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3話「入学式」

 「―――仲間と共に切磋琢磨していって欲しいと願っています。

  そして一流の冒険者に―――」


 「ふああ……」 


 校長の長ったらしい話にあくびをする。


 今日は高校の入学式。

 ここ、ウィザードリィ高校はかつて異世界で勇者となった者の一人が作った学校で、剣士や魔法使いなどの戦うすべを身につけ、異世界に旅立つ者、一般に冒険者と言われる者のための学校だ。

 BPは今でも増え続け、異世界のほうでもBPが増えているらしく、冒険者は常に求められている。


 ちなみにウィザードリィとは、魔法,魔術,すばらしい能力,妙技,まれな創造的能力、という意味がある。

 これこの世界の言葉じゃん、って思ったんだが、増え続ける異世界にいちいち名前を付けてられないし、自分たちの国の名前はあっても世界の名前はないという世界が多かったので、適当にその世界にあった名前をこの世界(・・・・)がつけることになっている。

 理由は勇者がこの世界が多く輩出していることにある。

 まあ、日本が一番多いから日本人がテキトーにつけているらしいが。

 

 名前からわかるように、この学校は魔法使いが多い。

 それはこの高校を造った勇者、今話しをしている五刀誠(ごとうまこと)校長が異世界で魔王を倒した魔法剣士だからだ。

 彼が行った異世界が魔法至上主義なこともあるかもしれないが。

 校長はBPが開いてすぐに異世界に行った人の一人で、今年で74歳だそうだ。

 異世界から帰った彼は異世界人の嫁さん数人を連れて、この学校を造ったそうだ。

 ……1日で。

 ちなみにこの高校全校生徒5000人超のマンモス校だ。

 食堂や寮もあるし、壁はもしもの時に備えて頑丈にできている。

 よくもまあ、こんなでかい学校を一日でつくったもんだ。

 だがこんなのが何人もいるってんだから驚きだ。

 

 校長たちの世代が異世界から連れ帰ったのが美人、しかも何人もつれてきたために、それから異世界に行く人が絶えなくなった。

 世はまさに大異世界時代、なんてフレーズが流行ったくらいだ。

 そして今でもそれは同じでこんな学校が世界中、それこそ世界を越えてもある。


 「―――それでは、若きヒーローたちの記念すべき門出を祝して、私の挨拶は以上とさせていただきます」


 校長の話が終わった。

 思ったり長くなくてよかった。


 「――続きまして、新入生代表による宣誓。

  新入生代表Sクラス、五刀(ごとう)(あおい)さんお願いします」


 「はい!」


 爽やかに返事をしたのは、銀髪のきれいな女の子だった。

 セミロングの髪を揺らしながら壇上に上がっていく。

 

 「なあ、あの子かわいくね?」


 「ああ、めっちゃかわいいな」


 会場が少しざわめく。

 確かにかわいいな。

 男女共に好かれそうな顔をしてる。

 でも、注目するのはそこじゃない。

 

 「あれでも今、五刀って……」


 「ああ、見たことあると思ったら校長の孫じゃないか」


 そう、彼女は校長の孫だ。

 以前テレビで見たことがある。

 なんでも頭脳明晰、スポーツ万能、次世代冒険者の筆頭だとか。

 祖父にあこがれ魔法剣士になりたいんだとか。

 俺には高嶺の花だな。

 


 そうそう、Sクラスといったが、この学校は成績順でクラスが変わる。

 全部でAからFまであり、そこからさらに成績優秀者、いわば勇者になれる資格があるものだけが集まったのがSクラスだ。そしてこのクラス付けは卒業後の冒険者ランクになる。

 1から4時限目まではクラスごとに、それ以降は自分の目指すジョブごとに分かれることとなる。


 ちなみに俺はFクラス、いわゆるおちこぼれクラスだ。

 中学で誰にも勝てなかったのだからしょうがない。

 勉強はある程度できるが、ここは冒険者になるための場所だ。

 たいていの成績は戦いの実力で決まる。

 薬草学とか筆記のテストだったらできるんだけど、戦いって言われるとダメだ。

 このクラス、ランクは生徒の決闘でもあげることができるが、俺には到底無理だ。

 冒険者がダメならサラリーマンにでもなるしかない。


 と、いろんなことを考えているうちに五刀さんの挨拶は終わった。


 

 そしてPTAや町長挨拶が済み、始業式は終わった。



 「ふう、終わったな」


 今日から寮生活だ。

 俺は弟が苦手だったから家だと居心地が悪かったが、寮なら安心だ。

 寮は1部屋2人での使用となる。

 いい奴だといいんだけど。


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