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喧嘩上等!


「伊夜!ちょっと!」

朝、登校してきた私に佐織と信子が駆け寄ってきた。

「…なによ?…おはよ…」

私は訳が分からず、とりあえず挨拶。

「ったく、おはようじゃないわよ!昨日、プレイボーイと帰ったでしょ?」

佐織が言った。…なにそれ。

「悪いけど、キヨだよ。確かに昨日は帰ったけど、それが何か?」

…ほっとけ…とか言ってたくせに…。

「そのキヨのせいで、標的になったよ、いよっち」

信子が言った。

…標的…?…なに…それ…。

詳しく尋ねる前に、その理由が分かった。

急に後ろから声をかけられた。

「ちょっと良いかしら?」

振り返ると、ドラマとかにいそうな美少女が立っていた。…でも…目がキツめなカンジ。

「あ…えっと…私に用?」

「そう。ちょっと来てくれる?」

そう言って彼女は出口に向かって歩き出した。

…なによ…。そっちがそのつもりなら…やってやるわよ。

「のぶちゃん」

私は信子に声をかけた。

「ん?」

「コレ、よろしくね」

そう言って私はカバンを渡す。

少し驚いた顔をしたが、信子は私のカバンを受け取って、一言。

「遅刻すんなよ。後20分だからね」

「了解!!」

私は教室を出た。


私は階段の踊り場に連れてこられた。その階段は、生徒玄関とは反対側なので朝はほとんど使われていなかった。

行ってみると、そこには2人の女子生徒がいた。

「それで?何の用?」

私はあくまでも冷静を装って言った。内心ビビりまくりだけと…。

「キヨと付き合ってるんでしょ?悪い事は言わないから止めなさい」

私を呼び出した女の子が言った。

「そんなの私とキヨの勝手じゃない。あなたに関係ないわ」

私がそう言うと、2人のうちの一人が言った。

「あなた、遊ばれてるのよ。痛い目に会いたくなければ彼から手を引きなさい」

…手を…引く?

「私はキヨと恋愛をしてるの。かけひきしてるんじゃないわよ」

失礼な!仮にも人の彼氏でしょっ!

「…なまいきね」

美少女は言った。

「なまいきで結構」

私も引き下がらない。

しばらくお互いが睨みあっていた。

そのとき…

声がした…。

「もしもし、お嬢さん方、あと10分でHRですが?」

そう言って、誰かが階段の物陰からにゅっと現れた。

…キヨだ。

「キヨ…」

美少女がつぶやく。

「よお、和深(かずみ)じゃん」

陽気に右手をヒラヒラさせるキヨ。

「いつから居たわけ?」

今度は私が言った。

「んーと…ずっとかな。なにせ、俺の特等席だから。ココ」

そう言って階段を指差す。

「ねぇ、キヨ、なんでこんな子と付き合ってるの?なんで私じゃないの?」

和深と呼ばれたその子はキヨに言った。

「なに?そんなに不満か?」

「モチロンよ。しかも私と付き合おうって言ったのはあなたの方よ。なのに…」

それを聞いたキヨは

「あのさ、コイツは和深と違うの。俺と付き合う理由も、俺に求めるものも」

…えっ…?

「どういうことよ!」

和深はキヨにくってかかった。

「あのさ…」

そう言うと、キヨはクイッと和深のアゴを指で持ち上げた。

「アンタが俺に望んだのはなんだ?俺の体だろ?彼氏にフラレて寂しくて、俺に慰めてほしかっただけだろ?」

和深はキヨから目をそらし、後退りした。

するとキヨは私の首に腕を回し、続けた。「でもコイツは…伊夜はさ、はじめに何しようって言ったと思う?手をつなごうだってさ」

そう言ってキヨは笑った。私はドキドキしていた。

「悪いけどさ、俺、しばらく伊夜といるわ。ホントの恋愛とやらができそうだって思いはじめたんだ」

「あなたが…ホントの恋愛ですって?」

和深はフッと鼻で笑った。

「悪いか。お前らみたいなプライド高くて未練がましい奴はもう沢山だよ。俺のことは諦めな。あと、伊夜にも手を出すな」

キヨがキツめの口調で言った。

その言い方に驚いたのか、和深たちは少しひるんだが、スグに

「フンッ」

とこっちを睨みながら去っていった。

3人がいなくなり、私とキヨが残った。

「…何それ…」

私が言う。

「へっ?」

…とキヨ。

「シャツ」

私はそう言ってキヨの制服のシャツを指さした。

それは、ボタンが全部外され、裾が小さく結んであった。下に着ている、派手な青のTシャツがとても目立つ。

「何?ヘン?」

「…派手…」

「マジか?俺の中では最先端のイケてるファッションなんだけど?」

そう言ってまた笑うキヨ。

「…別に良いけど。それでも…。…あと…」

私はキヨを見た。

「ありがとう」

あえて、何に対してのお礼かは言わなかった。全部をひっくるめてのありがとう。

そんな私の気持ちが分かっているのかいないのか、キヨはお気楽そうに

「おう」

と言った。

「…教室…戻ろうかな…」

「あ、んじゃ俺も」

そうやって教室へ向かおうとしたとき誰かがいた。

良く見るとそれは…

「信ちゃん!佐織!」

そこにいたのは教室にいるはずの二人だった。

「どうしたの?」

駆け寄る私。

固い表情の二人。

…キヨが降りてきた。

それに気がつき、信子がキヨを見る。

信子に気がついたキヨ。急に顔色が変わる。そして…一言呟いた。

「…信子…」


………えっ?………。

今…何て…。

ここにいる全員の動きが止まった。

私は信子を見て、信子はキヨを見て、キヨは信子を見ていた。佐織だけは誰も見ないで床の方へ視線を落としていた。

―――……今…チャイムが鳴った…。

…全員遅刻決定。

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