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12 女神様って

続きなので本日2回目投稿しちゃいます

「え?!結局その伯爵様には会えなかったってこと?!」


壮絶な生い立ちに圧倒され、聴き入っていた聖子はつい、口を挟んでしまった。


「いえ、伯爵様とは再会できましたし、今も時々遊びに行っていますよ。伯爵様の家名を覚えていなかったので難航したのですが、侯爵様がリタの覚えている情報から探し当ててくださいました。」


少しほっとして、胸に手を当てて息を吐く。


「そうなんだ。よかった。でも一緒には暮らさないの?」


「私が伯爵様を好きすぎて、いいことが起こりすぎたみたいなので…」


リタは頬をぽりっと掻いて、恥ずかしそうにつぶやく。


「前みたいに悪目立ちしちゃって、伯爵様に迷惑かけるのも嫌なので時々会うくらいでいいんです!

伯爵様もリタはもっと好きな人を増やしなさいって言います。たくさん好きな人ができれば祝福の力は色んな人に少しずつ向くからって」


「いい方だね」


「はい!伯爵様は素敵です」


にっこり笑うリタを見ていると心が温かくなる。これが女神の花効果なのか。


「なるほど。他人に利用されることもあるから女神の花がいいわけじゃないってこと?」


「まぁ、リタもそのおかげで伯爵様と会えましたし、保護してくださる方もいました。いいこともありましたので、難しいところですね。」


リタもうーんと悩んでしまった。


「詩子様もこちらに来られたばかりと言うことですし、色んなことを見るといいと思いますよ。もっとこの国を知って、好きな人をたくさん増やして、それからでもいいんじゃないでしょうか!」


にこにこ微笑んで、ずっと話を聞いていたルト君が口を開いた。


「僕がこの制度に懐疑的なのは、何もわからない幼子に認定を受けさせ補助金を自分たちのために使ったり、貴族から金を受け取って養子に出す親や、孤児を利用する者達も少なからずいるからなんだ。」


リタの話を聞いて思ってはいた。伯爵の甥ほどではなく、自分のために女神の花を利用する人は少なくないのだろうと。


「私はすべての人に自分で考え、自分の意思で審断を受けられるようにしたいと思っています。だから詩子にもこの国やそこで生きる人々、制度についてもよく知ってもらってから決断してほしい。」 


ルートランスの話をリタが補足する。


「よく勘違いしている方もいるんですけど、神殿に審断されたから能力が芽生えるわけでも周りを幸せにするわけでもないんですよ。確定診断してもらうだけです。パトロンが欲しい人には証明書がわりになりますけど、それ以外にはあんまりメリットないですね。」


なるほど、神殿の認定は血統書とか宝石の保証書のようなもので、その人自身の能力が変わるわけではないのだ。


「でも、リタちゃんは女神の花なのに、なんで伯爵様と出会うまでは辛い生活を強いられてたのかな…」


人の人生は一言で辛いと表現してしまうのは憚られたが、ずっと疑問だったのだ。女神の花が女神に愛されてる人ならば、もとから孤児にはならず幸せに暮らせていたのではないだろうか。


「それも勘違いされがちなんですけど、女神の花は幸せになるわけじゃないんですよ。女神の花が幸せを感じると周りが幸せになるだけです。」


なんということだ。周りを幸せにするけど自分は幸せになれないなんて理不尽!ただ、周りが幸せになることで、本人も巡り巡って平穏な生活を手に入れられるし、特別な能力で自ら道を切り開いていけるということらしいが。


「リタは女神の花って願ったことが叶えられる人なんじゃないかと思うんです。植物が好きだったら、育てた作物が元気に育ちますようにーって願うでしょう?でも小さい頃のリタは孤児の生活が普通だったからお金持ちになりたいとかは思ってなくて、だから孤児のままだったのかもしれません。」


つまり、孤児として生まれたリタは幸せな生活を知らなかった。だから望まなかった。だから叶えられなかった。

ただただ死にたくないと言う願いだけが叶えられたのではと言うのだ。それはなんて残酷なことだろう。幸せを知らない人は幸せを願えない。


願っていないことは叶えない。


「だから『女神の花』なんですよね。神子とか愛し子とかじゃないんですよ。ほら、花の気持ちなんて私たちも考えないじゃないですが。好きに植えて育てて、手折るんですよ。そして自分のいいように飾るんです。女神様にとってはそんな程度の存在じゃないですかね。」


リタちゃんは当事者であらからこそ、辛辣だ。辛い的に手を差し伸べず、周囲に行き過ぎた幸運をあたえる自分勝手で独りよがりな寵愛。神様は気まぐれとは現世でもよく言われていたが、この世界の女神様もなかなか自分勝手なようだ。


「私の兄も王国議会において、女神の花制度の改善要求をたびたび提出しているのですが、貴族の多くも女神の花も救われているという面もありなかなか改革は難しいようですね。」


「ルト君のお兄さん?」


「はい。現侯爵は父なのですが、高齢で体の自由が効かなくなっていたため、実務のほとんどを兄が代行しています。」


ルト君のお兄さん、ジュスタン・グライユルは王宮で大臣を務める傍ら、侯爵家の実務も担っている敏腕過重労働貴族らしい。体を大事にして欲しい。


ちなみにその上にお姉さんもいたのだが、ルト君が物心つかないうちに亡くなってしまったそうだ。


「そうだ、詩子には一度兄とも会食をしていただきたいのです。侯爵家の保護を受けているのに一度もその当主や嫡男が交流しないというのは外聞が悪いので。煩わしいと思いますがよろしくお願いします。」


グライユル侯爵家の外聞がと言ったが、これはきっと私のためだ。侯爵家に保護されているのにその当主や嫡男と交流がないというのは、私が大事にされていないと思われても仕方がない。どこかでそんな噂が流れれば、私は後ろ指を指されるのだろう。


だって、ルト君が自分たちの外聞のために私に無理を言うことはないだろうと思ったから。


「うん。私もルト君のお兄さんにご挨拶したいよ。」


侯爵家の跡取りと会食なんて緊張しかないけど、ギャルならきちんと挨拶するところだよね!

がんばるよ。

明日はまた15時に投稿します

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