた、上着を一枚脱いだ。

時は晩秋、冬へ向けて、或いはクリスマスへ向けて、商戦が加熱していく時期。

倖都らが通う学園でも、女子男子共に、ブラウスの上に上着を着用して良い、と言いつけされていた。


そしてブラウス一枚になると。


ふぁさ、と。


彼女の背中から、プラチナ色に輝く翼が生えた。いや、元々存在したそれを、展開しただけだろうか。

翼、というよりは羽なのだが、儚い中にも強さが見えて、やはり、翼、と形容していい代物だ。


「どうです? これで対等、お互いに秘密の厳守は守られました。まぁ、今更秘密にする事に意味は余り無いのですが………」


「……………」


「と、取り敢えず、良いですか?」


「え!? え、あ、はい、どうぞ…?」


思わず見蕩れてしまっていた。

彼女も異なる者なのだ。倖都同様に、真性の真人間ではなく、不純物の混じった、ただの人間。

そう思うと、何となく肩の荷が下りたような、ほっとしたような感覚が去来する。


「私は、紅咲亜莉栖、という名前でこの世界に居ましたが、本名は、アリス・スカーレットです。呼ぶ時は、アリス、でお願いします。そして、本題ですね」


すっと、彼女の瞳が据わった。

真剣味を帯びた瞳は、最早その目を見ただけで身が切られんばかりの凄みだ。


「私達は、≪エルグドラシア≫、と呼ばれる世界で生きています。そして、貴方のその両腕、≪鬼の手≫は、かつて封印されたはずの、≪魔王の七罪≫に数えられる一つ、≪ラース≫の奇病です。七罪に数えられる全ては、奇病とされ、個人に憑依すると、その人間が死ぬまで効力は残り続けます。そして、憑依していた対象が死ぬと、≪禍魂≫という状態にトランスし、また、憑依対象を探し始めます」


「………あ、あの、えっと」


「はい」


「えっと、あの、なんて言うんだろう、その………」


言葉が出てこない。しどろもどろで曖昧な言葉は、虚空に消える。

分からない。分からないのだ。彼女の語る内容が、言葉が。

まるで、いきなり英語で話しかけられたような、軽いパニック状態。


「理解に苦しむでしょう、分かります。が、ここからが重要なのです」


「と、言うと?」


「奇病、≪ラース≫は封印によって治す事が可能です。どういう経緯で、貴方が罹患したのか、皆目見当も付かないのですが、事実として、治療は可能なのですよ」


「治せるのか!?」


「ええ。どうやら、七罪の奇病は全て解き放たれたようですし、丁度良いタイミングです。この病を確実に封じ込める事が出来れば、封印が揺らぎ始めた、ヤツを抑える事にも繋がります」


「ヤツ?」


「≪エルグドラシア≫を過去三度に渡って、破滅に導こうとした、≪魔王≫です。ヤツのご自慢の配下も、そしてヤツが人間という生命体の感情から抜き取ったエッセンス、それによって作られた奇病、七罪も、全て封印されていたはずなのですが」


どうやら、その封印を解いた者が居るようなのです、と。

彼女は語る。


「ヤツの復活、復権は≪エルグドラシア≫全土に関わる問題です。何より、≪魔王の七罪≫は全て、元々は≪魔王≫の管理下にあります。要は、憑依対象をリモートコントロール出来る、というワケです」


「ってことは………!」


「そう。完全復活を遂げたヤツの前では、貴方は操り人形同然となるでしょう」


「………」


「我々はそれを阻止する為、奇病の封印を第一に、雲散霧消した元配下達の足取りも追っています」


どうか。


ご協力して、頂けないでしょうか。


彼女は頭を下げて、そう頼み込んだ。

それだけでは飽き足らず、正座をして、額を屋上のアスファルトにこすり付けて、土下座した。


ふと、思った。


 倖都は、こうやって、誰かに頼まれたり、頼られたりするのは、初めての事だった。頼る事も、頼む事も、信頼も信用も、一定値を超えたことは無かった。受動的にも、能動的にも、だ。


しかし、今。


恥を偲んで、というわけでもないのだろうが。

彼女の苦労の1%だって知らない倖都に、彼女は頼み込んでいる。

世界を救うとか、魔王とか、倖都にとっては頓珍漢、奇想天外極まりないワードが頻出した。


けど。


彼女がもし、世界を救いたい、という信念や意思で動いていて、倖都を必要とするのなら。

倖都もまた、自身の病を治す為に、彼女を必要とするべきなのだろう。


そうと決まれば。

決断は早かった。元より、対してこちら側の世界に、思い入れが無かったのも一つの要因だろう。


「……俺なんかが、協力できるか分からないけど。それで、いいなら」


「………!」


さっき見せた笑顔。それとは比較するのもおこがましいぐらいに。

満面の笑みを浮かべて、ありがとう、と彼女はそう言った。


そして、彼女は腰から歪な形をして剣を取り出す。

蛇行した後のような、うねうねとした、若干気味の悪い形の剣だ。


それを、振った。

何も無い空間へ向けて。


すると。


ぬちゃぁ……と。

水糊か何かで止めていた板を剥がす様に、強引に空間に黒い闇が生まれた。

そして、剣は粉々に砕けた。


「最後に忠告します。貴方は、最悪こちらの世界に戻ってこれない可能性があります」


重大な内容だった。

出来ればもっと早々に教えていただきたかったわけだが。

まぁ、簡単に行き来出来るなら、あんな頼み方もしないだろう。と倖都は、納得がいった。


それに寧ろ、好都合でさえあった。


「構わない」


「ありがとうございます、では」


ぐん、っと体重が引き寄せられる。


闇が視界を覆っていく最中、思った。


漸く、自分は誰かの力に、役に立てる時が来たんだな、と。






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