春 〜約束〜
今回から、夏海が過去の恋のフラグを振り返ります。
「わたしが、ふゆきのおよめさんになってあげる」
物心ついた時には、もう一緒にいた。
いつも、四人で遊んでいた。
うちのお姉ちゃんは、弟が欲しかったらしい。
「ねえ、秋ちゃん!私の妹と、秋ちゃんの弟を交換してよ!」
「私は冬樹が大好きだから、春ちゃんにはあげない!」
うちのお姉ちゃんと、秋姉ちゃんは、いつも冬樹を取り合っていた。
私だって、冬樹を独占したかった…。
お姉ちゃん達が幼稚園に行っている間は、私が冬樹を独占出来た。
四人で遊んでいるのは、楽しかったが、二人だけの時間は、もっと楽しかった。
私は、この頃には冬樹のことが好きだったのだろう。
当時は、『恋』だとは気付いていなかったが…。
多くの幼い男女が交わす約束。
「大きくなったら、僕のお嫁さんになってくれる?」
公園の桜が散り始める頃、桜の木の下で冬樹が言った。
「えー、どうしよっかなー」
私は、素直に返事を返さなかった。
本当は、もの凄く嬉しかったはずなのに…。
「じゃあ、私が冬樹のお嫁さんになってあげる。」
泣きそうな顔の冬樹を見て、お姉ちゃんが言った。
冬樹は、お姉ちゃんと結婚の約束をした。
素直になっていれば…。
いつしか、四人が一緒に遊ぶこともなくなり、私と冬樹は、学校でも話すことはなくなっていった。
無視しているわけではない。
二人だけになれば、普通に会話もした。
そもそも、二人だけになること事態が、なくなっていたのだ。
お姉ちゃんは、冬樹と同じ空手道場に通っていた。
帰ってくると、いつも冬樹のことを話していた。
私の知らない冬樹を、お姉ちゃんは知っていた…。
お姉ちゃんは、いつから冬樹が好きだのだろう…?