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門番はかく語りき

作者: 砕駆龍
掲載日:2014/05/06

 突然、ピンときて書きたくなった。反省はしているが後悔はしていない(*'▽')

 

 一回、短編というやつを書いてみたかったのです(*´ω`*)


 お楽しみいただければ幸いです(/・ω・)/

 帝国と王国の長く続いた戦争が終わり、私は特にすることも無くなったので昔の伝手を頼りにある町へと流れついた。

 この町は戦争で疲れていた私にとってとても居心地が良かったため、定住することを決めた。

 そして、ちょうど空いていた町の門番という仕事を任されるようになった。

  










 門番とは言え、ただ突っ立っているだけが仕事ではない。町に出入りする人・荷物の検査や町中の道案内もする。

 更にこの町は新米冒険者が立ち寄る街でもあるため、時折ではあるが倒しきれなかったモンスターを引き連れて新米冒険者達が逃げ帰ってきたりもする。

 そして、その引き連れてきたモンスターを倒すのも門番の仕事の内だ。

 とはいえ、今日はいたって平和。


 おや、そうこう言っていたら今日は珍しく町長さんが視察にやって来た。

 この町長さん、女性ながらに町を着実に発展させている女傑だ。

 見た目は研ぎ澄まされた刀剣の様な、ともすれば冷徹な印象を受けてしまいがちな美貌を誇っている

 しかし!しかし!!彼女の本質はそこではない!

 彼女の本質は、その頭上に燦然と輝く犬耳に現れている可憐さにある!そう、彼女は犬系獣人なのである。

 最初に出会ったと時の衝撃は今でも忘れられない。緊張してピクピク動く犬耳!落ち込んでへたれる犬耳!喜びピコピコと動き回る犬耳!

 特に動物に興味の無かった私が一瞬で大の犬好きに心変わりするのも仕方がないというものだろう。あの犬耳には世界と釣り合う価値があると密かに思っている。

 どうやら国の中央には獣人を蔑む愚か者がいるらしいが、もったいないとは思わんかね。


 ちなみに、私の伝手とはこの町長さんだったりする。もう何年も前になるが、商隊の護衛任務の際に知り合った。

 今日の犬耳は……ふむ、どうやら何か心配事がある様子だな。

 ……なるほど、町の近くで危険なモンスターが確認されたと。それは門番のし甲斐があるってものだ!

 何故か笑われたが、犬耳が元気になったのでよしとしようか。

 うむ、良い一日だった。











 今日も今日とて私は門番をしている。最近は実に平和なので、私の出番が無いのが悲しいところだ。

 町が平和なのはいいが、どうもただ飯喰らいというか給料泥棒という感が否めない。


 おっと、そんなことを言っていると向こうの方から土煙が!これは例の新米冒険者がモンスターに追われている場面に相違ない!腕が鳴る!

 しかし様子がおかしい。必死の形相でこちらに走って来ているのは、この街一番の腕利き冒険者であるライカさんではないか。

 ライカさんも良い犬耳をしているが、やはり町長さんには一歩及ばない。

 おや、私の横を猛スピードで駆け抜けたライカさんが猛烈な勢いで頭を下げている。その勢いで彼の長めの犬耳がバッサバッサと揺れている。

 なになに、仲間を集めてくるので時間稼ぎをお願いします、と。ライカさんの手にも負えぬモンスターがこの辺りに出現する筈はないのだがな。


 ああいや、この前町長が言っていた危険な魔物というやつか。

 この、私の目の前で唸っている家一軒ほどはある白い犬のモンスターのことで間違いないだろう。私も初めて見る。

 しかし、よく見るとまだ顔立ちや体つきは子犬のそれじゃあないか。巨大な仔犬という風体だな。

 おめめはクルンクルン、毛並みはサラッサラ。であるとすれば、肉球はプニップニに違いない。

 とくれば、これはもう手懐けるしかないだろう。

 ライカさんは時間稼ぎを求めていたが、なに倒してしまってもかまわんのだろう?

 ふっふっふ、師匠直伝の我が秘技で沈むがいい!秘技・空間跳躍無限神撫!!

 おー、よしよしよしよしよしよしよしよしよしよし……!!


 説明しよう!秘技・空間(ryとは、飛翔の魔術により重力の楔から解放された状態で対象を心底満足するまで縦横無尽に撫でまくる恐ろしい技なのである。

 これを喰らって無事だった者(獣人・獣系モンスター全般)はいない。例外なく地に伏せることとなる。

 そう、今私の眼前で腹を見せて寝転んでいるこの巨仔犬のようにな!


 町の方は伝説の神獣だとか天を喰らう狼だとかで騒がしかったが、私は(巨仔犬を手懐けるので)忙しかったので知ったことではない。

 ああ、しまった手懐けたのはいいがどこに住まわせよう。


 巨仔犬は普通の仔犬のサイズにもなれることが分かって最大の懸念(私の家に入れない)は解決した。

 今は私の足元で丸まって寝ている。ものすごく可愛い。

 あの後ライカさんが冒険者ギルドから仲間を多数連れてきたが、既に仔犬形態になっていた天狼シリウスには気づかず脅威は去ったということで一件落着した。

 そういえば、この子の名前どうするか。シリウス……リウス……リウ……胸に三日月形の模様があるからルナだな。よーしよしよしよし、ルナは可愛いなぁ。

 しかも、餌は魔力でいいという心憎い親切な生態系。私は魔力だけは人並み外れてあるので、エサは潤沢に用意することができる。

 その影響か、ここ数日でルナの天狼形態は家一軒を軽く飲み込めるほどの大きさに成長していた。

 でも、やはり可愛い。











 今日もいつも通りに町の門番をしていると、普段見かけない豪華な馬車が数台列を成して町に向かってくるのが見えた。

 あの形の馬車は王国の貴族がよく使ってるやつか。こんな田舎の町まで何の用だろうか。

 身分確認をする際に馬車の中を確認したが、オークが服を着て乗っていた。

 退治しようと剣を抜いたところ何やら言葉を発していたので、どうやら人だったようだ。これは失敗失敗。

 なんでも、王国の伯爵らしい。でも確か、この間の戦争で王国の貴族はほとんど戦死したはずだが。

 ほうほう、避暑地に漫遊に行っていて難を逃れたと。それって、貴族の義務を放棄して逃げてただろう。やはり、ここで斬っておいた方がいいかもしれない。

 だが、私の兇刃は町長さんの拳骨によって阻止された。なんでも、町長さんの客人だったようだ。これは失敗失敗。

 だが、そう言いながら犬耳がピクリとも動いてないのは何故なのだろうか。私は知っているぞ。この犬耳は深く思い悩んでいる時に見られるものだ。


 私は門番の仕事を継続しながら道行く人々に町長さんについて知っていることを教えてもらった。

 どうやら噂を集約すると、王国からこの街への支援を行う条件としてあのオークに町長さんが第六夫人として嫁ぐことになるらしい。

 これほど目に見えて新婦が不幸になることが分かっている結婚も珍しい。政略結婚自体は珍しいものではないが、この取引は条件が釣り合っているだろうか。

 それに、気になる噂も王国から商品を運んできた商隊から仕入れた。確かめてみるか。










 

 ふわぁ……さて、今日も相変わらずの門番です。おや、伯爵が昨日の今日でもう町から移動しようとしているな。でも、そっちは王国じゃなくて帝国へ通じる道ですよ。

 はいはい、馬車の中を確認するので大人しくしてなさい。なんだ、今日はえらく抵抗するじゃないか。

 そんなに慌てなくても王国は逃げないさ。ああ、逃げるのは貴様の方か。なぁ、元伯爵。いや、国家反逆者。

 はいはい、逃げられない逃げられない。私が車輪を掴んでるから馬車は動かない動かない。

 五月蝿いな、証拠は国王から貰ってきてるさ。ほら、貴様の手配書だ。生死は問わないそうだ。

 なに?時間的に王国まで行くのは無理な上に、そう簡単に国王に謁見できる筈がないからこの手配書は偽物だと言うか。

 ルナがいれば一晩で王国までの往復くらい軽い軽い。それに、知り合いに会うのがそんなに難しい筈がないだろう。

 という訳で、死ね。っと、もう死んでたか。口より先に手が出るのが私の悪い癖だな。


 さて、町長さんはどの馬車に……あ、いた。うむ、いつものスーツ姿もいいが可愛いドレス姿も素敵だ。

 ただ、そのペッタリ垂れてしまった犬耳はいただけないな。そこまで町長さんを怖がらせたということか。それだけであのオークは万死に値するな。もう死んでるけど。


 押しつぶされそうな不安から解放された反動で、子供の様に泣きじゃくる町長さんを私の胸であやす事しばし。魅惑の犬耳に触りたい衝動を抑えつけるのに苦労した。俺の鋼鉄の精神を褒めてほしい。

 落ち着いて急に恥ずかしがる町長さんの反応で目を癒しながら、今回の顛末を説明する。

 なんのことはない。あのオークが生きてたのは、王国の情報を敵国である帝国側に流す代わりに見逃してもらっていたからだそうだ。

 それが発覚して国家反逆罪で死刑になる前に、町長さんを手土産に帝国へ逃亡する手筈だったらしい。町への支援の話も勿論あのオークのでっち上げ。

 ……蘇生魔法で生き返らせて殺すか。とりあえず、地獄の階層と同じ9回ほど殺せばいいか。

 おおっと、そんなつまらない事よりも今は町長さんを家まで送るという最重要任務があった。

 馬車の人達はそのまま王国に真っ直ぐ帰ること。ただ、私が掴んでいた車輪の部分が潰れてしまってるので脱輪注意で。











 さて、今日も門番を頑張るか。とか言いながら、ルナのふっわふわのお腹を滅茶苦茶撫で回しておく。

 そういえば、この前のオークの件で王国の方から士官の話が来てたが刹那の間も置かずに断った。

 別に王国が嫌いな訳ではない。というかむしろ好きだ。ただ、未だに獣人差別が根強く残ってるのがいただけない。

 今の私から町長さんの犬耳成分を取り除いたら、何かの搾りかすしか残らないに違いない。

 ちなみに、私が王国への士官を蹴った話について町長さんは口では勿体ないと言いながら、犬耳で喜びの舞を披露してくれた。若干、表情も柔らかくなった気がする。

 

 そういえば今日は珍しく町の中の案内を頼まれた。安い宿の紹介をして欲しいそうだ。

 尋ねてきたのは全身甲冑姿の少女で、何でも英雄となるべく一人で旅をしているらしい。

 そういえば、私もこのくらいの歳から一人で各地を巡っていたな。非常に懐かしい。

 何か困ったことがあったらいつでも力になってあげよう。


 とりあえず、私の知り合いがやっている宿を紹介した。あそこは料金も良心的だし、宿の主人は男だが少女が宿泊しても安心だしな。むしろ、少女の方が安心なくらいだ。

 うん……あの男は女性には興味が塩の結晶ほども無いからな。むしろ、少年を紹介したら喰われる気がする。私も喰われかけ……う、頭が……。

 まぁ……パッと見は細身の美女にしか見えないからたまに純朴な少年が引っ掛かるんだよなぁ……。

 被害届けの一つでもあれば排除できるんだが……そんな気配が微塵も無いことが余計に恐ろしい……。











 さて、今日も仕事を頑張ろう。というか、既に昨日の少女が門横にある待機所に来ていた。昨日の宿の礼を言いに来てくれたらしい。実によくできた娘さんだ。昔の私に爪の垢を煎じて呑ませてやりたいくらいだ。

 どうやら、宿の主人とも仲良くなれたようだ。将来はあんな綺麗な女性になりたいと熱の籠った瞳で熱く語っていたが…………知らない方が良いことがこの世の中に溢れている。 


 どうやら、この町には「災害」と呼ばれる最強の傭兵を探しに来たらしい。

 その傭兵は恐ろしく強いらしく、たった一人で5千の重装甲兵団を蹴散らし、帝国の主力部隊である騎竜兵団を大岩を用いて壊滅させるなど戦争の終結に少なからず影響を及ぼした存在だという。

 しかし、残念ながら私にはその様な町人に心当りがない。

 そのことを伝えると甲冑少女は気落ちした様子であったが、この町を拠点として件の傭兵を探すことにしたようだ。確かにこの町には色々な情報が集まるからな。

 何なら私の知り合いの探偵を紹介してもいいと思うほどには、少女の瞳には光が宿っていた。

 私が戦場で知り合った青年もこういう瞳をしていたな。今は色々と忙しいようだが。


 とはいえ、目的の人物が見つかるかはまた別の問題なわけで。

 私もこの町に来て数年になるがそんな、単身で敵の重装甲兵団に喧嘩を売ったり、騎竜兵団にからかわれたことを理由に大岩を投げつけて壊滅させるなんて、戦時中の私の様な大馬鹿野郎はここの町人には居ないはずだからな。

 いや、花屋のベンス爺さんは昔やんちゃをしていたらしいからもしかしたら……って、そういえば持病の腰痛が原因で戦争には参加してなかったか。


 とりあえず。闇雲に探し回るだけでは見つかるものも見つからないだろうから、私は甲冑少女に知り合いの腕利きの探偵を紹介することにした。

 この探偵は私も長い付き合いになるが、詳しい素性は知らず素顔すら知らないが依頼は確実にこなす腕利きだ。

 どんな場所に隠された秘密も解き明かし、どんな任務も平然とこなす姿には感動すら覚える。

 最初の出会いこそ手違いで互いに命を落としそうになったが、今では私が心から信頼できる友人の一人だ。

 ちょうど私がその探偵と出会った後辺りに王国に悪名を轟かせていた犯罪組織が壊滅し、とある高位の貴族が背任の責を受けて没落したらしいが私には全く関係ない。

 一応、探偵の居場所を少女に教えておく。あの探偵はいっつも黒い服に身を包んで気配が限りなく薄いから見つけるのに苦労するかもしれないが、この少女に運命が味方するなら見つかるだろう。

 あれ、そういえばあいつは探偵ではなく密偵とか言っていたか。まぁ、そんなに違いはないだろう。











 今日も今日とて門ば……どうした甲冑少女そんな泣きそうな顔をして。そして、何故そんなに怒っているんだ我が友よ。

 なに?自分の居場所は私だから教えたのであって、そんな軽々しく他人に居場所を教えるなと。

 そう言われても、俺には人探しで頼れる友なんぞお前しかいないんだがな……急に機嫌が良くなったな。何が起きた。

 まぁ、それはいい。今回はその少女に力を貸してやってはくれまいか。何なら、今度レイツおばさんの所のケーキを奢るから。確か好物だっただろう。


 そこまで意気込まれると逆に言い出しづらいが、何でもそこの甲冑少女は「災害」と呼ばれる傭兵を探しているらしい。どんな小さい情報でもいいから、何か心当りはないだろうか。

 ふむ、何故そんな呆れた様な目で私を見るんだ。今日は寝癖はしっかり直してきた筈だが。

 そして、甲冑少女と何をヒソヒソと内緒話をしているんだ。いつの間に二人はそんなに仲良くなったんだ。

 おい、純粋な少女に何を吹き込んだ。驚いた顔をして固まったじゃないか。

 なに、依頼は完了したからケーキを楽しみにしてるだと。ちょっと待て、何も解決してないじゃな……もう居ないのか。相変わらず凄まじい身の軽さだな。

 

 しかし、この固まったままの少女を置いていくやつがいるか。宿まで背負っていくか、あの宿にはあまり近づきたくないんだがな。諦めの悪い蜘蛛が手ぐすね引いて待ってる蜘蛛の巣に、自らかかりにいくようなもんだが……仕方ないか。











 あ、危なかった……!あの女郎蜘蛛め、いつのまに変装なんて技術を覚えたんだ……!

 つい甲冑少女を投げつけて昨日は帰って来てしまったが、大丈夫だっただろうか。大丈夫ということにしておこう。

 っと、噂をすれば甲冑少女がこっちに向かって来ている。俺はどうすればいいんだ、とりあえず土下座の用意をしておくか。俺の芸術とまで呼ばれた土下座を見せ……ああ、真面目な話なのか。

 

 なになに、近くの村を占領した野盗の討伐を手伝って欲しいと。そうは言われても、私には門番という仕事があるんでな。

 なに、もう町長さんに話は通してあると。そうは言っても、並大抵の人じゃあ私はこの仕事の代わりは任せないぞ。

 

 まさか、冒険者のライカさんを連れ出してくるとはな。いいだろう、私で役に立てるかは分からないがお供しようじゃないか。

 とは言ったが何故、探偵に宿屋の主人までこの依頼に同行してるんだ。そりゃあ、私だけでは不安化もしれないが。

 何?二人がどうしても同行したいと言ってきた?いつの間に君ら三人はそんなに仲良くなったんだ。

 それに、探偵はいいとして宿屋は戦えないだろう。

 間接的には戦える……?ああ、そういえば薬品の扱いに長けてたんだったな。

 ええい、分かったからそのスカートの隙間から出した足を仕舞え。何でそんな太ももの付け根に薬品を取り付けているんだお前は。しかもそれ、瓶の色からして猛毒だろうが。

 大体、お前の正体を知っている私に色仕掛けが通用する筈がないだろう。なに、方法はいくらでもあるというか。

 ……まさかその薬品の中に媚薬なぞ含まれてないだろうな。何故目を逸らす。出発前にお前だけ荷物検査だ。











 に、荷物の半分が媚薬だったとは……ここまで筋金入りだったか。まったく褒めてないから照れるな。

 それじゃあ、出発するか。町の門番はライカさんに任せたし、ルナも置いてきたから門番は大丈夫だとは思うがな。いざとなったら、ルナに天狼形態になることも許可しているし。

 

 そんな事言ってる間に村に着いたな。野盗の数は140~50人くらいか。中規模だな。

 じゃあ、俺が100・探偵20・宿屋20・甲冑少女は残りくらいでいくか。いいからいいから、無理するな。君が強いのは分かるが、そんなに震えてちゃあな。人を相手にするのは初めてなんだろう?

 分かるさ。一度でも斬ったことのある雰囲気じゃないからな。


 さて、さっさと片付けるか。なんか野盗どもが災害とか死神とか毒蜘蛛とか五月蝿いな。どれも今心配することじゃ無いだろうに。

 ま、村を占領する際に何人か村人を殺めてるから、どのみち死刑だ。大人しく死んどけ。来世では真面目に働けよ。

 憐れ野盗は私に斬り刻まれ、探偵に心臓を一突きされ、宿屋に溶かされる憂き目に遭った。

 最後に首領っぽい男が残ったが、特に見せ場もなく甲冑少女にサクッと首を刎ねられて終わった。 


 さて、さっさと町に戻るか。討伐証明はこの首領っぽい男の首があれば十分だ。で、残りは焼くか埋めておく。死体なんてのはモンスターの絶好の餌でしかない。

 野盗は討伐したのにモンスターに住み着かれました、じゃあ意味がないからな。

 よし、急ぐぞ。ルナのふわっふわのお腹が俺を待っている。











 急いで帰って来たのに、出かけててルナ居なかった……。なんでも友達と遊びに行ったんだそうだ。ライカさんが伝言を預かっていた。

 寂しい気もするが、ルナももう仔犬じゃないからな。友達と遊ぶことも大事さ。だから、私の眼から流れてるのはただの塩水だ。他意はない。

 というか、犬系獣人の人ならルナの言葉が理解出来るってことに驚いた。ルナがよく町長さんの所に遊びに行くと思ったら、あれは話に行ってたのか。

 

 それに、最近は町長さんも仕事の合間を縫ってよく視察にやって来てくれるし、甲冑少女も何だかんだよく遊びに来るからな。あとは、探偵も顔を出す回数が増えた気がする。だが、宿屋お前は宿に帰って仕事しろ。


 しかしあれだな。町が大きくなるのは喜ばしいことだが、ここ最近は特に人の流入が増えている気がする。

 ライカさん率いる自警団のお蔭で問題は起きていないが、この規模はもう町というか都市に近いな。

 いつの間にか冒険者ギルドの本部が移転してきてるし。中央にいるはずの知り合いの商人のおっさんが店構えてるし。何かでっかい城建ててるし。

 この町が新しい王都になると言われても俺は驚かない気がする。











 さぁて、今日も門番を頑張るか。ルナが中々帰って来ないのが心配だな……。

 ああ、そういえば今朝早く国王がこの町に居を移した。これで、晴れてこの町は王都となりました。

 まぁ、そんな気はしてたな。どう考えてもあそこに建ってる城の形が王宮と瓜二つだもの。


 なんでも、帝国の奴らが王都に向けて侵攻を開始したらしい。

 で、先の戦争で王都もガタが来ていたから、これを機に王都を新しい場所に移そうってな話になったそうな。

 ここ最近人が増えたと思ったら先に王都民を移住させてたのか。そして、いよいよやばくなったので国王自身も全速力で逃避してきたと。立派に国王してるじゃないか。

 戦場で半べそかいてた青年とは思えない成長ぶりだな、おい。


 というより、帝国の馬鹿皇帝の野郎はあんだけ痛めつけてやったのにまた性懲りもなく王国に戦を仕掛けて来てんのか。そういう全く成長しないところが嫌いだってのに。

 ああいや、あそこも阿保息子に代替わりしてたか。


 でも、このままだとこの町に危害が及びかねない。それは俺の門番としての流儀に反する。

 とてつもなく面倒臭いが、飛んでくる火の粉は払うしかないか。うわ、ルナが居ないから移動するだけで面倒臭い。











 さて、今日は門番の仕事をお休みして久しぶりの傭兵稼業に精を出しています。具体的に言うと、王都に居座ってた帝国兵の奴らを大掃除してます。

 それと、何故か甲冑少女と町長さんと探偵と宿屋が着いてきた。私の馬の後ろを馬車が着いてくると思ったら、中からこの四人が降りてくるんだからビックリだよ。

 もっとビックリしたのが、町長さんがとても強かったこと。武器の細剣が薙がれる度に5・6人の帝国兵が切り刻まれていく光景は圧巻の一言。その際、かすかに揺れる犬耳もポイントが高い。


 さて、粗方のゴミ野郎どもは掃除できたな。あーあー、こんなに建物を破壊しちゃってまぁ。これじゃあ、折角奪った王都も再利用できないだろうに。

 ま、そんなこと考える脳ミソも残って無いんだろうな。アンデッドの兵士ばかりじゃあ、な。

 アンデッド特有の辛気臭い腐った土の匂いが辺りに充満してて、鼻の利く町長さんなんて見るからに元気がないからな。

 アンデッドを初めて見た甲冑少女なんて半泣きで戦ってるし。それでも、切り裂く手を止めないのは天晴だ。


 さぁて、明らかに元王城に近づくにつれて屍兵の数が増えてきたぞ。流石に万を超す量を切り刻むと腕が疲れてくるな。

 どうせこの屍兵どもを操ってるのは、馬鹿皇帝の阿保息子なんだろうけどな。











 おいこら、皇帝の阿保息子。いや、今はお前が皇帝か。お前さんもアンデッドになってるってのはどういうこった。

 しかも、しっかり会話出来てるってことはお前リッチ……でもないな、その力は。不死王ノーライフキングか。

 どうやって……まさかお前、奴らと取引したのか。代償はなんだ。その力を得るために何を犠牲にした。

 帝国で暮らしていた民全ての魂か、そうか。平穏に暮らしていた何の関係もない国民か、そうか。……そうか。

 なら、お前一人だけ現世に残ってるのは不公平だな。


 っと、流石に一筋縄じゃあいかないか。伊達に不死の力を身に宿してないな。まさか、微塵切りにされても再生するとは思わなかった。

 仕方ない。疲れるからこれは使いたくなかったんだけどな。四人とも、ちょっと下がってろ。むしろ、この城から脱出して街に戻っていた方がいい。まず間違いなく、この城ぐらいは消滅するから。


 さて、待たせて悪かったな。なに、細切れの状態から回復するのには丁度いい時間だっただろ。

 それじゃあ、ちゃんと見てろよ。疲れるから、あんまりやらないからな。

 『顕神:炎皇』からの『我が手に宿るは始原の火……全てを滅する浄化の焔……滅炎!』

 

 おっと、本当に城ごと丸々焼滅したか。これは後で怒られるかな。……あの阿保皇帝がやったことにしとくか。

 











 まったく……人の世に戦を起こして何が面白いのかね。どうせ見てたんだろ。出て来いよ。なぁ、腐れ神。

 貴様の腐った視線なんぞ向けられたら、食事中のグールだって気が付くっての。

 それで、今回はなんだ。また戦争を起こして死者の軍勢を増やす算段か。

 目的は私?私にそんな趣味はないが。おいおい、今のは笑う所だろう。

 つまり、あの阿保皇帝もただの釣り餌ってことか。救われねぇな。


 というか、貴様も懲りないな。前回の戦争の時に万に砕いてやったというのに、もう忘れたのか。そうか、記憶する脳が遂に腐り落ちたか。

 えらく余裕綽々だな。前には無かった私の弱点を突く、と。……まさか!

 町に向かって山が動いてる……いや、あれはタイタン族達か。しかも、アンデッドか。

 なるほど、町を破壊されたく無かったら大人しく殺されろと。

 どこで彼らを手に入れたかは知らないが、門番の俺の前で町を破壊しようとするとはいい度胸してるな。

 


 確かに、あの町は以前の私には無かった弱点かも知れない。だが、今の私は以前の私よりも強いぞ。

 どうした、そんなに眼球が眼窩から零れ落ちそうなほどに目を見開いて。ああ、あのタイタンを頭から丸呑みしてるのが俺の愛犬のルナだ。丁度お出かけから帰ってきたみたいだな。なんか、出掛ける前よりでかくなってるな。

 ルナの近くで同じ様な巨犬二匹がタイタンを丸焼きにしてるが、あれはケルベロスとオルトロスか。たぶん、ルナの友達だな。

 他の場所でタイタンを引き倒して蹂躙してるのは、ライカさんが率いる自警団か。ありゃもう、自警団じゃないな。ただの軍隊だ。

 おーおー、甲冑少女に町長さん、探偵に宿屋も張り切ってるな。探偵が足の腱を切り、甲冑少女が転がし、宿屋が痺れさせて、町長さんが滅多刺しと。うわなにあれこわい。


 見えるか腐れ神。あれが以前の私が持っていなかったものだ。私一人では出来ることは限られているという事がよく分かる。何でも一人で出来ると思っていた、昔の私に見せてやりたい光景だよ本当に。

 さて、皆が頑張ってるのに私がサボっている訳にはいかないな。仕事するか。

 あの町に危害を加えようとした貴様を排除するという、門番としての仕事をな。なに、刹那の間に終わる。ただし、今度は砕くなんて優しいもんじゃないけどな。

 『顕神:神威』からの『我が身に宿るは無神の御力……不可説転の闇に滅せ……無明!』


 ……あの腐れ神の野郎。自分が死ぬと腐界への門が開くようにしてやがったのか……。もう腐界の瘴気でこの辺腐り始めてるし。

 ご丁寧に腐界側からしか閉じないようになってるな。ま、戸締りも門番の仕事か。

 一度でいいから町長さんの犬耳を触らせてもらえば良かったかな。ルナは友達がいるから大丈夫かな。甲冑少女は目的を果たせるといいな。探偵にレイツおばさんのケーキ奢れなかったな。宿屋は……うん。

 

 流石にこの濃度の瘴気は厳しいな。まぁ、門が閉じるまで保てば関係ないか。

 おや、町長さんルナに乗ってきましたか。もう町の方は大丈夫なんですかね。なるほど、それを聞いて安心しました。

 ちょっと出掛けてくるので、町の皆さんにはよろしく言っておいて下さい。ああ、それと代わりの門番の手配を頼みます。

 こっちに来るんじゃねぇ!折角守ったのに腐っちまったんじゃ門番の名折れですので。それでは、お元気で。











 先の帝国との戦争・帝国からの再侵攻・遷都から数年。その際に受けた傷跡もようやく癒え、王都は以前に負けず劣らずの栄華を誇っている。

 再侵攻を行った帝国が時を同じくして謎の滅亡を遂げたことは、歴史上最大の謎として世界中の学者が調査をしているそうだ。

 

 遷都直後の弱っている時期は他国からの侵攻もあったらしいが、例外なくどこからともなく現れる守り神に滅ぼされたとのこと。生き残りの話では、巨大な犬三匹が敵戦場の何もかもを蹂躙していったらしい。今ではどこの国とも友好的な関係を築けていると。

 また、領主である犬系獣人の女性もその手腕を遺憾なく発揮して王都の発展を加速させていると、風のうわさで聞いた。

 他の噂としては、王都で悪さをすると如何なる場所に逃げようとも死神に命を刈り取られるとか、魔窟と呼ばれる宿屋があるとか。ろくな噂が無いな。


 王都へ通じる巨大な門の前には、町に出入りする人・荷物の検査を行っている甲冑を着込んだ綺麗な女性がいた。その女性に領主さんへ会うにはどうすれば良いか尋ねると、怪訝な顔をした後に目を見開いて驚いた顔をして固まってしまった。

 おかしいな、今日は寝癖はしっかり直してきた筈だが。


 ああいや、そんなに慌てて伝えに行かなくてもいいんですよ……って、もういないし。


 さて、まさか脱出した先が他の大陸だとは思わなかった。お蔭でここまで戻ってくるのに、数年もかかってしまったじゃないか。

 また門番の仕事でももらえればいいんだが。











 大陸で最大の勢力を誇る王国がある。しかし、今ではどの国も侵攻しようなどという愚行はしない。

 この王国を亡ぼそうと思えば、次の難関を乗り越えていかなければいけない。

 最初に、犬系獣人の男性・甲冑を着込んだ女性を筆頭とした精強な冒険者で構成された最強の混成部隊。

 次に、山の如き巨体で風の如く戦場を縦横無尽に走り回る天狼・ケルベロス・オルトロス。

 ここまでは数を揃えれば打倒も塩の結晶ほどだが可能かもしれない。だが、最後はどうしようもない。

 

 最期に待っているのは、門番。この名前を聞いただけで恐慌状態に陥る者も少なくない。

 過去には『災害』とも呼ばれていたが、今では『門番』の二つ名でどの戦場であっても通じる。

 普段はただの門番であるあの男は、町を傷つける者、天狼を傷つける者、妻である領主を傷つける者を決して許さない。以上のどれかの罪を犯した者に対し、門番は『門番』となる。存在ごと消えた国も片手では足りない。


 また、王都内であまりに目に余る犯罪を犯した者には死神と呼ばれるアサシンからの贈り物があるという。死という名の贈り物が。

 そうでなくても、あの王都には毒蜘蛛が細部に渡るまで糸を張り巡らせているというのに。


 そういえば、門番の男については異界との門を自由自在に開閉することが出来るとの噂もある。が、流石にこれは嘘であろう。

 

 なんと。今入った情報によると、あの王都の女領主が懐妊したそうだ。

 これで、今以上にあの国に手を出そうと考える愚か者は減るだろう。子を持った親というのは、例え矮小な獣であっても脅威と化す。それが、あの男となれば如何ほどのものか。

 

 私にもその強さがあれば、あの不肖の息子を救うことができたのだろうか。……考えても仕方ないことか。

 さて、私はもう消えるとしよう。国を失った元皇帝にどれほどの価値があるか分からないが、あの男を見習ってどこか小さな村で門番の仕事でも探すとするさ。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。


 さぁて、もう一つの方を再開しよう ( ゜Д゜)9

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― 新着の感想 ―
[良い点] 逆お気に入りにして貰っている流れでコチラも読ませて頂きましたが面白いですやん (´∀`) 冒険者が落ち着いたらこっちも本格的に頑張って見てわ (´・ω・`)? 何しろモフモフがあります…
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