冬 〜告白〜 (前編)
少し長くなるので、前編後編に分けました。
「大事な友達だから」
秋姉ちゃんの衝撃的な発言から、私達姉妹の間には、少し微妙な空気が流れる。
お互いの胸の内を探るような…。
冬休みのある日、お姉ちゃんと二人で、テレビを見ていると、
「夏海は、冬樹のこと…、どう思ってる?」
視線をテレビに向けたまま、お姉ちゃんがおもむろに口を開く。
「…どうって?」
お姉ちゃんの真意を図りかねていると、
「好きとか…、嫌いとか…。」
「好きだよ…。小さい頃からの『友達』…だし…。」
ちょっと嘘をついた。
「…お姉ちゃんは?」
「私も好きだよ…。」
「それは…、弟みたいな感じで…でしょ?」
「始めはそうだと思ってたんだけど…。」
お姉ちゃんの答えは、私の期待したものとは違っていた。
「それって…。」
お姉ちゃんも、冬樹が異性として好きってこと?
最も強力な恋敵が、こんなにも身近にいたなんて…。
しかも、私がかなうはずのない相手…。
一度回り始めた歯車を、止める術もなく月日は流れ、私達は高校入試を迎える。
結局、私は、S女子大付属を受験し、冬樹はもちろんT大付属。
合格発表の前日の昼休み、
「ねえ、ねえ、ちょっと夏海、大変、大変!」
「何が?」
「立花君が、高校受かってたら、好きな子に告白するんだって!」
「えっ!」
「男子達が話しているの聞こえちゃったの!立花君の好きな子って、もしかして、夏海じゃないかなぁ。」
「何で私よ!冬樹とは、幼なじみなだけって言ってるじゃん!」
冬樹の好きな子は、私であって欲しいと、誰よりも願っているのに、またしても素直になれなかった私。
ここで、自分に正直なっていれば…。
少しの勇気を出していれば…。
その後の人生も、変わったかも知れないのに…。
『私は冬樹が好き』
この一言が言えなかった…。