半年
三題噺もどき―ろっぴゃくはちじゅうに。
晴れ渡る空に、美しい三日月が浮かんでいる。
今日は朝からあいにくの雨だったようだが、今の時間は上がっているらしい。
珍しく雲も晴れている。所々星は隠れているものの、月はしっかりと見えている。
「……」
念の為、雨用のブーツを履いてきたが。
あまり意味はなかったかもしれないな。
最近は、長靴ではなくても、普通のスニーカーのような雨靴があるらしいから、それを買おうかな。ブーツのような長い物はあまり好きではない。歩きにくい。
「……」
雨が降らないようにと、少し願いながら歩いていく。
歩きなれた散歩道で、もうこれ以上見るものはないくらいに見慣れたものばかりだ。
あぁでも、家によっては、季節ごとに花をよく咲かせているところもある。
「……」
少し前までは、色鮮やかな黄色やオレンジの花が花壇を支配していたが。
気付けは、紫や青と言った紫陽花が堂々と咲いていた。
もうそんな時期なのか……そのうちここは向日葵が咲きだす。
若い頃は、自然を見て季節を感じるなんてことはなかったが……この国に来てから四季というモノを知り、自然を見てそれを感じるようになり、それが愛しく思えるようになった。
「……」
まぁ、その四季も、今は失われつつあるように思うが。
なんというか……長々と夏が居座り、気づけば冬になっていて、春と秋はどこへやら。
少し前まで桜が咲く、春の季節だったはずなのに、その頃にはもう夏かと思う程に暑かったからなぁ。こうして咲く花でも、季節は感じられるが、一番実感するのはやはり気温や天気になってしまうから。暑いと夏だなぁと思うし、寒いと冬だなぁと思う。
「……」
かく言う今日はよくわからない気温になっている。
雨が続いたせいなのかは分からないが、やけに肌寒く感じる。
家を出るときには、いらないと言ったが一応持って行けと言われたから腰にスカートのように巻いていた上着を、今はしっかり着こんでいたりする。
「……」
想像以上に風が冷たかったのだ。
雨ばかりのせいではないと思うのだけど……体感温度で言うとかなり低い。
今日の昼間はどうだったのだろうか……。雨は降っていただろうが、太陽があるからそこまで寒くはなかったのだろうか。
夜である以上、多少の冷えはあるのだけれど、久しぶりのこの寒さに少し驚いたものだ。
「……」
ひゅうと、風が吹くたびに思わず身が竦む。
先月あたりは、割とこんな感じだっただろうか……。どうだろう。自分の記憶のことなのに、もうおぼろげになっている。数日暑い日が続いたりすると、そればかりが記憶に残っている。
「……」
気づけば、五月も今日で終わりだから。
これから、いっそう夏らしくなってくるのだろう。もう一年の半分が終わってしまったらしい。……時の流れというのは恐ろしいな。色々あったようでなかったような半年だ。
ここまであっという間に終わってしまったようで、少しもったいなく感じる。
「……」
まぁ、終わっていないこともあるが。
終わったこともあるし、中途半端な状態なものもある。
それにやりたいこともあるのだ。アイツと夏祭りに行ったり、秋にもどこかに出かけたり。冬はスキーとやらに連れて行ってもいいかもしれない。
「……」
仕事だって、まだまだこれから忙しい時期は来るから、油断はできない。
そう簡単に体を崩すような質でもないのだが、心配性の鬼がいるからそこは大丈夫だろうと勝手に思っている。……まぁ、しょっちゅう自分で自覚をしろと言われるが。
「……」
ちなみに今日その鬼は、ルンルンで生キャラメルというのを作っていた。それを使った別の何かを作ろうともしているらしいが、そこは楽しみにしている。
当人の顔にはあまり出ないので、楽しそうだとかそういうのは分かりづらいが。
そこは長年一緒に居る弊害だろう。手に取るようにとまではいかなくても、分かるようになってしまった。
「……」
これから先も、そういう、何気ない日々の積み重ねというのをしていくのだろう。
あっという間に過ぎていく時間かもしれないが。
それを愛しく思うことができるように。
また、これからを、続けていこう。
「おかえりなさい」
「ただいま」
お題:ブーツ・スカート・キャラメル