表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

番外編 花嫁の父

番外編を一話掲載します。

倉田姉妹の父親の目線です。



「お父さん、お母さん、長い間、お世話になりました。」


結婚式当日の朝、娘の春海が頭を下げる。


俺は、それだけで涙腺が崩壊した。


今日は娘の結婚式だ。







俺達夫婦には、二人の娘がいる。


上の子の春海は、小さい頃から男勝りで、妹や隣の姉弟を引き連れ、近所を暴れ回っていた。


小学生になると空手を習い始め、男勝りに拍車がかかる。


そんな娘の将来を、妻の洋子は本気で心配していた。


「夏海はいいとして、春海は将来、結婚出来ないんじゃないかしら。」







そんな春海も、中学生の頃には、少し落ち着きをみせる。


どうやら、好きな人が出来たらしいと、妻は言っていた。


ホッとすると同時に、寂しくもあった。




「春海に恋人でも出来たのかしら?夏海は何か知ってる?」


春海が高校三年になった頃、休日になるといそいそと出掛ける娘の変化に、妻が気付く。


「隣の立花冬樹と付き合ってる…。」


妹の夏海が、無表情に答えた。


そうか…、冬樹君か…。


彼なら文句が付けられないな…。




冬樹君の父親である立花雅樹(通称マサ)は、俺の幼稚園の頃からの親友だ。


マサと俺は、お互い結婚したのがほぼ同じ頃。


上の子供が生まれたのも、下の子供が生まれたのも同じ年だった。


その息子というだけで、文句が付けられない。


それに、冬樹君はしっかりしてるし、頭もいい。



小学生から習っていた空手は、大会で優勝を争うレベルだ。


マサの奥さんの佳代ちゃんが入院していた頃、まだ赤ん坊だった冬樹君の面倒を、妻が見に行っていたこともある。


俺達夫婦にとっては、息子同然だ。




他の奴の方が良かったなぁ。


その時は漠然と思った。




「冬樹君は、夏海と付き合ってると思ってた。」


妻の言葉に、


「冬樹君なら、春海でも夏海でもどっちでも嫁にくれてやるぞ。」


ちょっと強がってみせた。







それから年月が経ち、春海は冬樹君と結婚するという。


他の奴なら、いくらでも反対してやるのに。







「マサ、娘を持つ父親はつまらないよ。大事に育てても、他の男に取られちゃうんだから…。」


結婚式前日の昨日、マサと二人で酒を飲みながら、思わず愚痴をこぼす。


「タケちゃん(春海の父、剛)、そんなにイヤなら、強がらずに、もっと反対すれば良かっただろ!まぁ、そうなったら、俺がお前を説得するけどな。」


「別にイヤじゃないんだよ。冬樹君なら文句はないし。男親は色々複雑なんだよ…。お前もすぐ分かる…。」


「秋代は当分先だろ。だから、俺はまだ大丈夫だ。」


マサ達が帰った後、娘達から秋代ちゃんもプロポーズされたらしいという話を聞いた。


ざまあみろ、マサ!







そして今朝…。


「お父さん達、ちょっとここに座って!お決まりの挨拶するから!」


おいおい、やめてくれよ。

既にこの時点で、俺の涙腺は崩壊寸前だった。


「お父さん、お母さん、長い間、お世話になりました。」


涙腺崩壊。


横目で妻を見ると、泣き笑いの複雑な顔だった。


夏海は、必死に笑いを堪えている。


くそっ、夏海の奴!


お前の時は、絶対泣いてやらんからな!







その夜…。


「お父さんてば、式の間中、ずっと泣いてるんだもん!私、正直ちょっと引いちゃった。」


醜態を見せてしまった俺は、夏海に責められてしまった。


「今回は、初めてのことだったからだ!夏海の時は、二回目だから大丈夫だぞ!」


強がってみせた。


「ふーん…。」


夏海はちょっと拗ねたようだ。


「大丈夫だよ、夏海。夏海の時も、お父さんはきっと号泣だから!」


何が大丈夫なんだ、母さん。




娘を持つ父親なんて、ホントつまらん!








この話は、最終話の前に掲載する予定でしたが、カットした話です。


本編に入れる予定だった時は、夏海の目線でしたが、父親目線に書き直しました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ