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ケルパ(夕餉)
夕食の食卓には、湯気の立つ肉じゃがと、二人分の茶碗が並んでいる。
向かいに座る妻が、箸を動かしながらふとこちらを見る。
「なんだか、今日は嬉しそうね」
彼は一瞬考え、少し照れたように笑った。
「今日ね、電車で面白い方に会ったんだ。ケルパをやっている方でね。若いのに、とても造詣が深くて」
「珍しいわね」
妻は驚いたように目を丸くする。
「ケルパが流行ったのって、私たちがまだ二十代の頃じゃない?」
「そうだろう? その方は、SNSで演奏している人を見て知ったそうだ」
「SNSってすごいのね。本当に、何でもあるわ」
彼は箸を止め、少し考え込む。
「……私も、SNSをやってみようかな」
妻はすぐに微笑んだ。
「いいんじゃない? あなた、ケルパ上手だし。きっと人気が出るわよ。娘が次に帰ってきたときに、やり方を聞いてみましょう」
「ああ、そうだな」
――最初に披露するなら、どの曲がいいだろうか。
そんなことを、自然と思い巡らせていた。




