仲良し3人組。
私は彼氏が欲しい。
抱き合うだの、キスだのは二の次・三の次。
私は恋がしたい。
相手のことしか考えられなくなるくらい、誰かを好きになりたい。思ってもらいたい…。
「なぁーんで、私には彼氏がいないのかねぇ…。」
机に突っ伏し、開け放った窓の外を見ながら私はぼやいた。
「何?伊夜、彼氏欲しいの?」
そんな私を、友達の佐織が除きこんだ。…にやけてる…完全にバカにしてる…。
むくれて反対がわを向く。
「もー、伊夜ちゃん可愛すぎぃ〜」
爆笑する佐織。…ったく!!人の気も知らないで…!
「なに?さおりん、いよっちイジメてんの?混ぜてよっ!」
もう一人の友達・信子が嬉しそうに近寄ってくる。
「のぶ!また伊夜が彼氏欲しいって。」
「あらあら、いよっち、またそんな事言ってんの?ウチらが居んじゃん。」
佐織と信子は二人でニヤニヤしてる。
「信ちゃんは彼氏いんじゃん。説得力無いよ。」
私がそう言うと、信子は私の向かいがわに黙って座る。
「彼氏と信ちゃんさ、ラブラブじゃん。私も彼氏作ってそうなりたいよ。」
私は信子の方を見ないで続けた。
「伊夜はホントに無知だねぇ。」
佐織があきれた様に言う。
「悪かったね、無知で。」
すると、今度は信子が口を開く。
「あのね、いよっち。私と真司はラブラブなんかじゃないわよ。」
「…そうなの?」
「そうよ。それに、男なんて恋愛するより、触れたりキスしたりすることしか頭に無いのよ。」
…違う…。世の中の男はそんなのばっかじゃないはず。
「どうして?どうしてそうって言いきれるのよ。」
私は顔をあげ、ムキになって反論する。
「でもさ、伊夜ってホントに今まで付き合ったこと、無いの?」
佐織が話題をかえる。
「そうよ。…佐織だって無いじゃん。…寂しくないの?」
「別に。私は男に囲まれて育ったからねぇ。」
佐織は下に2人の弟がいる。
近所にも同世代の女友達がいなかったせいか、性格もどこかアッサリして、男にも全くといって良いほど興味無い。
…なぜか美形のアイドルや俳優にはたくさん好きな人いるみたいだけど…。
「でもさ、佐織は良いよ。可愛いし、まつげ長いし、胸も私よりあるし…。」
「いよっち、それを言うなら私はいよっちより胸無いよ。」
「信ちゃんは良いの!彼氏いるじゃんっ!」
私はため息をついた。
そう言いながら、自分で自分を惨めにしている…。その状態が嫌だ。
信子は下に一人弟はいるけど上にお姉さんがいて、どこか大人っぽい。
オシャレだし、ファッションセンスも良い。
私と同じで眼鏡をかけているけど、私より可愛い眼鏡だ。
「だぁから、男は節穴なのよ。いよっち、こんなに可愛いのに付き合わないなんて!」
「…無理しなくて良いよ…頭悪いし、スポーツはできないし…デブだし…眼鏡だし…。」
「伊夜はデブじゃないよ。でも痩せてもない。」
「ちょうどいいんじゃん、いよっち。それに眼鏡イヤならコンタクトにすれば?」
「イヤ。痛いし、面倒だし、高い。」
「なら無理じゃん。伊夜。他に何が不満よ?」
「私はこれまでナンパもチカンもストーカーもあったことない。」
「いよっち…あいたいの?」
信子が吹き出す。佐織も笑ってる。
「確かに迷惑だし、犯罪だけどさ、二人とも声かけられたりしたんでしょ?」
「さおりん、あるの?」
「…まあ…。のぶは?」
「…あるかな…チカンとストーカーは無いけど。」
「…私も…。」
二人は確認しあってる。
「あー、もー良い。私、帰る。なんで教室にいつまでも残ってるのよ。」
私は勢い良く、イスから立ち上がった。
「あ、んじゃ私もっ。伊夜、待ってよ〜。」
「わたしもっ!」
こうして、なんだかんだ言って、私たちは3人で過ごす。それが当たり前で自然だったからだ。
もう夕日が沈む。3つの影がゆらゆら揺れながら並んでいる。
今日も何の出会いもなかったな…。私はずっと、そればっかりを考えていた…。