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伝えられなかった想い

今回から第二部開始です。


失恋の痛手を引きずったまま、冬樹のいない高校生活が始まる。


進路を決める時は、家は隣同士なのだから学校が別でも、いつでも会えると思っていた。


実際には、高校時代は冬樹の顔を一度も見ていない。


二、三回、遠目に見かけたり、後ろ姿を見かけたりしただけだった。


当時は、逆にそのほうが良かったかもしれない。


もし、バッタリ会ってしまったら、どうしていいか分からなかったから…。







冬樹がいない学校生活は、意外に楽しかった。


新しい友達も出来たし、学校行事も楽しかった。


斉藤千絵と言う親友に出会ったのも、高校生の時。


ショートカットで、明るく活発な可愛らしい女の子。


どことなく、お姉ちゃんに雰囲気が似ている。


もう一人の親友は、広田詩織。


無口でおとなしい女の子。


高校入学直後の詩織は、いつも一人でいることが多く、クラスで浮いていた。


そんな子を、放っておくことが出来ない千絵が、強引に詩織を仲間に引き入れ、私達三人はいつも一緒にいるようになる。




修学旅行の夜、二人に冬樹とのことを初めて話した。


布団に入り、夜遅くまで三人で号泣した。


私のことで、一緒に泣いてくれる人間に初めて出会えた気がした。







問題は学校ではなく、家での生活にあった。


この頃から、私達姉妹の間で、冬樹の話をしたことは一度もない。


『あの日』の私の様子からか、元から気付いていたのかは判らないが、お姉ちゃんは、私も冬樹が好きなことは気付いていたのだろう。


「冬樹君は、夏海と付き合ってると思ってたよ。」


お母さんの言葉にお姉ちゃんは、悲しそうな、申し訳なさそうな、なんとも言えない顔をした。


「冬樹君なら、春海でも、夏海でも、どっちでも嫁にくれてやるぞ。」


お父さんのおかげで、この時は笑い話で済んだが…。




私は、お姉ちゃんを困らせたいわけでも、憎いわけでもない。


だから私は、家では努めて明るく振る舞って見せた。


そんな私の姿は、お姉ちゃんにはどのように映っていたのだろうか?







どうして私じゃないんだろう…。


そう思うだけで、夜、布団に入ると涙がこぼれた。




休日、お姉ちゃんが出かけると、冬樹とデートなのだろうと思い、気分が沈んだ。




冬樹と二人で過ごす夢を何度も見た。


朝、夢を思い出して泣いた。




『あの時』、勇気を出して動けば、何かが変わったのだろうか?


勇気を出して、想いを伝えていれば…。




そんな感じで、私の高校生活は終わり、エスカレーター式で大学に進学した。


新しい恋が始まることもなく…。


終わりを告げた恋を引きずったまま…。








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