カップルになるために。
私たちは何とか仲直りした。ケンカしていたのかどうかもよく分からないけれど……。
でも……私は何かが違うと思っていた。
これって本当に付き合ってるって言えるの?私は恋がしたかったハズだ。でも今は恋するどころか付き合っているのかすら疑問……。でもその解決方法はよく分からない……。
「うーん……」
「どうした、いよっち。悩むとハゲるよ?」
……この声は……。
「信ちゃんっ!失礼な……私はハゲませんっ!」
「そう言ってる人ほど危ないよん」
ニヤニヤと意地悪そうな顔。
……でも良かった。また信ちゃんと普通に話せる。私にはそれが何より嬉しかった。
「あれっ?さゆりんは?」
「部活。大会近いんだってぇ……」
「そっか……ところで、真面目にどうしたの?」
「……うーん……」信子に言うべきか……?キヨと恋人らしく付き合うにはどうするか……なんて。
「あのさ、変な気遣いならやめてよね。私にはもう彼氏がいるし、キヨの事もあきらめたのよ」
……そういう事なら……。
私は信子に話してみた。恋人らしくなる方法について…。
「……そっか。確かにあんたらは恋人というより友達だよね……」
……やっぱりそう見えてた……。
「あんまり考えこまないほうが良いんじゃない?気楽に考えなよ」
信子がボソッと言う。
「……どういうこと?」
「いよっちは多分、恋人だのカップルだののイメージにとらわれすぎなんだよ。実際はもっと手の届きやすい、楽なもんだよ」
「……そうなのかな……」
「うん。だからさ、自然に……いよっちの思うようにやってみなよ」
「……そっか……そうだよね。ありがとう、信ちゃん」
信子に言われて、急に肩の力が抜けた。
「ありがとう、信ちゃん」
「いえいえ、どういたしまして。なんかあったらいつでも言いなよ!」
「うん!!」
その後、私は信子と別れてキヨとの待ち合わせ場所に行った。
「キヨ!」
「遅いよ。っていうか、今まで俺より早かったことあるか?」
「どうだったかな……ま、気にしないで。帰ろう」
「……はいはい。ちょっとは気にしろよな……」
私たちは歩きだした。手を繋ぐのは当たり前になっていた。
「……ねぇ、キヨ……」
「何?」
「私たちは付き合ってるんだよね?」
「一応……」
「……一応か……よしっ!!」
私は立ち止まり、キヨの方を向いて言った。
「明日から、お昼は一緒に食べよう」
「……はっ?」
「私、キヨの事をもっと知りたい。キヨが何考えてるのか、どう思ってるの、とか……だから一緒に居る時間を長くしたいんだ……ダメかな?」
「ダメじゃないけどさ……唐突だな……」
「思い立ったらまず実行。それが私だよ。……了解?」
「了解了解!んじゃ、明日迎えに行きます。校舎裏で食えば良いだろ」
私の粘り勝ちだ。
「ありがと。さっすがキヨ」
私は嬉しくなって無意識の内に笑顔だ。
「調子良いなぁ、オマエ」
苦笑いのキヨ。
この後も少し雑談をして、私たちは別れた。
さ、明日は気合い入れてやるぞっ!!