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三題噺もどき4

半年

作者: 狐彪

三題噺もどき―ろっぴゃくはちじゅうに。

 




 晴れ渡る空に、美しい三日月が浮かんでいる。

 今日は朝からあいにくの雨だったようだが、今の時間は上がっているらしい。

 珍しく雲も晴れている。所々星は隠れているものの、月はしっかりと見えている。

「……」

 念の為、雨用のブーツを履いてきたが。

 あまり意味はなかったかもしれないな。

 最近は、長靴ではなくても、普通のスニーカーのような雨靴があるらしいから、それを買おうかな。ブーツのような長い物はあまり好きではない。歩きにくい。

「……」

 雨が降らないようにと、少し願いながら歩いていく。

 歩きなれた散歩道で、もうこれ以上見るものはないくらいに見慣れたものばかりだ。

 あぁでも、家によっては、季節ごとに花をよく咲かせているところもある。

「……」

 少し前までは、色鮮やかな黄色やオレンジの花が花壇を支配していたが。

 気付けは、紫や青と言った紫陽花が堂々と咲いていた。

 もうそんな時期なのか……そのうちここは向日葵が咲きだす。

 若い頃は、自然を見て季節を感じるなんてことはなかったが……この国に来てから四季というモノを知り、自然を見てそれを感じるようになり、それが愛しく思えるようになった。

「……」

 まぁ、その四季も、今は失われつつあるように思うが。

 なんというか……長々と夏が居座り、気づけば冬になっていて、春と秋はどこへやら。

 少し前まで桜が咲く、春の季節だったはずなのに、その頃にはもう夏かと思う程に暑かったからなぁ。こうして咲く花でも、季節は感じられるが、一番実感するのはやはり気温や天気になってしまうから。暑いと夏だなぁと思うし、寒いと冬だなぁと思う。

「……」

 かく言う今日はよくわからない気温になっている。

 雨が続いたせいなのかは分からないが、やけに肌寒く感じる。

 家を出るときには、いらないと言ったが一応持って行けと言われたから腰にスカートのように巻いていた上着を、今はしっかり着こんでいたりする。

「……」

 想像以上に風が冷たかったのだ。

 雨ばかりのせいではないと思うのだけど……体感温度で言うとかなり低い。

 今日の昼間はどうだったのだろうか……。雨は降っていただろうが、太陽があるからそこまで寒くはなかったのだろうか。

 夜である以上、多少の冷えはあるのだけれど、久しぶりのこの寒さに少し驚いたものだ。

「……」

 ひゅうと、風が吹くたびに思わず身が竦む。

 先月あたりは、割とこんな感じだっただろうか……。どうだろう。自分の記憶のことなのに、もうおぼろげになっている。数日暑い日が続いたりすると、そればかりが記憶に残っている。

「……」

 気づけば、五月も今日で終わりだから。

 これから、いっそう夏らしくなってくるのだろう。もう一年の半分が終わってしまったらしい。……時の流れというのは恐ろしいな。色々あったようでなかったような半年だ。

 ここまであっという間に終わってしまったようで、少しもったいなく感じる。

「……」

 まぁ、終わっていないこともあるが。

 終わったこともあるし、中途半端な状態なものもある。

 それにやりたいこともあるのだ。アイツと夏祭りに行ったり、秋にもどこかに出かけたり。冬はスキーとやらに連れて行ってもいいかもしれない。

「……」

 仕事だって、まだまだこれから忙しい時期は来るから、油断はできない。

 そう簡単に体を崩すような質でもないのだが、心配性の鬼がいるからそこは大丈夫だろうと勝手に思っている。……まぁ、しょっちゅう自分で自覚をしろと言われるが。

「……」

 ちなみに今日その鬼は、ルンルンで生キャラメルというのを作っていた。それを使った別の何かを作ろうともしているらしいが、そこは楽しみにしている。

 当人の顔にはあまり出ないので、楽しそうだとかそういうのは分かりづらいが。

 そこは長年一緒に居る弊害だろう。手に取るようにとまではいかなくても、分かるようになってしまった。

「……」

 これから先も、そういう、何気ない日々の積み重ねというのをしていくのだろう。

 あっという間に過ぎていく時間かもしれないが。

 それを愛しく思うことができるように。

 また、これからを、続けていこう。





「おかえりなさい」

「ただいま」











 お題:ブーツ・スカート・キャラメル

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