作戦実行……?!
朝6時……。
いつもならぐっすり眠っている時間だ。
しかし私はもう起きていた。起きて……台所に居た。
「あとは、オニギリだけだ!」
私は完成目前になった2つのお弁当箱を見る。
私たちが目指すカップルへの第一歩は『一緒に手作りのお弁当を食べる』事だった。そのために昨日、お昼を食べる約束を取りつけ、一時間も前から弁当づくりに励んでいた。
女ったらしで『プレイボーイ』などとあだ名がつくキヨと本当のカップルになるためにはこれしかないという結論だった。
そしてそのあと無事に弁当を作り上げ、2つの弁当を大事にカバンに入れて学校へ行った。
「おっはよー、いよっち!」
「あ、伊夜、クマ発見」
信子と佐織が駆け寄ってくる。
「おはよぉ、今日は5時起きだったんだよ……」
「5時?!何してたのよ!」
目を丸くする佐織。
「お弁当よ。お・べ・ん・と・う」
うきうきしながら言う私。
「語尾にハートが付いてるよ……もしかしてそれがいよっちの作戦……?」
「そっ!愛妻弁当ならぬ彼女弁当よっ!」
「いや、そのままだって、伊夜」
「何言ってもムダよ、さおりん」
呆れる二人。
「ま、見ててよ。絶対私たち、ビックリするくらいのカップルになるからね」
私は既に勝った気でいた。
一時間目は数学。苦手だが必死で持ち堪える。
……が……眠い!
さすがに5時起きはキツイ。まぶたとまぶたがくっつくのは時間の問題だ。
ヤバイ……もう限界かも……。
睡魔に負けそうなその時、チャイムが鳴った。ラッキーだ!
先生が出ていくと同時に、私は机の上で腕を組み、顔を伏せて眠った……。
「伊夜ー」
「いよっちぃー」
……あ、遠くで声がする……。
「ダメだ、全く起きないよ……」
「もう、仕方ない。先に食べよう。間に合わなくなるし」
……ん……?食べる……?
なんか忘れてたような……。
「あ―――っ!」
ガバッと飛び起きる私。
「あ、起きた?伊夜」
「よく寝てたねぇ、いよっち」
二人は笑いながらこっちを見て、弁当を開きだした。
「……もしかして……」
「今はお昼だよ。しかも次は移動教室だから今食べないと次に間に合わないよ。ぎりぎりに起きて良かったね、伊夜」
「……今何時?」
「あと10分で休み終わるよ。ちなみに2・3の英語は自習だったよ。助かったねぇ、いよっち」
「……次って?」
「確か体育だよ。しかも外だってぇ」
タコさんウインナーを頬張る佐織。
「長距離のテストだって。成績引っ掛かるならサボれないよ」
タマゴサンドを食べながら溜め息をつく信子。
「あ……あのさ……、キヨは来なかった?」
恐る恐る尋ねる私。
「来たよ。5分前に。寝てるいよっち見たら『今日はいいって言っといて』だって」
…………最悪だ。
「キヨと何か約束してたの?」
今度はオニギリを食べる佐織。
「……まぁ……ちょっと……」
「あり?そぉいえば、いよっちは今日、愛妻弁当だったんじゃない?」
ハムサンドをミルクティと一緒に食べる信子。
「……」
私は……自分のアホさに嫌気がさし、結局その後は何も食べないで体育に向かった。
ところが只でさえ成績が悪い体育なのに空腹で気持悪くなり、テストは最悪だった。
……放課後、キヨに何て言おう……。