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理不尽な!?魔道具師。  作者: kususato
9/23

王都中央にて (3)

 『 五騎士団会議 夏の陣     新人騎士名簿 』


 恒例の新人騎士の争奪戦会議が、実はこんな名前だったとは配布された今年度の新人騎士の名簿を見て、初めて知った。意外とシンプル。


 「何とも穏やかで心地よい名だな。」

 えっ?!何処が?!

 「そうかな?僕には湿気が多いし、汗臭そうな感じがするね。」

 確かに暑いと汗は掻くけど、湿気は感じないなぁ。

 「俺はイザヨイの意見に賛成だな・・・・」

 あーそー・・・・

 「皆さん、何を仰っているんです?このくらいで暑いなどと、南の方に失礼ですよ?」

 あーお気遣いなく。そのくらい何とも思いませんから。



 現在は会議前に親睦を兼ねた座談会みたいなことをしている最中だ。

 通常はお互いの近況とか連絡事項とかを話したりする場らしい。

 

 うちの南区を除く、王都中央・東区・西区・北区は前騎士団長が4人とも近衛騎士になってしまったので代替わりしたんだそうだ。

 で、せっかくだからってお披露目を兼ねて新顔である各騎士団の新副騎士団長が、今回の会議に出席してきたと、そういう訳らしい。






 何でだよ、イイじゃん今の騎士団長で。

 それだったら顔見知りだったのに・・・・・そりゃ騎士団長連中を相手取っての新人獲得には色々策が必要だろうけど、うちのクロム騎士団長が出るよりは俺が出るほうがマシだと思っていたらこれだよ。

 俺にとっては初顔ばっかりで、こいつらがどんな奴らか全然検討もつかない。

 ここはじっくり性格とかを見定めてからじゃないと策も講ずることも出来ない。


 しかも若さ溢れ見目も極上な青年たちときた。一部は超怖い。

 お、俺だってまだ26歳だけど見目は悪くはないだろう程度だけどな!

 たったの3歳差くらいなのに、彼らとのこの隔たりは何なのか?

 だからもう・・・・・やりづらい事やりづらい事。



 俺の手元に会議資料とは別添えで彼ら4人の資料があるってことは、彼らはお互いを知ってるってことなのか?んーどれどれ。


 まずは、王都中央騎士団の新副騎士団長マイク・バンブー。

 貴族がほとんどの王都中央騎士団では異例の平民出身。

 実際王都中央に配属された時は密かにだが、かなりの物議を醸し出した。

 歳は23歳・髪は薄茶・瞳は琥珀色、体格は細からずゴツからず。

 ちなみに現在は王宮の一部の偶像崇拝対象になっている。

 特長は甘めのマスクに平民出身のはずなのに貴公子然とした佇まいと所作、魔力の多さは群を抜いている。そして奴は巨大な猫を飼っている!!

 戦闘においては、剣術と魔術を織り交ぜて戦う。速さは全騎士団一だと言われている。


 ―――――――――――ふ~ん・・・色々あったんだぁ・・俺は知らないけどな。南騎士団って王都中央から遠いもんなぁ・・・・・・・・・・・・くそぉ




 次に東騎士団の新副騎士団長ロイナス・タイ・ル・フィルド。

 歳23歳・髪は淡い茶・瞳も茶なんだけど虹彩に銀やら緑やらが色々混じってキラッキラ!

 特長は甘いのと凛々しいのと色気とが色々混じっている。

 付き合う女性は長く続いた試しがない(笑い)。

 戦闘においては、魔術も使えるが専ら剣中心で剣術は全騎士団一だと言われている。


 ―――――――――――何か色々混じってるのが好きなのか?

 ―――――――――――相当な女タラシっぽいけど、これって個人情報じゃね?いや、これだって個人の情報には違いないんだけど、ここにわざわざ記述しなくてもいいんじゃね?

そして、この(笑い)の意味するものって何?




 次に西騎士団の新副騎士団長イザヨイ・ナイ・ル・ホルド。

 歳は23歳・髪は黒・瞳はコバルトブルー。

 特長は細身で凛々しいというより蠱惑的な甘さを持つ。

 多くの者を危険な嗜好へと無自覚に導く。

 戦闘においては、魔術中心で剣は細身の剣2つを使い、魔術においては全騎士団一だと言われている。


 ―――――――――――そうですね、今ここにいるだけでも、何かがダダ漏れているのは俺も感じてる。

 なるべくお近づきになりたくありません。危険な嗜好って何?抽象的すぎて何か怖い。

 ―――――――――――魔術が全騎士団一って、魔術師団とは別ってことだよね?じゃなかったら、何で地区の魔術師団か王都中央の王国魔術師団にいないで騎士団にいるんだよ?ってことになるもんな?




 最後に北騎士団の新副騎士団長イザーク・ウィステリア。

 歳は23歳・髪も瞳も銀色。

 特長はデカイ・怖い。とにかく怖い。

 多くの者を恐怖のどん底に無自覚に陥らせる。

 戦闘においては、体格に似合わず巧みな体術と剣術を組み合わせて戦う。更に本人から発せられる覇気が途轍もなく怖い。


 ―――――――――――誰だ?これ書いたの・・・・

 ―――――――――――いや、言いたい事はわかるけどね。実際目の当たりにしてる俺、今超怖いし。何か西区のイザヨイとは別の何かがダダ漏れてる感じ・・・・圧迫感があります。これは覇気?威圧?あ、後ろの窓ガラスにヒビが・・・!




 この紹介文って各騎士団の誰かが書いて提出したんだよなぁ・・・ある意味勇者たちかもしれない。

 あれ?4人が俺の方を見てる。その手元には1枚の紙。

 

 もしかして彼らには俺の紹介文が行ってんの?!

 うわ、マジ?勘弁してくれよ~!と思っていたら、王都中央のマイクに話しかけられた。

 

 「ジルベルト殿、今ご覧になっているのは私たちの紹介文とかですか?どのようになっているのか私たちも拝見したいのですが宜しいでしょうか?」

 「ああ、どうぞどうぞ?私の方のも見せて貰えますか?」

 



 ガサガサとガタガタと移動しながら紙を渡して、5人でそれぞれの紹介文を読むことになった。

 え~と。


 南騎士団、副騎士団長ジルベルト・ハイ・ル・マドギード。

 歳は26歳・髪は濃茶だったはずなのだが海風と太陽によって色が抜けて赤茶になりパサついている。そろそろ毛並みには気をつけた方が良いかと思われる。瞳は薄紫。

 特長は頑張り屋さんな良い子だ。自分の仕事に忙殺され目の下のクマが連日の徹夜を物語ろうとも、騎士団長を気遣ってくれる優しい子なので、どうか仲良くしてやって欲しい。

 戦闘においては、魔術も剣も偏りなくこなすが、器用貧乏なところがある。だが、机上の書類作業に至ってはかなり有能であり助けられている。


 「・・・・・・・・」


 紙を持つ自分の手がブルブルと震えているのが見えた。


 ク、クロム騎士団長!クロム騎士団長だな?!これ書いたのっっっ!!!!

 分かりましたよ!自毛は労わりますよ!トリートメントしますから!!

 そんなダメだしをここでしないで!(滂沱)

 頑張り屋さんって何?!優しい子って何?!保護者?あんた俺の保護者なの?!


 ああ!!この紹介文を読んだ、新副騎士団長たちが生ぬるい目で俺を見てる!!

 やめてっ!見ないで――――――――っっ!!こっち見ないで――――――っっっ!!!




 なんて思っていたら、自分の紹介文を読み終えた王都中央のマイクと東区のロイナスと西区のイザヨイの様子がおかしい。北区のイザークは相変わらず怖い。


 「ふふふふふふ・・・・セルゲイ様、こんな事を書いて、お戯れを・・・」

 どこから風が吹いているのか髪がうねうね動いて、顔は笑っているが目が怒っているマイク。


 「酷いです・・・!ルドルフ様・・・こんな事書かなくても良いじゃないですか・・!」

 とブツブツ言いながらテーブルに突っ伏しているロイナス。


 「ラドクリフ様・・・これは帰ったらじっっっくりとお話ししなければならないね・・・」

 こちらはテーブルに両肘をついて艶然と微笑んではいるが、背後から何かが這い寄って来そうなイザヨイ。


 「・・・・・・ありがとう、お返しする。」

 礼を言って自分の紹介文の紙を俺に返そうと、一番常識的な行動をとるイザーク。

 

 勇者は今の騎士団長たちだったのか・・・・・そうだよな、他の騎士たちは書かないよな。

 というかこんな紹介文、普通、書けないよ。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・うちのクロム騎士団長も含めて、だ。




 え?もしかして、こんな空気の中で『五騎士団会議 夏の陣』やっちゃうのか?





 *****************

 




 「そういえば・・・・代替わりした元の騎士団長とか副騎士団長とか、その後どうなるんですか?クロム様?」

 「ああ、家督を継ぐ者もいるが、大抵は王族から請われて上に行く・・・近衛騎士団とかにな。だからそうなる前に騎士団での自分の後継を育てなくちゃならないんだ。つまり、騎士団長なら副騎士団長を、副騎士団長なら次期の副騎士団長をな。」

 「ああ、なるほど。」


 天下り的なものではなく、ヘッドハントされるんだ。

 あれ?天下(あまくだ)りでもなく天上(あまのぼ)り?

 なるほどね、キラキラしい美形な近衛騎士ではなくて、実力のある近衛騎士を侍らせてんだね?うちの王族様方は。

 

 でも各地区の騎士団長や副騎士団長が近衛騎士かぁ・・・・

 あまり年いってからだと王族をお守りするのに体がついてかないよね?

 じゃ、30歳前後くらいかな?

 それって、早ければ4~5年で騎士団長とか副騎士団長が変わっちゃうって事?

 これはまたサイクル早すぎやしませんか?



 「近衛騎士になる方って、何歳くらいの方なんですか?」

 「うむ、30歳前後ではないだろうか?」

 「へ~・・・そうなんですか。」


 やっぱりか。

 そうだよね。

 王族様方としては、出来るだけ若いうちに欲しいよね?

 実力も重視するだろうけど、近衛騎士が皆おっさんどころかお爺さんたちばかりでは困るだろう、色々と。

 お姫様方も嬉しくないに違いない。

 渋めのおじさま好みの趣味とかない限り。


 「あれ?では、クロム騎士団長は・・・・えっと確か50歳でしたよね?」

 「ああ、私の場合は特殊でな。少々事情が合って南騎士団にいるのだ、この国の陛下にも許可を得ているから私が近衛騎士になることはない。ここから近衛に行くとしたら副騎士団長だな。」


 クロム様の国王陛下の許可を得ている特殊な事情って何だろう?あ、気軽に話しちゃいけない機密事項なんですね?

 了解です。もう聞きません。

 だから、聞いて欲しそうにチラチラこちらを見ないで下さい。

 そわそわ尻尾をゆらゆら揺らさないで下さい・・・・掴みたくなっちゃうから!


 「クッ・・・・その事情とは、何かお聞きしても良いですか?」

 「すまん、秘密なのだ。」


 ええ!そうでしょうとも!!




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