冬 〜告白〜 (後編)
そして、合格発表の日。
私は、自分の受験結果よりも、冬樹のことが気になって仕方がなかった。
受験の結果は、二人ともそれぞれの高校に合格していた。
その日の放課後、友人達と高校合格を喜び合った後、帰宅した。
帰る前、冬樹の姿を探したが、もう帰った後だった。
友達と別れ、家の前に来ると、門の前に人影を見つける。
学生服を着た男の人影。
遠くからでも見間違えるはずのない、その人影。
立花冬樹だった。
高鳴る心臓を落ち着かせ、出来るだけ平静を装い、近付く。
冬樹が私に気が付き、「よう!」と言う感じで片手を挙げる。
「お前、S女(S女子大付属高校)受かったってなぁ。おめでとう。」
「冬樹もT大付属受かってたじゃん。おめでとう。」
そんなことよりも、今、聞きたいことがあった。
「…だ、誰か待ってるの?」
「ちょっとな…。」
「ふ、ふーん。」
ちょっと声が裏返ってたかも。
落ち着け私。
「…。」
「…。」
「…俺に何か用でもあるのか?」
「えっ!別に…。」
「あーそう。」
冬樹に不思議そうな顔で見つめられた。
「じゃ、じゃーね。」
「おう。…あっ、そうだ!」
「な、な、何?」
「夏海は、何があっても、大事な友達だからな。」
久しぶりに「夏海」と呼んでくれた。
「えっ!それって…」
どういう意味?
「じゃあな。」
私の言葉を遮るような別れの言葉。
私は、門をくぐると、後ろを振り返ることもなく、足早に家の中に入る。
「ただいま」も言わずに、自分の部屋に籠もる。
そうしないと、途中で涙が零れそうだったから…。
私は、着替えもせず、枕に顔を押し付けて泣いた。
私じゃなかったんだ。
部屋の外から、おばあちゃんの「夏海、帰ったの?」という声が、聞こえた気がした。
それから、どれくらい時間が経っただろう?
不意に、私の部屋をノックする音が聞こえた。
「夏海、ちょっといい?」
お姉ちゃんの声だった。
「…何?」
思いの外、冷たい声で返事をしてしまう。
「私、冬樹と付き合うことになったから…。」
私の様子を察してか、部屋の外からお姉ちゃんが報告する。
「…あーそう…。」
またしても、冷たい返事。
こうして、私の初恋は終りを告げる。
その後、冬樹とは一言も話すことなく、私達は中学を卒業した。
ここで、第一部完です
。話はまだまだ続き、もう少し大人になった夏海たちの話として第二部になります。