表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

最終話 それから

数年後、1月上旬。

私も沙織ちゃんも市民ホールにいた。今日は私達の成人式なのだ。とは言え、成人年齢は18歳になったし、あまり大人になった実感もない。


ただ市が『はたちの集い』として毎年、成人式を行なっている。


ムツミさんが送ってくれた車から降りる。振袖姿の沙織ちゃんは・・・すごく千歳飴を持たせたくなる。私もパパとママが用意した緑色の振袖を着ている。


「岸本さん?だよね?」


自信がなさそうに声を掛けて来たのは、中学と高校が一緒だった子だ。名前は確か・・・


「高橋さん?久しぶりね」

「あ!本当だ、岸本さんもいる!ひさしぶり〜」


高橋さんとは別に3名程の女の子に囲まれる。この子達も高校で一緒だった子だ。クラスまで一緒だった子も1人いる。


「岸本さんって、高校辞めちゃったよね?今はなにしてるの?」


明らかに私を蔑める意図を持った質問だ。

いいわ。乗ってあげる。


「・・・何も。学校にも行ってないから中卒になるのかな?」

「えー、それってニートじゃん!」

「ヤバくない?」

「岸本さん、親が泣いてるんじゃない?」


言いたいように言ってくれる。

私が反論しようと息をそれなりに吸い込んだ瞬間、全く別の声がかかる。


「おや?岸本さんじゃないですか。こんなところでお会いするとは!何はともあれ、成人おめでとうございます」


白髪のヒョロっとしたおじいさんだった。


「ありがとうございます。高島市長。そちらも、暮れの選挙では4期目の当選、遅ればせながら、おめでとうございます」

「なんの、どこかのお嬢さんのおかげで、ふるさと納税が10億程増えて、税収が増していますから、実績を訴えれば楽な選挙戦でしたよ」

「うふふ、『楽』なんて言うと怒られますよ?」


パラコードは市のふるさと納税の返礼品となっていた。2000円の納税なので目当ての返礼品との端数調整で人気が出た。こちらとしても、1番コストのかかる発送を市側でやってくれるので600円で卸しても利益は出るのだ。


「お友達と歓談中に失礼しました。それでは式で」


そう言って市長は去っていく。


「今の人って市長よね?」

「何で岸川さんと?」


困惑しているから教えてあげる。


「私の経営してた会社でふるさと納税の返礼品を作っていたの。その時に知り合ったの」

「え!会社?経営?」

「ああ、今はアドバイザーみたいな立場かな?さっきも言ったけど、今は何もしてないから」


パラコード部門は社会福祉法人に譲渡して、利益の10%だけもらう契約を交わした。私は『チームで統一したデザインのものが欲しい』とか要望の打ち合わせでたまに働く程度だ。


「ああ、言い忘れてたけど、私、働く必要ないんだ。何もしなくても、株式配当とか不動産収入とかで年間1000万ぐらいはあるからね。今年は大学3年生になるんだっけ?頑張って就職活動してね」


女の子たちは絶句して、何も言えなくなった。私はそれ以上、何も言わずにその場を後にする。


沙織ちゃんのニヤニヤ顔がイラっときたけど我慢する。沙織ちゃんはそのニヤニヤ顔のまま私に言う。


「大人になったんだから」

「変わらない事も大事よ。変えられない部分もあるし」


下着とかね。2人とも振袖の下はおむつだ。


「そう言えばさ、コレ見てよ」


そう言って、沙織ちゃんはスマホを見せてくる。それに目を通して、沙織ちゃんの言いたい事を理解する。


「梓ちゃん、『母校』買おうよ?」

「中退したから『母校』ではないよ?でも、おもしろいかもね。債権を買収しちゃおうか?」


そう言って2人で笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
法律関係が気になっちゃって最後まで内容が上滑りしてました。以下に気になった点をまとめます ・未成年は法定代理人の同意がなければ日常的な行為除く契約は締結できないが、保育所を買った時に法定代理人である…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ