5 お世話される
クラリベールさんに用意してもらった湯船ではぁーっと深く息を吐く。
あったかいお湯は現実にしか思えない。
「そういえば、ツケマついてなかったなぁ。」
落ち着いているようで、気が動転していた私はお風呂準備の時間まで鏡を確認していなかった。さぞやひどいパンダ目になっているだろうと思ったら、すっぴんであった。
クラリベールさんによると、保護された後、神殿で浄化魔法と洗浄魔法をかけられ、害がないかチェックされたのでその時にメイクも取れてしまったのではないかとのこと。
「私のメイクは汚れかいっ!」
大変心外ではあるがしかたない。ぐちゃぐちゃのメイクで過ごさなくてよかったと言うことにしよう。
明日は、ここの主人と対面かぁ。少し緊張してしまう。不審者な私を保護してれたんだからいい人だと思うけど、ここは異世界、常識の違う世界でなにが起こるかわからない。
「ギャルってこんなときどうするのかな…」
暖かい湯の中で膝を抱えて、小さく丸くなる。
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お風呂からでると、魔法で髪を乾かしてくれた。ふわっと暖かい風が体を包んだと思うと、サラサラに乾いていた。
「えー!すごーい!魔法すごーい!!」
「風魔法と火魔法の応用です。私魔力量は多くございませんが、繊細な操作には自信がございます。」
クラリベールさんが誇らしげに言う。
「繊細に操作できないとどうなるの?」
私の質問に少し考えた後、自分の頭の上、数センチ離したあたりでふわふわ揺らして言う。
「こう、真っ直ぐな髪がくるくるとこの辺りまで持ち上がりますね。」
アフロになっちゃうってことー?!
ううーん、それはヘタな人にはお願いできないね。
そう言えば私って魔法使えるのかな?
「それでは、お夕食にいたしましょう。」
夕食はとても美味しかった。パンとサラダとスープとメインの鶏肉ぽい料理。
異世界転移してきた人の知識で料理の幅が広がっていったのだと料理人の方が教えてくれた。
すごく美味しかったのだが、明日が不安で胃から何かが込み上げる感覚があった。
けれど、悟られないようにグッと水を流し込んで堪える。
「ごちそうさま!美味しかったです!」
理想のギャルを頭に描いて、にっこり笑顔で言えたと思う。
「クラリベールさん、あとはもう部屋で休んでいいのかな?」
暗雲とした気持ちが顔を出さないように笑顔をつくる。
「もちろんでございます。先ほどのお部屋までご案内いたしますね。」
「うん。ありがとう。」
屋敷が広すぎて案内なしでは部屋まで辿り着けそうにないので、お言葉に甘えさせてもらう。
部屋に案内され、やっと1人になった。
ベッドを体を投げ出すと、急に重力に気づいたかのように体が重く布団の海に体が沈み込む。
「朝起きたら私の部屋に戻ってるといいな…」
祈るように呟いて、目を閉じた。
短すぎたので2話同時に更新します。