第2話 青春は学食だ!
昼は至福の時間だ。 僕は注文したラーメンを受け取り、空いている席を探すことにした。
「うーん、さすが元女子高というか……僕が気軽に入れるところは無い、よなぁ」
お盆を手に立ち尽くしていると背後から声をかけられた。
「おう、どうしたキョン」
「あ、部長。 それに遥ちゃんも」
「今日はお姉ちゃんと一緒にお昼にしようと思いまして。 キョン君もどうですか?」
「え、いいの?」
「はい」
太陽のような笑顔で答える遥ちゃん。 間違いなく僕は天使と遭遇した!
「まぁ、お前に気が付かないままスルーしても良かったんだけどさ」
あ、悪魔もセットだ……
「ほら、さっさと行くぞ。 飯の時間はそう長くないんだからよ」
カウンターのある一階からテーブル席のある二階へと移動する。
「そういえば部長達は何にしたんですか?」
「アタシは焼き魚定食」
「私はスパゲッティです」
「つーか、麺モノで腹が膨れるのかねぇ。 米食え、米」
「ラーメンは安いので……」
「私はあまり食べないから……」
僕達の答えに部長は納得の行かないようだった。
「んでよ、キョン」
「はい?」
席に着いた僕達は昼御飯を食べ始める。 向かいに座る部長が器用な箸使いで焼き魚の骨を取りながら僕に聞いてきた。
「部活には慣れたか?」
「えぇ、まぁ」
「煮え切らない答えだなぁ。 こう、なんつーの? はっきりした答えが欲しいのよ」
「はっきりした答えですか」
「私は慣れましたよ。 色々楽しくやれてますし」
部長の隣に座る遥ちゃんが横から助け舟。 よし、この答えを借りよう。
「僕も楽し――」
「待て、遥の答えをパクるな」
「えぇ……」
思わぬ突っ込み。 容赦無いな、この人。
「で、どうなんだ?」
「し、新鮮だなぁって……」
「お前……面白い奴だな」
言葉では笑っているものの顔は笑っていない部長。 そんな質問を想定していなかった上に遥ちゃんの答えが使えなかったのが痛い。
「遥はよ、男子が入学してきてどうよ」
「どうって言われても。 中学は共学でしたし、ここに入学しても男子と一緒だから特には……」
「そういやそうだったけか。 アタシと亜理紗はそれが無い時期を一年過ごしてたんだよなぁ。 それにアタシらの学年には男子が来ないしな」
「でも、もしかすると転校生が来るかもしれませんよ?」
「いやいやいや、ありえねぇだろ。 どんだけ物好きな奴なんだよ。 ちゃんちゃらおかしーぜ」
ケタケタ笑いながら焼き魚を摘む部長。 その隣では遥ちゃんがニコニコしている。
「そういえば、亜里沙さんはどうしたんですか?」
「ん?」
「一緒だと思ったので。 今日、二人で登校してましたよね」
「ああ。 あいつは教室で飯食ってるよ」
「学食使わないんですか?」
「たまにしか使わねぇよ。 団子とかケーキなんかの特別なメニューが出る日以外は教室で自作の弁当さ」
「へぇ。 亜理紗さんってお弁当作れるんですか」
僕は思わず感心した。 材料を切るぐらいなら出来るが手の込んだことは未だに苦手なだけあって、亜里沙さんの話は尊敬に値する。
「お姉ちゃんも昔はお弁当作ろうとしていたんですよ」
「ちょっ! 遥! 余計なこと言うんじゃねぇよ!」
慌てふためく部長。 どうしようもないぐらいの慌てっぷりだ。
「りょっ、料理ぐらいどうってことねぇよ! ただ、不器用なだけでよ……」
視線を僕から逸らし、天を仰ぐ。
「そっ、そんなに食いたいってんなら作ってやらんこともないぞ」
「本当ですか、お姉ちゃん!」
「お、おう! 女に二言はねぇからな!」
「あはは……期待してます」
はてさて、一体どうなることやら……