08.ドS院長
俺はリリア院長のもとで、修業をすることになった。
アスクレピオス治療院の側の、断崖絶壁にて。
「では、飛び込んで貰います。ここから、海まで」
びしっ、とリリア院長が崖下を指さす。
荒れ狂う波が、崖に打ち付けられてる。
崖上までに水しぶきが飛んできてるのだ。
……仮にこっから飛びおりて無事だったとしても、あの波に流されていってしまう……。
そうしたら、死んでしまうのは確実だ。
「…………」
怖い。どうしようもないくらい、怖いのだ。
……震える手を、俺はぎゅっと握りしめる。
この恐怖に……打ち勝たねば、マイたち天才の領域に「長いです♡」
げしっ!
「「え゛……!?」」
俺、そしてマーキュリーさんが、目をむく。
崖下におちながら、俺は見た。
リリア院長が笑顔で、俺の背中を蹴っ飛ばしたのである。
「ちょ!? リリア!?」
「ではいってらっしゃーい」
おち……落ちていく……! 凄い早さだ!
くそっ!
俺はスキルを発動させる。
俺にはスティールから派生進化したスキル、【奪命】がある。
それで奪った命から、スキルを手に入れている。
それらを駆使すれば……落ちてもしなない……!
はず!
「って!? もぉ海面が!?」
やばいやばいやばい! なんとかしないといやでもなんとかって……。
ドボオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
……激しい痛みが、俺を襲った。
全身の骨が粉々に砕け散ったのが……わかる。
いてえ……いってええええ……
叫びたくても、叫ぶ気力がわいてこない。
ただ、ただ……痛い……。
「ラッキーですねぇ♡ 今ので生きてられるなんてぇ~♡」
リリア院長が崖上で何か言ってる。
荒波に飲まれ、通常なら聞こえないはずの……声。
それが、俺の耳には聞こえる。
俺のスキル、聴覚があるからな。
つか、溺れる……! やばい……骨が折れて……うごけ……な……
「い、んちょ……蘇生……治癒……はや……死ぬ……」
「? 何言ってるんですか?」
リリア院長がニコッと笑う。
「まだ、死んでないでしょぅ?」
……絶句した。
この女……俺が死ぬまで、治癒をかけないつもりだ……。
やば……。すぎる……。
あの……おんな……やば……やべ……おれ……意識……とおのいて……
「シーフ君! シーフくぅうううううううううううううううううううううん!」
……こんな場所からでも、マーキュリーさんのデカい声は、俺の耳に届いた。
意識が遠のいていく……。
俺は……改めて確信した。
あの……院長……ドSだ。
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