異教徒の巡礼
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
全てを受け入れてくれる。
をテーマにしていた筈なのに、真逆になりました。
都内最大規模と謳われる教会に彼女は訪れた。天井に描かれた花の螺旋や、線の細い色硝子が特徴のモダンな教会だった。彼女はその内部を落ち着きなく歩き回り、それからちょこんと長椅子に腰掛けた。ため息一つ。神聖な空気に溶けていく。
「ねぇ書生の貴方、教会はお好き?」
彼女は隣に座る僕にそう問い掛けた。僕はニヤッと口角を上げて、静かに彼女の顔を覗き込む。
「勿論。ステンドグラスは綺麗だし、何より静かだ。考え事をするのに相応しい場所だよ」
傍から見れば滑稽かな? 前髪で目元を隠した上に、黒眼鏡を付けている。何処で物を見るんだ。本来の美しさが分からないだろうと指摘されるかも知れない。
けれども彼女は仄暗い目をして、端の方を指さした。
「向こうにもあるから良ければ」
彼女はそう言って、その場を後にした。長い黒髪を靡かせて、何の痕跡も残さず。
次に彼女に会ったのは最古と謳われる教会だった。この間とは異なる、昔ながらの教会堂建築。礼拝堂へと続く、規則正しく並んだ長椅子の一つに腰掛けて、この間と同じ仄暗い目をしていた。僕に気が付くと、顔を上げる。
「書生の貴方、本当に教会が好きなのね」
「君は好きでは無いのかい?」
そう問い掛けると、彼女は軽く視線を逸らした。視線は側の色硝子から前の礼拝堂へ続き、また側の色硝子へと移る。一通り見渡した後にまた此方を見た。
「ステンドグラスは綺麗だし、何より静か。でも……落ち着かない」
この間僕が話した言葉と全く同じ言葉。でも最後だけが異なる。そしてその一言が彼女と教会の関係を表しているようだった。
「ずっと気が動転して、背筋がゾッとして、私は異教徒なんだと知らされる。ずっと眺めていたい筈なのに、早く出て行きたい」
「それは美しさから? それとも恐怖から?」
人間は美しいものに目を奪われる。見蕩れてしまう。けれども同時に背筋が凍るほどの恐怖を覚える事も確かなのだ。血の凍るような美しさとはよく言ったもので。
彼女は静かに溜息を吐くと、前の天使像を眺めながらぽつりと言った。
「どっちも。神は全てをお許しになると仰るけれども、それはきっと自らの信者だけ」
それは違う。君ではなく、僕こそが異端者で、神から見放された存在なのだから。
今この瞬間、彼女の身に聖母マリア乗り移って、僕の存在そのものを否定された様に思えた。その途端、酷い動揺が早鐘を打つ。冷静になれ。きっと彼女は僕が敬虔な信徒だと思っているから出た言葉。言わば自虐に他ならない。
けれども打ちひしがれた僕の存在に気が付く事無く、彼女は静かに笑う。長い黒髪を靡かせて、何の痕跡も残す事無く。
「そろそろ行くわ。私が愛する神の元に」
僕を受け入れて下さる神は何処にいるのだろう。
ステンドグラスが有名な場所の一つは、教会だと思います。
だから行けるところは一通り見てきました。
教会って、潔癖で高潔ってイメージがあります。
訪れた途端に糸が張るようなあの感じ。
綺麗過ぎる真水に落とされた感じ。
だから眠くなんてならないし、落ち着かないんです。
それでも掲示板見てみると『何方でも』なんて張り紙がしてあるんです。
行事がありますよ。信徒でなくてもどうぞご参加下さい。って。
だから彼女達の意見と、私の感覚は一種の『選ぶ』という傲慢性な気がします。
神でもない人間が選ぶんじゃねぇ!! とシバかれそうですね。
キリスト教はよく分かりませんが、人外でも懺悔し続ける時点で赦しが与えられると思いますよ。
よく分かりませんが。