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VANISH!  作者: 浮島龍美
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第4話  謎の機械と敵対組織について

 

「敵対している組織?『TRP財団』は敵対している組織があるんですか?」


「TRP財団」なんて組織も初めて聞くのに敵対している組織なんてあるのか?と蓮は思った。


「複数ある。その中でも『帝国機関』は特に敵対している」


 拓也は静かに答えた。帝国機関?帝国ホテルとか帝国劇場とかあるが、それもその類のものか?と蓮は思った。


「帝国機関?変な名前ですね・・それってどういう組織ですか?」


 蓮が拓也に「帝国機関」について聞いた。


「『帝国機関』は防衛省の外部組織で戦前からある組織みたいだ。国の組織と言っても総理大臣や防衛大臣も知らない組織だ。似たような組織に陸上自衛隊の『別班べっぱん』があるが、そっちは『別班』以上に政府や世間からも知られていない。彼らは俺達と同じように現代からタイムマシンに乗って来ている」


  拓也が帝国機関について話すと、蓮は防衛省にそんな組織が本当にあるのか?TRP財団が嘘をついているのでは無いか?と考え、「じゃあここから出ます!本当に過去に来たかどうか確かめたいので」


  蓮は立ち上がって赤瓦の家を出ようどしたが、「待て!」と拓也に止められた。


「なんでよ?やっぱり蓮達を騙すつもりでしょ?」


  蓮は拓也や沙夜を睨んだ。


「違う。騙すつもりは無い。彼らは財団と違い、表向きは防衛省職員という省庁勤めのエリートだだからぱっと見、そっちの方が信用してしまうかもしれないが、実態は差別主義者が多く、歴史修正主義的な考えを持つ組織だ。一度信用してしまえば切り捨てられるまで利用される。この時代で彼らに遭遇したら俺達に知らせるか、逃げてくれ」


「歴史修正主義」と「差別主義」、どちらも初めて聞く言葉で意味はよくわかない。でも、なんとなく歴史修正主義は歴史を変えようとしたり、無かった事にするんだろうなと思った。


 蓮は納得していないようなムスッとした表情で「じゃあ帝国機関が何でこの時代に来たの?」と聞いた。


「沖縄を利用するために来たんだろう。あれなんかも30年前に財団からタイムマシンを盗んだからな 」


「30年前にって・・どうやって隠しているんだろう?」


 蓮は拓也に質問しようとすると、突然、若くて美形の男性が「それは防衛省、もしくはそれとは別の施設の地下に隠していますよ」と突然、未来達の居間にやってきた。


「え?何?この人?」


 蓮は急に見知らぬ男性が入ってきたことに驚いていた。


「多分ロボットじゃないですか?」


 未来は男性を見てなんとなくロボットである事はわかっていた。


「そうだ。こっちはヒトガタロボットのψ(プサイ)と言って財団が開発したものだ。予防接種と言った医療技術や料理、介護、様々な事ができる。いわば俺達の世話係だ」


 拓也がヒトガタロボットψ(プサイ)を紹介すると、ψ(プサイ)は「よろしくお願いします」とお辞儀した。


ψ(プサイ)って伊波普猷のお父さんの名前みたい」


 未来はロボットの名前が伊波普猷の父親の名前に似ているので、とても喜んでいた。


「そっちはψ(プサイ)じゃなくて普済ふさいだろ」


 拓也がツッコむと、「あっそうだった」と未来は笑った。


「へぇーロボットもいるんだ。で、帝国機関の事はよくわかったけど『VANISH』って何?」


 蓮は拓也やψ(プサイ)に質問した。


「そうだ。VANISHっていうのは人の存在を消す機械で消された人は最初からこの世界に存在しなかった事になる。俺達がVANISHを回収する理由は帝国機関によって消された人達を元に戻すためだ。消された人の中には小学生もいる」


 なんと消された人達の中には子供が来たことを知ると、蓮と未来はその話を聞いて少し「ゾクッ」とした。


「VANISHって何?漫画に出て来る『どくさいスイッチ』みたいなもの?」


 未来はVANISHについて拓也に尋ねた。


「あの機械に性能は似ているが、こっちはパソコンに繋げるUSBに近い形をしている。後、これは存在を消された人達を元に戻す事が難しいし、存在を消すことができるのは人間のみだ。動物や生物を消すと、生態系が崩れるからな」


 拓也がVANISHの説明をすると、ヒトガタロボットが「補足ですが」と話し始めた。


「VANISHは『どくさいスイッチ』同様、対象者が消えた後は、対象者のいた立場が別の人物に入れ替わる事があります。もし、この時代で行動する際は注意してください。また、VANISHは一度、破壊されると、消された人もろとも死んでしまうため、元に戻せなくなります」


「へーそうなんだ」


 未来はψの話を素直に聞くと、蓮は「そのVANISHって機械も本当にあるのかどうか怪しいけどね」とψから目線を逸らしながら話した。


「残念ながらVANISHは実在している機械なのです」


 ψは蓮にお辞儀をしながら説明するが、蓮は「フン」と言う表情で目線を逸らした。


「後、俺は妻を殺した可能性がある帝国機関をここで追い詰めて、解体させる。今から俺は沙夜ーと一緒に外に出る予定があるが・・お前なんかはどうする?」


 拓也が尋ねると、沙夜が「金城さん、この時代の無戸籍者である知花さんや兼村さんを連れたら、危険じゃないの?」と意見した。確かに戸籍が無い彼らにとって外に出れば警察や軍に捕まる可能性がある。運が良ければ釈放されるが、悪ければ身元不明者という事で人身売買の被害に遭う恐れがある。他にも当時の沖縄にはマラリア、フィラリア、天然痘と言った感染症が存在し、それらに感染する危険性もあるのだ。


「でも、ここは沖縄警備隊区司令部の官舎がある。もしかしたら、そこにも帝国機関の人間がいるかもしれない。近づいたら危険だ」


 拓也が「沖縄警備隊区司令部」という聞き慣れない言葉を言った。


「『沖縄警備隊区司令部』?おじさん、もしかしてこの時代にも日本軍がいたの?」


 未来は「沖縄警備隊区司令部」と聞いて日本軍がいるのかと思った。


「はいそうです。沖縄警備隊区司令部は1888年から1920年まで続いた大日本帝国陸軍の離島防衛の1つであり、後に沖縄連隊区になる組織です」


 ψ(プサイ)は未来達に説明した。


「ありがとう。ねぇおじさん、私は別に外に出てもいいけど、蓮さんはどう?」


 未来は蓮に訊ねると、蓮はスマホをいじりながら「別にいいよ」と言い、外に出る事を拒否した。


「外に出てもいいって言ってもなーまぁ留守番するよりいいが、とにかく外に出るには本名で名乗るのもだめだし、感染症の予防接種もしないといけないな。ψ(プサイ)!未来と蓮に予防接種をしてくれ」


 拓也がψ(プサイ)に訊ねると、「はいわかりました。未来さん、蓮さん、私と一緒に医務室に行きましょう」と言い、2人を連れた。蓮は「は?何で蓮も予防接種しないといけないわけ」という表情をしながら2人は医務室に向かった。


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