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episud.2 -復讎の歌謳い-
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――わたしは幸せだった。
世界がどれだけ狭く暗くても、その先が絶望しかなかったとしても、わたしには信じられるものがあるから。
わたしを暗闇から連れ出してくれる人がいる。大切な人の手をわたしは取る。
兄はわたしを闇から祓ってくれた。
友達はわたしに光を照らしてくれた。
わたしは孤独じゃない。
わたしは生きていける。わたしはずっと、みんなと、一緒に。
何があっても、きっと、わたしは真っ直ぐ、生きて――
-ホントウニ?-
その問いかけにわたしは目を開く。
そこは深淵。その真ん中にわたしがいた。
何も見えない。でもわかる。「視」られている。
そしてその耳に纏わりつくような、気味悪い声が、わたしの頭の中に響く。
-ウソツキ……-
わたしは嘘なんてついてない。
わたしは何も偽ってなどいない。
わたしは大丈夫。後ろめたいことなんて――
-ワタシヲ殺シタクセニ-
暗闇の向こうに二つの光が見えた。
獰猛な獣のような瞳で射抜かれた気がした。
怖かった。身体は強張り、時間が停止する。
そしてわたしは、目を、醒ました。