↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

容疑者倶楽部

作者: ふたーなる
掲載日:2026/09/06

主人公が、旅館に来ると、なぜか探偵からの協力を依頼され、そこには容疑者となった三人の男女がいた。

その旅館の一室で探偵が推理を披露して、犯人を追い詰めていく、

はずなんだけど、・・・・なんだかおかしい。

主人公の命運はいかに。

「あ、ちょっと来てもらってもいいですか。今旅館が大変な状況で、少し手伝ってもらいたいんです。」

 彼の見た目はまさしく探偵だった。以前に何となく気になり、調べたことがあったのだが、この衣装の名前はインバネスコートというらしい。彼は身につけていなかったが、帽子の方はディアストーカーというらしい。今となっては有名になってしまっているが、もともとはカモフラージュのためのこのデザインだったそうだ。しかし、探偵が協力してほしいとは、どういうことなのだろうか。まだ彼が探偵だと決まった訳では無いが、なんだか嫌な予感がする。

 僕は彼のあとについて行った。彼はある部屋の前で止まった。彼が横にはけ、僕に部屋へ入るよう促す。僕は怖かったので、ドアノブを慎重にひねりながら、ゆっくりとドアを開けた。そこには様々な人がいた。年齢は上が50代くらいで下が20代といったところだろうか。4人の男女がそれぞれソファを存分に贅沢に使う座り方をしている。新しく人が入ってきたというのに、誰も譲ろうとしなかった。部屋の内装はなんとなく北欧の寒い地域の一般家庭のイメージで、部屋の真ん中にソファが4つ置かれていて、僕が入ってきた扉の延長線上には暖炉のようなものがあった。この部屋に6人が入るには少し狭い。全員が重苦しい空気をまとっている。もしかしたら重苦しい空気というよりも、なにか液体金属でもまとっている、といったほうが似つかわしい、そんな雰囲気だ。

 僕が入ってから少しして、先程の探偵も入ってきた。そしてインバネスコートを横にあったおそらくニトリのものと思われる木製のポールハンガーにかけ、彼は話し始めた。

「お集まりの皆さん、わざわざありがとうございます。」

全員が探偵を直視しない程度に顔を上げ、彼の話を聞き出した。

「先程、この旅館の2階の客室で殺人事件がありました。」

 探偵がニコニコしながら話をしている。殺人事件?僕はまだ来たばかりだ。怪しまれているのか?なんでこんなことになってしまったのだろう。そもそも殺人が起きたのにこんなことしていていいのか?これが終わったら本当に泊まれるのだろうか。他の5人は話を聞き始めたときと同じような様子で、彼の話を聞いていた。彼らは事前に知らされていたのだろうか。

「そして、あくまで僕の推理ですが、この中に犯人がいます。絶対に。」

 探偵が断定した。警察が来る前に犯人を逃さないように、ということなのか。しかし、他の4人に動揺する様子はない。なんとなく僕の方を見てきている感じさえする。しかし、探偵の言うことが本当ならば、この中に人殺しがいるということだ。それだけでも非常に不快である。まだ来たばかりなのだ。流石に声を上げようと思ったその時にソファに座り、誰よりも俯いていた中年と思われる男が先に声を上げた。

「探偵さんよ、犯人がわかってるなら早く教えてくださいよ。関係ない人まで巻き込まなくていいでしょ。」

メタ的に見れば、作者が犯人と思わせるために使いそうなセリフだ。しかし、これは決して物語ではない。一体どういう心情でそんなことを言っているのだろうか。犯人にしては挑戦的なセリフであり、無関係だとしてもどこか落ち着きすぎている。

「橋本学さん35歳。」

あ、思ったより若い。ちょっと老けすぎてないか。

「会社員男性。今日は会社の出張でこの旅館へ宿泊に来ている。」

「な、なんでそんなことを。」

「被害者の男性はあなたの会社のライバル会社の社員です。そんな彼と偶然一緒の旅館に泊まるなんて、ありえますかね?被害者の方の死亡推定時刻は昨晩の11時頃。今朝、私が発見したときにはすでに息絶えていました。昨晩あなたは何をしていましたか?」

なんか弱い気がする。そんなんでいいのか?

「そもそも出張で来てるから、昨日の夜だってずっと仕事をしていたよ。寝たのは十二時くらいだ。」

「先程、あなたのパソコンの履歴を見せていただいたのですが、」

「な、なんでそんなことを。誰の許可を得て。」

「あなた、そんなこと言えるんですか。履歴を見ると十一時頃にパソコンを使っていない空白の時間がありました。その時、あなたは何をしていたのですか?」

「いや俺は、俺はただトイレに行っていただけだよ。あ、あんまり

お腹の調子が良くなかったんだ。」

「ほんとにそうですか?」

「俺がやりました!!!」

え、嘘でしょ。一発目で?探偵さんほんとは違う人疑ってたんじゃないの。僕の中で殺人の衝撃を上回ってしまった。まあ、確かに怪しかったか。

 探偵は表情を変えない。まだ薄ら笑いを浮かべている。

「橋本さん、一旦落ち着きましょう。では次はあなたです。日向未来さん23歳大学生。昨日今日と、友だちとの旅行でこの旅館に泊まっていた。」

え、人またせてんのかよこいつは。ていうか、なんで進めているのだろうか。もしかして先程の橋本が誰かを庇っているのだろうか。

「あなたは昨日の夜何をしていましたか?」

「私は、その、一緒に来てる友達と温泉に入っていました。友達に聞けばわかります。私じゃないです。」

 こういうことを言う人ほど怪しんだけどな。なんとなく探偵に感情移入してしまう自分がいた。

「昨日の温泉までの廊下の監視カメラの映像を見せてもらいました。そこにはあなたもあなたの友達も写っていません。」

もう、その友達も呼んでこいよ。そんなことを思ったが、彼はまだ続ける。

「他に道はありませんよ。」

「いや、あの、温泉っていっても他の温泉に行っていたんです。ホテルの外にある誰でも入れるやつに。」

「いや、でもそんな夜中に女性だけだと危ないですよね。ほんとにですか。」

「すいません。私が、私がやりました。」

あれ、被害者との関係は、と思ったが彼女は涙を流しながら自白した。彼女はソファからずり落ちた。大学生なのに人生を棒に振ってしまうとは。

「まあ、まだですよ。次は、あなたです。堤洋平さん51歳。自営業。あなたは昨日から自身で営業する会社の慰安旅行でこの旅館に泊まっている。」

こいつはめちゃくちゃ待たせてるじゃん、と思ったが、やはり彼はまだ続ける。

「そして、被害者はあなたのところの従業員だ。」

さっきの橋本の会社はどこと争っていたのだ。もう意味がわからない。

「昨日の宴会までは彼もいたんですよ。彼は一人部屋だったので、他の従業員の誰も詳しいことがわからなくて。どうして、こんなことに。」

「あなたはきのうのよ、」

「すいません僕がやりました。謝ります。許してください。」

おっと、最短記録が出てしまった。

「いや、あなた昨日の夜女性の従業員を連れ込んでセックスしてましてよね。」

「・・・、いや、僕が彼を殺してしまいました。」

「いや、あなたは昨晩ずっと自室で若い女性従業員を無理やり連れ込んでセックスをしていました。これが真実です。」

「く、クソが、。」

おいおい嘘でしょおじさん。なんだか今は殺人より悪く見えるよ。殺人で自分の罪を隠そうとしていたなんて。

 堤は土下座して、「どうか、私に違う罪をください」と言い出したので、初めて探偵も困ったような顔をして「少し黙っていてくれたら、考えてあげますよ」と言い放った。

 しかし、一体犯人は誰なのだろうか。ついに最後の一人だ。

「最後ですね。あなた、大江健太郎さん27歳会社員。昨日から趣味の温泉巡りでこの旅館に泊まっている。被害者とは中学の同級生ですね。あなたは昨日の11時頃、何をしていたのですか?」

「僕は寝ていました。明日朝イチで温泉に入ろうと思っていたので。あと、かなりの長旅で疲れていたので。」

「被害者の方のスマホから、あなたが被害者に連絡した形跡が残っています。11時頃にそっちの部屋へ行くね、と。」

「ああ、バレちゃったか。そうだよ。俺がやったんだよ。」

 推理とか必要だったのかな。しかし、流石に疑いようがない。そういえば僕はほんとにただの聴衆としてこの会に呼ばれたみたいだ。怪しまれていなくてよかった。ここで逆に一人だけ否定するのも怪しくなってしまう。

「いや、私なんです。許せなくて。」

「いや、俺だって。」

「いや、僕こそ。」

「本当に私なんですよ。」

「いや、俺がやったんだ。本当だからだ。」

 信じられない。罪をなすりつけ合うのではなく主張しあうとは。

「すいません。」

 探偵だ。探偵が喋った。

「本当は僕が彼を殺しました。」













ぎゃはははははははは!!!!!

ぱちぱちぱちぱち!!!!!!!

 え?全員が笑い出した。手をたたき、4人全員が腹を抱えながら笑っている。怖い。これは人間の怖さではない。僕には何も理解できなかった。

「やっぱりなんかおかしいなと思ってたんですよ。」

「私もなんにもやってないのに、なんかおかしいな、って思ってたら。探偵さん、まさかあなたでしたか。めちゃくちゃウケるわwwww」

「いや、これは一本取られたね。さすが探偵なだけあるよ。」

堤はまだ土下座をしているが、笑いをこらえているようだ。

 一体なにが面白いと言うのだろうか。

 しかし、彼らはそんな僕を横目に談笑しながら部屋を出ていった。もうこの部屋には僕しかいない。とんでもないものを見てしまった気がする。あの状況で誰が笑えるというのだ。彼らは異常だ。

 僕は警察に通報しようと思ったが、もう遅いということにして、そのまま宿泊する予定だった二泊分をずっと旅館で過ごし、そのまま車で帰宅した。


アイデア先行で書かせてもらいました。 

実際にこんなことになったら怖いですよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。