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二十歳の夏 〜海〜

ご覧頂いている方、評価して頂いた方、誠にありがとうございます。

皆様の応援だけが頼りです。

「海へ行こうよ!」


夏休みも間近の頃、千絵がまた、おかしなことを言い出した。


「…海って…三人で?」


「違うに決まってるでしょ!この前の男の子達と六人で!」


それって、冬樹も?


「何か面倒くさいからイヤ。」


だって、冬樹とはあんまり会いたくないし…。


「お願い、夏海!親友の恋を応援すると思って!」


「康太君と二人で行けばいいでしょ!」


「だって付き合ってもいないのに、いきなり海に二人きりだと気まずいじゃん!」


だから、私も気まずいの!


「私は…、行きたいな…。」


「おっ!詩織は乗り気だね。」


「この前…、冬樹君…達と、あんまり話せなかったし…。」


珍しく積極的な詩織。


また嫌な予感がした。色々な意味で…。







渋々、海に行くことになった日の朝、私はわざと、待ち合わせ場所に、時間ギリギリに着くように家を出た。


冬樹と二人で行くわけにはいかないし、途中で会っても困るし…。




「あっ、やっと来た!もう夏海、遅い!みんな来てるのに。」


「ゴメン、ゴメン。支度に手間取っちゃって!」


「海に行くのに、どんだけ支度が必要なんだよ、夏海。」


冬樹の言葉にドキッとした。


遅くなったのはあんたのせいだ!


「夏海ちゃん!時間にルーズな女の子は嫌われちゃうよ。」


この日も、詩織は楽しそうだった。


集合時間には間に合ったはずなのに…。


「ホント…、すいません…。」


みんなに謝りながら私は、『夏海』と冬樹に呼ばれたのはいつ以来だろう?…と考えていた。




この日は、夏休みに入った直後の平日だったこともあり、海はそれほど混んでいなかった。


しばらく遊んだ後、遊び疲れた私は、みんなを眺めていた。


千絵と康太君は、二人で楽しそうだ。


千絵は康太君が好きだけど、おそらく、康太君も千絵のことが好きなんだろう。


冬樹は、詩織と楽しそうに話していた。


あの男は、まったく…。


詩織が勘違いして、面倒くさいことになっても知らないよ!


この頃から、詩織は変わってきた。


前より笑うようになったし、何事にも積極的になってきた。


友達になったばかりの頃は、話し掛けないと全く喋らなかったのに…。




そんなことを考えながら、みんなを眺めていた。




「夏海ちゃん!どうしたの?」


一人でいた私に、もう一人の男の子のカズヤ君が、声を掛けてくる。


あれ?


カズキ君だっけ?


まあ、どっちでもいいや。


「ちょっと疲れたからひと休み。」


一人にして欲しいんだけどと思っていると、


「今、俺のことウザイと思ったでしょ?」


ヤバっ、顔に出てた?


彼は特に気にする様子もなく、


「夏海ちゃんって、ツンデレだよね。」


こういうところがウザイんだよね…。


「君には『ツン』はあっても、『デレ』はないから。」


ちょっと疲れてイライラしていた所為か、思わず声に出してしまう。


「…。」


唖然とする彼を残し、飲み物を買いに行った。


もしかしたら、お姉ちゃんも同じこと言うかも?と思い、後で思いだし笑いをした。







「じゃあ冬樹君、また夏海をよろしく!」


駅でみんなと別れる時、千絵が言う。


「分かった。まかせろ!」


と返す冬樹。


でも、あんたはきっと、何も分かっていない。


帰り道は、また冬樹と二人になった。




「お前、連絡しろって言ったじゃん!冷たい奴だなぁ!」


「だって、番号もアドレスも知らないもん…。」


「やっぱりそうか。実はこの前、俺も、『夏海の番号知らない』って、家に入ってから気付いたんだよ。」


「私、聞いた覚えも、教えた覚えもないし…。」


「春海さんに、夏海の番号を聞こうとも思ったけど…。」


「…!」


やっぱりコイツは、何も分かってない。


「携帯出せよ。赤外線で送るから。俺のも送るから登録しとけよ。」


私の携帯電話のアドレス帳に、初めて『立花冬樹』が登録された。


中学の時は、携帯電話を持っていなかったから。




この時はもう、気まずくはなかった。


私達はこの時、『大事な友達』に戻ることが、出来ていたのだろうか?


「お前、何か雰囲気変わったよな。」


「そう…かな?」


「ああ。丸くなったっていうか…、昔はもっとツンツンしてたような…。」




四年の月日は、私を変えることが出来たのだろうか?

冬樹への想いは、まだ消えていないのに…。


家の前で冬樹と別れた後、そんなことを考えながら、家に入る。




「ただいま。」


「おかえり。」


リビングで、雑誌を読んでいたお姉ちゃんが返事をした。


「どこか行ってたの?」


お姉ちゃんの問いかけに、ドキッとした。


「友達と…、海に行ってきた…。」


嘘じゃないよ…。


「ふーん。」


一緒に行ったのは、みんな友達だよ…、お姉ちゃん…。


冬樹も含めて…。


この時、お姉ちゃんは、何かに気付いていたのかな?







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