Bitter Chocolate
「ねぇねぇ!!私のこと好き?」
「・・・うん。」
「本当に??」
「うん。」
「1番?」
「うん。」
「学年で1番かわいい由紀ちゃんよりも??」
「うん。」
「チョコレート作って
きたよ☆」
「うん。」
「見て!おいしそうでしょ!!」
「うん。」
「・・・ねぇ、聞いてる??」
「うん。」
「こっち見てよ。」
「うん。」
「見てないじゃん。」
「うん。」
「・・・・・・別れよっか。」
「うん。」
「うっ・・・ひどーい!!!!(泣)」
私が声を上げてことで、目の前の人物は顔をあげた。
面倒臭そうに。
「何?李実。」
「本ばっか読んでないで、話そうよ!!・・・それに別れるって・・・」
最後のほうは、ぼそぼそとしゃべった。
「・・・誰が別れんの??」
(最初に言ったことは無視ですか!!?)
「・・・私たち?」
「何で??」
「だってさっき、『うん』って言ったじゃない。」
「・・・言ったっけ?」
(聞いてなかったの~(泣))
「言いました!!」
「ごめんごめん。」
「うわー感情こもってなーい。」
じろりと睨んみながら言った。
彼は、表情も変えずに
「・・・ねぇ李実。」
彼が珍しく名前を呼ぶ。
私は少し期待をした。
「なあに??」
今日1日の中で、1番極上の笑顔を彼に向けた。
「静かにして。」
そう一言言い終わると、また本を読み始めてしまった。
(本に負けるって・・・。女の魅力が足りない!?)
そんなことを思いながら、彼に目を向ける。
真剣な表情。
でもそんな彼の表情や動作が、愛しくも思える。
・・・かまってくれない時は別として。
(うぅー暇ー。ちょっかい出しちゃおうかなー。)
「ねぇねぇ、私とその本どっちが好き?」
「・・・。」
「ねぇー。」
「・・・。」
「ねぇってば!!」
「うるさい!!大人しくしてて。」
(怒られた。)
李実は不機嫌になった。
「もういいもん!!蓮なんて大嫌い!!・・・浮気するから!!」
蓮の眉が少し動いた。
でも、蓮は気にせず本を読み続けている。
(もういいもん。少しだけ反応あったし。昔なんて『うん』か『やだ』それか無言だったしね。・・・眠くなっちゃった・・・。)
李実は、腕をテーブルの上に置き寝始めた。
家の中には、時計の音と外の物音が響いた。
パタン。
「読み終わった。・・・やっべ!!李実怒ってるかも・・・。そういえば、浮気がどうとかって・・・。」
その時はちょうど面白いところで、李実の話を一切聞いていなかった。
本に一度夢中になっちゃうと、周りが聞こえなくなる。
俺の悪い癖。
いやに静かな部屋を見渡してみる。
テーブルには、李実と小包が。
小包を開けてみる。
その中には、トリュフが。
1つ手にとって食べる。
(ほろ苦い。)
口の中で、ほどよく溶ける。
俺は、甘いのが苦手だった。
何も言わず作ってもらったチョコレートは、俺好みだった。
自然と口元が緩む。
李実を見ると、目元には涙の痕が。
手をそっと差し出し、李実の頭を優しく撫でる。
1度手を止め
「李実?」
と声をかける。
反応がない。
そっと李実に顔を近づける。
口には柔らかい唇の感触。
「李実。」
ボソッと呟く。
唇を離し、李実の寝顔を見る。
(寝てれば可愛いのに。)
口には出さず心で言う。
普段は絶対言ってなんかやらない。
李実を見つめ、頭を撫でながら、自分も寝てしまった。
うっすらと目を開ける。
部屋は薄暗くなっていた。
頭になにかが。頭が回り始め、目の前にある蓮の顔にどぎまぎした。
顔をバッとあげる。
それと同時に、蓮の手が落ちる。
(蓮の手だったんだ。)
蓮の顔を見つめる。
幼く感じた。
(かわいい。)
テーブルを見ると、蓮にあげたチョコが1つ無くなっていた。
もう一度蓮に目を向け
「好きだよ。」
と呟いた。
私の彼氏は、無口で甘い言葉を囁かない。
まるで、ビターチョコのような人。
短いですが読んで頂きありがとうございます。