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あきらめないから。


 お互い何も言わない。

 何も言えない。


「キヨ、もしかして彼女?」

 キヨの後ろの女の人は聞く。だが、相変わらずキヨから返事は無い。


 結局彼女は、

「私達、帰るね」

 と告げてその場を立ち去ってしまった。



 私の頭は考えることをやめたみたいに、はたらこうとしない。

 キヨは下を向いて黙っている。



「さよなら」



 私はそう言って走り出した。それが私の意思かは分からない。気づいたら走っていた。

 後ろで声が聞こえた様な気もしたけど……私の足は止まらなかった。


 家に着いた私は、キヨ用のお弁当をカバンから取りだし、リビングのテーブルに放りなげた。

「こえー……、弁当ぐらい洗えよ」

 先に帰っていた中2の弟・涼汰(りょうた)が私に言った。

「食べてないから、あげる。部活あったんでしょ?」

 私はそう言い放つと自分の部屋へ向かった。後ろから

「マジで?ラッキー」

 という、今の私には出せない明るい声がした。



 部屋に着くなり、私はベッドに倒れこんだ。……なんでかな……涙も出ないや。


 私は制服のポケットから携帯を取りだし、キヨの履歴を消した。

 メールも電話もキヨの文字が無くなった携帯。

 私は最後にアドレス帳からキヨを消した。

 こうして、キヨは完全に私の携帯からいなくなった。


 分かっていたつもりだった。キヨはプレイボーイだ。一人の女で満足するわけない。でも心のどこかで、もう大丈夫だと思っていた。……私は甘かったの?


 キヨには私じゃダメなんだ。夢見がちな私は……かえって負担になってしまう。もっと広い、プレイボーイでも受け入れて付き合えるような人にならないと無理なんだ。


 そんなにダメなのかなぁ……。好きな人に、私だけを見ててほしいって思うこと。やっぱり私は非現実的なのかなぁ。



 私はワガママだ。プレイボーイなキヨにショックを受けたくせに……自分から別れを告げたくせに……。


 まだキヨが好きだよ。

 声が聞きたい。

 笑った顔が見たい。

 それほどに、私はキヨが好きだった。はじめはしょうがないプレイボーイを更正させるつもりでも、今では自分の一部みたい。

 無くして気づいた。私はキヨが居ないとダメ。


 普通の可愛らしい女の子ならばとっくに泣いているけど、私は違う。


 私はベッドから体を起こす。


 キヨが居ないとダメなら……キヨも私が居ないとダメなくらいにしなきゃいけない。


 私はナゼかふっきれた。清々しい気分。まるで、心のリセットボタンを押したみたいに。


 またまだ諦めないから。そっちがそのつもりなら、こっちもやってやる。



 その時、携帯が鳴った。未登録の番号。でも、その番号には見覚えがあった。


「キヨ……?」


 それは紛れもなく、キヨの電話番号だった。初めて教えてもらったとき嬉しくて暗記するぐらい見たから間違いない。


 私は通話ボタンを押した。

『もしもし……伊夜……』

 今まで全然聞いたことない、弱々しいキヨの声。


「何?」

『ごめん、えっと……さっきのは……いつから居た?』

「電話の話の辺り」

『そっ……そう……。あのさ、やっぱり怒った?もしかして、俺ってすでに元カレ?』

 私は答えない。

『あの……伊夜?』

 少し間を置き、私は少し深呼吸をしながら大きな声で話はじめた。

「バッカじゃないの?キヨはプレイボーイなんでしょ?確かにショックで別れようかと思ったけど、冷静に考えたらそれって私が負けたって事じゃない!」

『は?負け?』

 電話の向こうから、すっとんきょうな声。

「キヨがプレイボーイなんて汚名を晴らせる様に私は1週間やってきたのに、それが出来なかった上に逃げるなんて私がカッコ悪いわよ」

『あのさ……お前……』

 私はキヨの言葉など無視して続ける。

「つまり!キヨが別れたいって言わない限り私は負けないし別れないわ。キヨは別れたい?今日居たあの人と付き合いたい?」


 私は一気に言うと、苦しくて少し呼吸が荒くなった。

 すると、キヨは予想外の反応を示した。

『プッ……ハハハハッ!伊夜、お前すげぇや!』

「な…何よ。笑わなくても良いじゃない」

『いや、ゴメンゴメン。でもさ、怒られるか別れ話かと思ってたから一気に脱力したんだよ!……それに……』

「……それに?」

『負けたのは俺の方みたいだ。最近お前とずっと居るのにちっとも飽きないからさ、なんかシャクだと思って別の女と居たんだけど……』

 少し間を置いてキヨは言った。

『お前といる方が居心地良いみたいだ。だから俺、プレイボーイやめる』


 ……それ、キヨが言ってるんだよね?嘘じゃ無いよね?


『だからさ、俺のこと、また頼むわ。かなり自分勝手だけど』

「……しょうがないな。ま、許してあげますよ。でも、今回だけだからね」

 少し涙声の私。……ナゼか今、涙が出る。

『分かった。それと、明日は弁当一緒に食おう。絶対行くから』

「分かってます。来なかったらキヨの分も食べるからね!」


 しょうがないな。明日も少し豪華なお弁当にしなくちゃ。

『オニギリ、具はタラコな!』

「分かってるよ。ちなみに今日もタラコだったのに……」

『そうだったのか……ゴメン』

「もういい。今日で付き合って1週間目だったから少し豪華にしたけど、明日はもっと良いお弁当にするから」

『うん、待ってる』


 電話の向こうから笑い声がする。

 私も少し笑う。


『よし、じゃあ、また明日な』

「うん、また明日」


 こうして私たちはまた一緒にお弁当を食べるようになった。オニギリの具はタラコ。飽きるまで入れ続けるつもりだ。


 佐織と信子のひそひそ話はキヨの事で、女と居るところを見たので私に教えようかどうかを迷っていたらしい。

 でも次の日に打ち明けてくれ、私の話を聞いて安心していた。

 つくづく、良い友達を持ったものだ。



 ちなみに、私はキヨとの電話の後、もう一度電話をした。


 キヨのメルアドを聞くために………。




 再登録して一番はじめに来たキヨからのメールにはただ一言、

『今度は消すなよ!』

 と書かれていた。




ここまで読んで下さった方々、ありがとうございました。なんとか完結出来ました。

この作品、とにかく更新が不定期ですいませんでした。この場を借りて謝ります。

では、この辺で。他の作品を見かけたときにはまた目を通して頂けると幸いです。

本当にありがとうございました。

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