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それが全能結晶の無能力者  作者: 詠見 きらい
episode-1. -Four Leaf Clover-
30/82

2-9  悪しき視線と声

2-9 悪しき視線と声


 ともかく藍園逢離を監視して見た雪哉だったが、案の定、逢離が理愛に対してどんな感情を抱いているのかは客観的に見ても大体の人間は理解出来ることだろう。


 どうやら逢離は理愛と友達になりたいようである。


 だから終始、理愛に接近している。理愛が視線を逢離に向ける事も話す事さえもしないのに逢離は蕩けた笑顔のまま理愛の後ろを追うように歩いている。これではまるで放し飼いにした犬が主人を追うように歩いているようにしか見えない。

 しかし逢離は理愛の後ろを歩いているのだが、理愛の背丈は逢離の胸元より低いせいか逢離の身体がよく見える。主従のように、主の背を守るように歩いている。これは理愛の後姿を隠しているようにも見えた。

「気遣っているのか? いや、それにしてもどうしてそこまで?」

 三日間の林間学校での食事はバイキング形式なのだが、そこで一番端に座る理愛の横を陣取るように逢離が座っている。トレイに乗っている食事の量は恐ろしい事になっている。理愛はまるで一日に必要なカロリーの十分の一も稼げていない量だと言うのに、逢離のトレイの上はトレイの色の識別がつかなくなるほどに限界にまで詰め込まれた膨大な食事の数。これを一人で平らげるとなると成人男性でもかなり厳しい、というか見ただけで胸焼けを起こせるレベルの惨状でしかない。

 しかし逢離は大きな声で「いただきます」の掛け声と共に口の中に放り込んでいる。雪哉はその光景を見せ付けられただけで精神的に満腹感を覚えてしまい、いつも食べる量の半分程しか食べられなかった。

 それはそうと理愛は酷い。あんなパンを半分にして更に一口噛り付いただけで終わっている。大丈夫なのだろうかと雪哉は不安を抱いたが、ここでは兄として理愛に接する事は出来ない。

 孤独を徹する理愛にとって今いる雪哉ですらまるで別人を見る目だった。そこまで徹底して周囲に関係を持ちたくないのか、そこまでされると雪哉としても諦めるしかない。

 その割に、「この女」だけは中々どうして――諦めない。

「そんなんじゃ昼からしんどいよ? ほら、これ食べなよ」

 逢離はトレイの上を要塞のように築いた食べ物の塊の一部を削いで、理愛のトレイに置いていた。理愛が一口齧っただけのパンが逢離の置いたスパゲティに呑まれていった。だが理愛はやはり感情を見せる事無く、席を立つ。自分には関わるなとはっきりとその意思を表示しているようだった。さすがに今の行為には見ていた周りも非難の色を込めて理愛を見ていた。

 それでも逢離は笑いながら、周囲の人間を窘めている。トレイには山盛りになったスパゲティ、それすらも置きっぱなして席を立ったのは雪哉も後で叱らなければと思う程だった。その敵意はただ敵を作るだけだと、どんな意思であれ受け取った人間がその意思を「負」とわかれば敵になるのは当然だ。それぐらい理愛だってわかっている筈だ。雪哉は理愛を追いかけるべきか迷ったが、ここは逢離を選んだ。

「ふふ、それは俺が頂こう」

「……え? あ、そ、そうっすか?」

 理愛がいなくなり空になった椅子に座り、フォークを回しながらそのままパスタにその尖端を突きつける。大量に作っただけのバイキングの食事の味に良し悪しを言うつもりはなく、雪哉は一気にスパゲティを口の中へ。いつもの半分の食事量だったので胃袋にはまだまだ詰める事が出来る。

「ふあぁ……なかなかの食べっぷりっすね」

「いや、お前には負けるさ。無尽蔵なのだな、流石の俺でもその量は食べきれない」

「ははっ、やっぱおかしいっすかね? 食べるの大好きなもんで、ぶっちゃけまだまだ行けるっすよ」

「おかしくはないさ、食べる事は満たす事だろう。心を満たせば幸福になれる。俺も食べるという行為は大好きだ」

 雪哉はスパゲティを口に運びながらそう言った。逢離の顔を見る事なく皿の上にあった山盛りのスパゲティがすぐに片付けられていく。行儀の悪い食べ方ではあったが、勢いがなければこの山を崩す事は出来なかった。残すよりはずっといい。食べきれただけでも良しとしようと雪哉が合理的に答えを見出す。

「俺の言ってる事はおかしいか?」

「いいえ、そんなことないっす……」

 そしてそんな逢離は食べ終えるまでずっと雪哉の顔を見ているだけだった。何も言わず、何かを考えたまま、ただジっと雪哉を見つめている。

「どうした? 食わないのか?」

 ナプキンで口元についたケチャップをふき取りながら横目で逢離を見た。その言葉で止まっていた逢離の時間が動き出したように、ビクっと身体を震わせて逢離もまた食事を再開する。もはや形容するのも躊躇う物量。山盛りという言葉が単純に間違っているとわからされるようなただの「山」がトレイの上で出来上がっている。こんなもの人が食べる量かと思わされるわけだが、それでも逢離は顔色一つ変える事なく凄まじい速度で食していく。もう呑んでいるとしか思えない。雪哉以上にはしたない食べ方である。噛まずに飲み込んでいるようにすら見える。そんな食べ方、身体に負担が掛かり、健康を損なうに決まっている。だが逢離は幸せを噛み締めるように満面の笑みで食事を楽しんでいる。他人が見れば苦行にしか見えぬその食事の山をたった一人で崩していく。

 ものの数分でその山は無くなってしまった。雪哉も逢離が食べ終えるまでは一切声をかけることは出来なかった。ここまで幸せそうに食べられてしまうと逆に見ている側までそんな気持ちになってしまう。雪哉は唇に拳を当てたまま逢離を凝視していた。

「あのぉ……」

「なんだ?」

「そんなにジロジロ見られたら食べ難いっすよ」

「気にするな、それにもう食べ終わってるだろう?」

「そうっすけど……」

「確か藍園逢離だったな?」

 トレイの上が平地になって、そこで初めて会話が再開された。

 雪哉が逢離の名前を出した途端、逢離は警戒したように身を硬くする。

「おっと、警戒するなよ……別に俺は「監視者(ガーディアン)」ではない。ただお前のことが気になって名前を調べただけだ」

「がーでぃ……ああ、そ、そうっすか……」

 いつも通りの雪哉の言葉であっても、それに付いてこれる人間は限られている。やはり逢離も雪哉が何を言っているのかわからないのか気の抜けた返事をするので限界だった。

「場所を、変えようか。ここでは不味い……SSS級(トリプルSランク)の機密情報なんでな、他の人間に聞かれてもすれば、その、なんだ、困るからな」

「え、えっと、それはあたしと話がしたいってことでいいんですか?」

「その通りだ、構わないか?」

 逢離は何か考え込むように上を見ている。そしてゆっくりと天井から雪哉へ視線を移すと――

「朝、先生に紹介されてたっすよね。確か、時任……雪哉さん?」

「ああ、そうだ」

「……それで、どこに?」

 意を決したように覚悟し、表情を強張らせている。警戒こそされてはいないが、どことなく負の感情が見え隠れしているのがわかる。誰しもが雪哉を前にすればその感情を見せる事を雪哉は知っているのだから。それもそうだ、不可解な言動を延々と繰り返す男を前にして平然としてられるわけがない。悪く言えば神経を逆撫でされるのだ。上から目線で傲慢なその態度に、誰もが苛立ちさえ覚えるだろう。だが逢離のその「負」はどこか違う。

(……男が、苦手なのか?)

 一歩前進してみれば逢離は一歩後退している。雪哉が一歩後退すれば逢離は一歩前進している。逢離の中で雪哉が近付いて良い距離は2メートル強。これ以上近付けば逢離は自動的に距離を離して行く。雪哉は背中を向け、「着いて来い」と一言。白衣をまるでマントのように翻し、食堂を後にする。逢離は雪哉から離れるように後ろを歩いている。

 ともかく場所を変えるとは言ったものの遠くへ行くわけにもいかない。人目につかない建物の裏に移動した。建物にもたれ、雪哉は腕を組み、人差し指が小刻みに腕を叩く。こんなところに連れて来られてどうするつもりなのだと言わんばかりに逢離はチラチラと雪哉を見ている。

「藍園逢離、お前は……理愛をどう思う?」

「………………は?」

 まさかそんなことを聞かれるとは思っていなかったのか逢離は呆然としたまま、間抜けな声を上げてしまった。だが雪哉はふざけてなどいない。寧ろ真理を知る為、探究心から出た言葉だった。

「どうなんだ?」

「いや、その、いきなりそんなことを言われても――」

「なるほどじゃあ友達にはなりたくないわけだ」

「そんなわけ! なりたいに――――あっ!」

 無意識に飛び出した言葉を押し込むように口を塞ぐ逢離だったがもう遅い。雪哉はしてやったみたいな決め顔をしては、悪巧みを考え付いたような悪人の表情を見せ付けている。

「そうか、そうかそうか、そうだったのか、ならば僥倖。お前になら任せられる、お前だからこそ信じられる。藍園逢離よ、理愛を任せた」

「いや、さっきからなんでフルネーム……それに何を言ってんのか……」

 雪哉が逢離の横を過ぎる時もやはり逢離は身を強張らせて後退していく。雪哉はピタリと歩を止め、逢離の正面に。

「お前、男が苦手か?」

「え、ええ……まぁ、その、これでもマシにはなったんっすけどね」

「そうか、すまない。嫌な思いをさせた。ともかく、俺は知りたかっただけだ。これ以上関わりはしない。安心してくれ」

「いや、その、と、時任さんって……いつも、あんな感じなんっすかね?」

 雪哉がこれ以上追求はしないと、自分の我が侭に付き合わせたようなものだ。不快にさせたままというのは罪悪感に苛まれる気がしてならなかったが、異性そのものが苦手なのならば同じ場所にいることは苦痛だろうと、雪哉はその場を後にしようとした。だが、雪哉の背後から掛けられた言葉は理愛に関しての問いだった。

「ん? いや、俺の前では、違うな。だが、俺の前だけだ。だからそれ以外にはあんな感じだろうな」

「そうっすか……ありがとうございます」

「いや、気にするな。後、行きのバスの中で理愛を庇ってくれた事、感謝する」

 そして今度こそ雪哉はその場を後にした。自分から引っ張り回しておきながら最後は放置するなんて最悪だったが、雪哉としてもこれ以上逢離を言及するつもりはない。しかし、そこまでしてどうして理愛と友達になりたいか、聞いておけばよかったと後悔したが気付いてからではもう遅い。

「ん?」

 物陰から何かが見える。木と木の間、そこに銀が見える。

 雪哉は大袈裟に溜息を吐いて、その銀に向かって歩いた。そして雪哉がそれに近付いた途端、茂みの方にその影が消えた。

「何をやっている、理愛……なんだそれは、自然に溶け込んでるつもりか?」

 銀色の草木など見たことない。

 茂みの中に隠れた理愛の頭が思いっきり見えている。緑色の中に思いっきり銀色が混じっている。これでは隠しようが無い。頭隠してなんとやら。この場合は身体はしっかり隠れているので、頭が――なのだが。

「お、隠密行動中です話しかけないで」

「隠密だと? 見つかってしまったくせにそんな事を言うのか? 隠密の言葉の意味を辞書で引き直して来い」

「に、兄さんこそわたしのクラスメイトに声を掛けて、楽しそうに、何してたんです!」

 いきなり茂みの中から理愛が飛び出しては姿を見せる。

「い、いやな理愛……会話が噛み合っていないぞ? 俺の台詞とお前の台詞、ちっとも繋がってないぞ?」

「うるさい、死ね」

「何度も殺すな」

 それは理愛の口癖だ。だが口癖で幾億も殺されては堪ったものではない。

「それにしてもクラスメイトだなんて、お前の口から出るとは思わなかったぞ」

「わ、わたしのクラスメイトに変わりはないでしょう」

「そうか? 他人の事など気に掛けないお前だ。今、俺が喋っていた女の名前すらお前は知らないと言ってもおかしくないのにな」

「うるさいですね……死ねばいいのに」

「お前の言葉一つで生命を絶てるなら今頃、世界の過半数は死滅しているだろうな」

「わかりましたよ、ちょっと気になったから追いかけただけです」

「お前、俺たちより先に食堂出たよな?」

「ええそうですよ出ましたよ。でも兄さんがいきなり話してるの見たら気になったんですよ悪いんですか? 悪くないですよ、別にわたしの勝手ですよ」

 捲くし立てるように言葉をばら撒き出す理愛。殆ど無茶苦茶な事を言っているような気がするが、雪哉は反論しない。しかし何か怒っているようにも見えるのだが雪哉にはさっぱりわからない。それどころか何故にそんなムキになっているのかすら不明だった。

「だが、藍園逢離がどうしてお前に付き纏うかはわかっただろう?」

 理愛の怒りの原因はとにかく置いておく。

 そして逢離の行動の理由は明確にされた。理愛も一緒にいたのならば、さっきの逢離の反応も見ていた筈だろう。

「それが、どうしたんですか……?」

「嫌か?」

「いいえそんなことは。でも、わたしは変わりませんよ。変わるわけ、ないんですから」

 これ以上の会話も無駄だと言いたいのか、理愛はそのまま雪哉の言葉を拒絶している。言葉の意味ははっきりとわかっているのに、それなのに心が理解したくないようだ。

 勝手にすればいい――などとそんな言葉で片付ける。雪哉は消えようとする理愛の手を掴んだ。

「自分の身を呈した事まで、お前は拒絶するのか?」

 バスの中で逢離がした行為のこと。

 理愛を庇ってしたあの行為。理愛は下唇を噛み締める。

「わかっていますよ、あんなの……善人じゃなきゃ、出来ないです。偽善じゃ無理なことぐらい、わかってます」

「そうか、ならいい」

 逢離の行為の意味すらもわからないなどと言うのなら、さすがの雪哉も理愛の頬をひっぱ叩いていただろう。

 自分に被害を被ってまで他者を重んじる事が出来るのはそれはもう明らかな善の行為だ。藍園逢離はそれをやっていたのだ。そんな少女を軽視することなど出来ない。理愛だってわかっているのだ。感謝しなければいけない程なのだ。それなのに、それが出来ない。

「怖いか? 他人が、怖いのか?」

「ええ、また「同じ」ような目に遭うのが怖いだけです。ただそれだけの弱虫なんですよ、わたしは――」

「そうか、ならほんの一適の覚悟を足らせばいい。それだけでお前は何者にも変われる」

「そんな難しい事、言わないでくださいよ。わたしは、ずっと弱いままで、いいんです」

「お前がそれを望むなら俺はこれ以上、余計な事は言わない。お前の意見を尊重する為に俺はお前の兄をしているのだからな」

「ええ、だからもうわたしを困らせないで、わからないの。どうすればいいのか、だからもう止めて、ね? 兄さん……」

「わかったすまなかったな」

「わたし、先に行きますので」

「ああ、そうしてくれ」

 そして理愛はいなくなった。

 変わった。

 確実に理愛が変わっている事を雪哉はわかってしまった。

 もし本当に望まぬのなら、望みを絶てばいい。最初からそんな感情を抱かずに心を捨てればいい。それをしようとしない。どうすればいいかわからないような、そんな立ち振る舞い。どうすればいいかわからないということは、それは証明。答えを探している。はっきりと理愛は困らせないでと言った。困っているのだ。心がしっかりと困惑しているのだ。

 雪哉は微笑んだ。なんだ、しっかりと「人間」じゃないかと。

 結晶でありながら人の容姿と心を兼ね備えている。そんな儚い銀の少女。理愛は迷っている。だから雪哉は後一押しと、心の中で呟いたのだ。


『カカッ、アレがそうか、そうなンだナ』

 

 不協和音が響いた。

 雑音交じりの中に男か女か判別出来ぬ互いの性別が織り交じったような不気味な声だった。


「誰だ?」

『アア、お前ノ妹だったカ? アレを貰いに来タ。結晶ノ割にはヨク「考える」んダナ』

「だろう? 自慢の妹だ。しっかり悩んで考えて答えを出して欲しいものだ」

 誰であっても、自分の身内が評価される事は嬉しいものだ。

 正体不明に理愛を評価されたわけだが、そこはそんな評価を無視してその声の主を探すのが普通だろう。だが雪哉はそれをしない。常人を遥かに超えた順応性。異質な声を聞いたところで臆す事など絶対にしない。

『そうカ、なら頂クトしよう。悪イが、お前ハ邪魔だ。死んで貰オウ』

「勝手に喋って勝手に殺すな。お前を殺すぞ」

 姿も見せぬ小癪に殺させるつもりなど毛頭無い。ましてや理愛を狙っていると高言したのだ。思い通りにさせるつもいも無い。

『カカッ、「やはり」威勢がいイのだな。見タ通りの人間ダ。大丈夫、大丈夫ダ。マダ殺さナイ、ないない。もう少しダケ命を噛み締めテイロ。不安を抱ケ、不運ヲ嘆け。必ず、お前は失ウだろう』

「なんだ、貴様は預言者か? 俺の未来を予知るなどと、愚かな。俺の未来は俺だけのものだ。貴様なんぞに決め付けれる安い未来など無い」

 既に戦闘は始まっていた。ただ声を発し、己が信念を吐き出すだけ。何も知らぬ他者に雪哉の信念が覆せるわけがない。雪哉は笑う。異常なこの状況の中でも声だけの敵に恐れを抱くこと無くただはっきりと高らかに叫ぶ。

「聞け、理愛に手を出してみろ、真っ先に縊り殺してやる」

 首に親指を突き立てて、膨大な殺気を垂れ流す。そして遠くから聞こえた不協和音が完璧に遮断された。もう何も聞こえない。感じない。しかしおかしな奴だった。敵ならば隠れて黙って理愛を誘拐するなりすればいいのだ。

 それを明らかに自分は敵だと雪哉を挑発し、それどころか理愛を狙っているとはっきりと口にしたのだ。敵にしてはおかしな事をするものである。だがそんなことはどうでもいい。姿こそ見せずとも正々堂々と敵だと言って現れたのだ。迎撃するに決まっている。

 雪哉は思った。やはり「避けられない」のだと。どこに行っても変わらない。理愛はやはり狙われている。

 なら、どうする?

 戦いだ。戦うしかない。この林間学校が終わるまでは助力は一切借りる事が出来ない。前回のように曜嗣の手を借りる事も出来ない。雪哉が独りで理愛を守り通すしかないのだ。

 望むところだと雪哉は奮起する。何も無いのもつまらないと思っていたところだった。

 雪哉はギュっと拳を握り締め、建物の中へと入って行く。

 雪哉はここで誤算を犯していた。そう、雪哉は一人だと思っていた。しかし、そこにはもう一つの人影が確かにあったのだ。

 理愛との会話、そしてその不協和音と会話する雪哉を一部始終黙って見ていた少女がいた。

 

 そう、藍園逢離だ――

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