表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理不尽な!?魔道具師。  作者: kususato
6/23

南騎士団 臨時補佐官 (5)

 そんなこんなで南騎士団の臨時の執務のお手伝いをすることになった私は(決して臨時でも補佐官ではない)、翌日から再び騎士団の砦に赴き、依頼書にあった通りの部屋を宛てがわれた。




 ・・・・・・すっごく汚かった。


 何がって、宛てがわれた部屋が。

 普段使用していないのは仕方がないとしても、埃が溜まりまくっておりました。

 野宿の方がマシだと思えるほどの埃の量に思った、こんな所で寝れるか!窒息するわ!!

 男所帯だってわかってるいたから、掃除とかが多少(おろそ)かになっているのは許容出来るとしてもだ。

 いくら何でもこれはないって。

 という事で速攻で換気・掃除・洗濯を施しました。

 勿論、自分の魔力で染まった布で作った魔布(まふ)を使った魔術で。

 

 ああ!素晴らしきかな生活魔術!!


 

 もしかして、掃除のおばちゃんさえ入れてないのか?

 下働きとかも?

 まさかまさかの放置状態なのか?

 食堂があるって言っていたけど・・・・期待とは逆の方向に胸がドキドキしてきた。


 これは騎士たちの宿舎とか他の部屋なんかも、酷いことになっているかもしれないと悪寒が走った。

 せめて、教育してくれるであろう令嬢(予定)の控え室と教室くらいはチェックしておいた方が良さそうだ。

 

 良かった、ここに来たのが早朝で。

 執務室に行く前に少し見てまわる時間が取れる。





 ****************



 王都中央での新人争奪戦会議

 正式名称はあるらしいのだがお二方は覚えていないらしい。

 割といい加減だな。いいのだろうか?それで?




 現在は、その会議期間副騎士団長であるジルベルト様がいなくなるので、副騎士団長のお手伝いとは、若干内容が違うらしい執務の細々とした内容の引き継ぎのようなものをしていた。

 それが粗方済んで小休憩を取っていた時に、そういえばと聞いてみた。


 「騎士様方の教育者・・・う~ん、先生となってくれる令嬢を紹介して貰えるように王都中央の偉い人に話しを持ってくんですよね?近辺の領主様とかではダメなんですか?滞在ではなく通ってくれる方を望むなら、そちらに話しを持っていった方が早そうですが・・・・?」


 「確かに早いとは思うけど、話しを持っていった先で断られたら?その度に別の家に打診して説明をしてと、手間暇がかかりすぎるだろう?ならば、南騎士団の希望として王都中央に持って行って候補を調べてもらい、あちらからの口添えなり紹介状なりを携えてお願いした方が受けてもらえる可能性が高い。」

 「そうか、断る口実をなるべく潰していく作戦ですね!」

 「・・・・・急がば回れ、だ。」

 「でも、どんな風に頼むんですか?考えたら、令嬢側から考えてみれば結構無茶な事言われてる感じがするんですが?」


 「令嬢云々は、君が最初に提案したんだろう?」

 何を言っているとばかりに呆れた顔をされた。

 

 「ええ、苦手な勉強をもう一度してもらうに当たっては、その方が覚えようって気になるんじゃないかと。騎士様たちが全員男色傾向とかでなければ、可愛い女の子にいいとこ見せたい一心で意識向上も期待出来るんではないかと思ったんですけどね。でも実現しようとするとちょっと難しいかなと考えました。」

 「だ、男色ってお前・・・・無くはないことだし、まあ、この国では認められてはいるが・・・」


 やっぱりいるにはいるんだ~・・・、いやそれは今問題じゃない。


 「問題はですね、騎士団の潤い且つ切羽詰まった再教育問題を一度に解消するためとはいえ、それなりの家柄の令嬢をむっさい男ばっかりの騎士団の砦に寄越してくれる所が、果たしてあるかどうかですよね?」

 「むっさい男・・・・」

 ショックを受けたように呟いてますが副騎士団長・・・・分かっているか?あなたもクロム騎士団長もその中の一人だ。たとえラブリーな黒豹の獣人であろうとも、そこは揺るがない事実なんです。


 「そうだな・・・普通は寄越さないと思うな。」


 ですよねー、大切な娘を男ばっかりの騎士団みたいな場所に、簡単に寄越してくれる親御さんそうそういないですよねー?


 「それを許してくれるように一応策を練らないと、やはり教える者は男で十分だと結論づけられそうですよね?」



 「ふむ。何か良い案はないか?臨時補佐官。」

 「・・・・その呼び方何とかならないですか?クロム騎士団長、名前で良いじゃないですか。ヴィーでもショーノでも良いので固有名詞で呼んでください。」

 「そんな事をしてみろ、私が他の騎士たちに何言われるか・・・・!」

 「何かって何ですか?色々追求したいですが・・・・・まあ、それは後でもいいです。」



 むっさい男発言のショックから立ち直った副騎士団長が、今度は自信有りげに言ってきた。

 「下手な案を出すより、正直に訴えたほうが良いと俺は思ってます。」

 「それでは、ここに令嬢が来てくれないのではないか?」

 「後々を考慮すれば嘘は極力避けたほうが得策です。事情は正直に話しますが、要は話の仕方だと思っています?」

 「話しの仕方?」


 「1つ、再教育について。”基礎を学び修めてから何年も経っており、騎士たちが基礎中の基礎で取りこぼした所を再び履修したいと希望しております。”と。」

 「「・・・・」」

 「2つ、騎士たちの潤いについて(出会いが枯渇気味な彼らに救済を!)。”騎士としての訓練に明け暮れて何年も無骨な男同士で過ごした南騎士団の騎士たちは、御婦人との関わりが非常に薄くなって、淑女への接し方も非常にぎこちなく気の利いた言葉さえもかけることが出来なくなってしまっています。再教育を受けるにあたって、先生と生徒という関係から淑女への接し方も徐々に学び直せれば幸いです”」

 「「おおっ!」」

 「そして!騎士団の騎士たちがご令嬢にとって割と優良物件であると言う事は、こちらからは言ってはならない!あちらに気づかせることが重要!!」

 「「おおおおっっ!!」」


 「・・・・・こほん。とまあ、こんな感じの話の仕方をすれば、いけるんではないかと考えてます。」

 「嘘は本の少し織り交ぜる程度にするんですね!さすがはクロム騎士団長に弁が立つと言わしめるジルベルト副騎士団長。策士ですね!」

 「うむ、私では思いもつかんな。」

 「・・・・・微妙に嬉しくないのは何ででしょうね?」

 

 これなら王都中央でお偉いさんに話しを通すのは心配する必要はないかな?

 あと、残るはこの南騎士団の騎士たちへの説明か?

 でも今の時点で話しても本当にご令嬢が先生として来てくれるかは分からないから、もうひとつの方を先に改善する方が先だな。



 「王都中央の件は、副騎士団長にお任せするとして、質問が一つあるんですが聞いてもいいですか?」

 「ん?何だ?分からないことは今のうちに聞いてくれた方がいいぞ?」

 

 「この南騎士団の砦の掃除とか洗濯とかの雑用って、誰がしてるんですか?」

 「?騎士たちが自分たちでやっているはずだが?なあ?ジルベルト?」

 「はい、自分のことは自分でというモットーの元に、自己責任でやって貰ってますよ?実際俺も騎士団長も自室とかの掃除とか洗濯は自分でやっていますしね。」


 そう、人の行き来している場所は、綺麗とは言えなくともそれなりに掃除のあとは見受けられた。

 多分騎士たちの使用してる場所も、自分たちで掃除はしているんだろう。

 十分とは言えなくとも。

 

 「・・・・・・・・やれてないですよ?少なくとも十分ではないです。」

 「「は?」」

 「私、ここに来るまでに時間に余裕があったので、場所の確認も兼ねてあちこち見てきましたが。」

 「「が?」」

 「人の出入りがある場所は、掃除はしてるんだなと分かる程度ではありますが十分ではありません。」

 「そ、そうか?」

 「そして、使用頻度の低い場所や換気がなされていない所は、はっきり言って汚いし、臭い。」

 「「・・・・・・・・・」」

 「慣れてしまっているので臭いに気がつかないのかもしれませんが、洗濯と掃除の頻度はどのくらいかご存知ですか?・・・・・クロム騎士団長は獣人という事もあって、他の人より嗅覚が優れていると思いますがどうお考えでしょうか?」


 ジルベルト副騎士団長がそろ~っと視線を投げかけると、クロム騎士団長は明後日(あさって)の方角へと顔を逸らしていた。

 気がついていたんですね?騎士団長?

 気がつかないわけはないよね?


 「クロム騎士団長?」

 「スマン!その、あまりに堪えられなくて・・・・鼻の感知機能を低下させる魔道具を身につけている・・・」

 「!!何で仰って下さらなかったんですか?!」

 「・・・・・・・・・・言いづらいだろう?過酷な訓練を頑張っている騎士たちに・・・」

 「・・・・・・」


 副騎士団長も知らなかったんだね。

 親しいからこそ、頑張っている姿をその目で見て分かっているからこそ言えないことってあるよね。

 でもね?これからご令嬢が日参してくる状況になるかもしれないのに、このままでいい訳がない。

 もしかしたら砦に入った途端に帰ってしまうかもしれない。

 その方がショックが大きいんじゃないかな?

 なので。


 「南騎士団全体の大掃除及び洗濯を敢行を強く希望します。」

 「こ、これから、訓練があるのだが・・・」

 「全て一旦停止して頂きたく存じます。」

 「す、全て?!」

 「全て、です。」

 「「・・・・・・」」


 関係が途絶えることのない騎士団長と副騎士団長には、とても言いづらいことだろう。

 だから、ほんのちょっと一時的な関わりしか持たない冒険者で、臨時とはいえ執務補佐の私が敢えて言おう!



 



 その後、急遽訓練を一旦全部停止して大掃除と洗濯が行われることになった。

 訓練大好きな南騎士団の騎士たちからは、当然の如く反論が沸き起こったが、


 「掃除と洗濯。自分たちでやってはいるようですが、全然なってない!全てやり直せ!」

 と、カッ!とばかりに怒気を含ませて言ったら、急に固まっておとなしくなりました。

 地位も何もない一冒険者でしかない私にこんな風に言われてたら、もっと怒濤の如く文句やら罵倒やらのブーイングやら反発が嵐のように起こると思った。そこであんた達色々臭いんだよ!と女の子に嫌われんぞ?と畳み掛けてやろうと思っていたのに、何故?

 


 衣類・シーツ・マットレス等を訓練場に集めまくって洗濯魔術の陣を刻んだ大判の魔布を使って洗濯した。

 量が量なので、何枚かの大判魔布に込めた魔力がなくなるほどだった。


 客間から応接室など、普段使用していない部屋の換気と溜まりまくった埃を集塵魔術で駆逐。

 その後を騎士たちを何班かに分けて、一斉に大掃除を敢行した。

 2つある大浴場も脱衣場も同じく、(ぬめ)りがなくなるまでブラシでごしごしと大掃除。


 その後更に宿舎の各個人部屋を各自で徹底的に掃除しろと指示を出した。


 それを鼻の感知機能を低下させる魔道具を取り外したクロム騎士団長と見回ることにしたのだけれど、急激に戻った嗅覚にびっくりしたのか臭いに悶絶したのかはわからないが、しゃがみこんで鼻を手で抑えつつ、耳は両方とも伏せてプルプル震え、艷やかだった尻尾が黒くて長いタワシのような状態になっていた。


 ナンダコレチョーカワユス・・・・!!

 抱っこしたい!いや待て落ち着け抱っこは出来ない、相手が大きすぎる!


 落ち着けモチツケと心を静めつつ、掃除と臭いの基準をクリアした者には”お疲れ様でした”とにっこり笑って労った。

 そうしたら、ありがとうございます!と嬉しそうに照れて真っ赤な顔で言っていた。

 うんうん、頑張った結果が自分にもはっきり見えて、それを他人から評価されるのは嬉しいよね!

 敬愛する騎士団長も一緒だし!


 基準に満たない者には”なってない、やり直せ”と、彼らの方が身長が断然高い為、下からだけど威圧も込めて上から目線で言って回った。

 なのに、うっとりとした目をしながら”ありがとうございます!”とは何事だ?




 そして、あの黒い悪魔が大量にいるのではと私が内心危惧して大いにビビって朝はチェック出来なかったあの大食堂は、ここだけは本職の料理人たちが入っていて、私たちが手を出すまでもなく掃除は行き届いていた。


 そりゃそうだよね!料理に埃や塵芥は厳禁だもんね!

 更に更にだ!前から設置してあったのであろう、風は入るが埃や塵芥避けの魔法陣には損傷もなく各窓に刻まれていて、滞りなく魔術が発動していたのだ!


 定期的にお抱えの商会などを呼び、魔方陣のメンテナンスをしているそうだ。

 思わず、素晴らしいと料理長に握手を求めてしまった!

 突然握手を求められた料理長も、周囲で大騒ぎしながら大掃除とか洗濯をしていたのを把握していたのだろう。そんなことは当たり前だ任せろ!とばかりにニカッと笑い、手を握り返してきた。

 感動した!格好良い!男前だ!!さすがは本職!!




 怒涛のごとく過ぎた大掃除と大規模な洗濯の結果に大変満足している私に、クロム騎士団長とジルベルト副騎士団長は今回のはいくらになるのだと聞いてきた。


 「これから来られる令嬢のためというのも本当だが、住み込みで働く為の環境を私が整えたかったという、はっきり言って自分の我が儘の方が比重が大きいので今回は(・・・)報酬は頂きません。これからは徹底して下さいね?次回は報酬を頂きますよ?」


 と言ったら、ほっとしたように肩の力を抜き、苦笑しながらも”わかった”と答えた。


 ならばと、頑張ったご褒美を下さいと騎士たちから声が上がった。

 ご褒美って、子供か?!と突っ込みたかったが、大好きな訓練を停止させてまでやってもらった手前、これから仕事を一緒にするのに無下にするのもどうかと思ったので、私に出来ることで1つだけでいいならどうぞ言ってみて下さいと答えてみた。

 出来ないことはしないよ?




 

 「「「「「「「「 補佐官と呼ばせて下さい!!! 」」」」」」」」

 


 騎士たちが、全員で声を揃えて言って来た。

 何でそんなに私を補佐官呼びしたいんだ。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ