表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

冬 〜告白〜 (後編)

そして、合格発表の日。


私は、自分の受験結果よりも、冬樹のことが気になって仕方がなかった。




受験の結果は、二人ともそれぞれの高校に合格していた。


その日の放課後、友人達と高校合格を喜び合った後、帰宅した。


帰る前、冬樹の姿を探したが、もう帰った後だった。






友達と別れ、家の前に来ると、門の前に人影を見つける。


学生服を着た男の人影。


遠くからでも見間違えるはずのない、その人影。




立花冬樹だった。




高鳴る心臓を落ち着かせ、出来るだけ平静を装い、近付く。


冬樹が私に気が付き、「よう!」と言う感じで片手を挙げる。


「お前、S女(S女子大付属高校)受かったってなぁ。おめでとう。」


「冬樹もT大付属受かってたじゃん。おめでとう。」


そんなことよりも、今、聞きたいことがあった。


「…だ、誰か待ってるの?」


「ちょっとな…。」


「ふ、ふーん。」


ちょっと声が裏返ってたかも。


落ち着け私。


「…。」


「…。」


「…俺に何か用でもあるのか?」


「えっ!別に…。」


「あーそう。」


冬樹に不思議そうな顔で見つめられた。


「じゃ、じゃーね。」


「おう。…あっ、そうだ!」


「な、な、何?」


「夏海は、何があっても、大事な友達だからな。」


久しぶりに「夏海」と呼んでくれた。


「えっ!それって…」


どういう意味?


「じゃあな。」


私の言葉を遮るような別れの言葉。




私は、門をくぐると、後ろを振り返ることもなく、足早に家の中に入る。


「ただいま」も言わずに、自分の部屋に籠もる。


そうしないと、途中で涙が零れそうだったから…。




私は、着替えもせず、枕に顔を押し付けて泣いた。




私じゃなかったんだ。




部屋の外から、おばあちゃんの「夏海、帰ったの?」という声が、聞こえた気がした。







それから、どれくらい時間が経っただろう?


不意に、私の部屋をノックする音が聞こえた。


「夏海、ちょっといい?」


お姉ちゃんの声だった。


「…何?」


思いの外、冷たい声で返事をしてしまう。


「私、冬樹と付き合うことになったから…。」


私の様子を察してか、部屋の外からお姉ちゃんが報告する。


「…あーそう…。」


またしても、冷たい返事。



こうして、私の初恋は終りを告げる。


その後、冬樹とは一言も話すことなく、私達は中学を卒業した。








ここで、第一部完です

。話はまだまだ続き、もう少し大人になった夏海たちの話として第二部になります。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ