10.考える葦
俺がやってきたのは、断崖絶壁。
たった今落とされたばかりの崖を見上げる。
……崖は、藻が生えておりぬめっている。とてもじゃあないが、崖の岩をつかんで昇ることは不可能だ。
「こんなのどうやって昇れば良いんだよ……」
周囲を見渡す。
目の前には大海原。荒波が打ち寄せてきて、泳ぐことは不可能。
洞窟の中からマーキュリーさんが出てくる。
「言っとくけど、この洞窟の奥には、上に通じる道はないからね」
風が反響する音から、それは俺にも理解できた。
この洞窟はあくまで横穴でしかない。どこかへ通じてるわけじゃあない。
「君がやるべきことは一つ。この崖を登り、リリアのもとへ帰ること」
……リリア院長は、修業を付けてくれてる。つまり、こうやって崖を登ることが、俺が強くなることに繋がるってことだ。
……ならば、やる。やるしかない。
「あたしは魔法で空を飛んで、一足先に崖上にいるから」
「OK。ありがと……マーキュリーさん。薬。それと……言葉」
何度も死んで、生き返る修業。リリア院長から与えられたミッションを、脳死で……繰り返していたことだろう。
月に住んでる師匠も言っていた。
俺は才能がないから、その分、考えないといけないって。強くなるための、方法を、模索しないといけないって。
「人間は、考える葦ってね」
「なにそれ?」
「思考せよってことよ。いっぱい考えて、考え抜いて……そしたら、あなたはより強くなれるわ。グッドラック」
マーキュリーさんは魔法でホウキを出すと、それにまたがった、崖上へと一瞬で跳んでいった。
「…………」
俺には、マーキュリーさんのような、魔法の才能もない。
マイのような、圧倒的の力を持たない。
超聴覚。そして、盗賊スキル。俺の基本は、これの二つだ。
ナイフは、取り上げられている。盗賊スキルは十全に使えない。
となると……使えるのは超聴覚だけだ。
しかし……。
ザザァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
……大きすぎる潮騒のせいで、細かい音を拾うことができない。
くそっ。一体どうすりゃいいんだ……。




