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09.バディ結成、兄妹が共に規格外と判明し驚かれる



 

 翌日。

 俺はギルマスである、ヘンリエッタさんの部屋へとやってきていた。


「おはよう、二人とも。昨日はよく眠れたかい?」


 窓際の席に座るヘンリエッタさんが、にこりと笑う。

 昨日あのあと、俺たちはギルドの所有する寮へと案内してもらったのだ。


 ギルメンならだれでも使えるという寮は、めちゃくちゃ豪華だった。


「はい。ぐっすりでした。あんなふかふかなベッド初めてでした! な、マイ?」


 寮の部屋は広く清潔で、ベッドなどはすべて一流のものだった。

 マイは俺の後ろで、こくこくとうなずく。


 人見知りを発揮してる……。まあしかたない。

 なぜなら、この部屋には見知らぬ【第三者】がいるからだ。


「今日君たちを呼び立てたのはほかでもない。君たちの【バディ】を紹介しようと思ってね」

「バディ……?」


 なんだろう?

 聞いたことないな。マイを見ても、ふるふると首を横に振る。


 見知らぬ第三者さんが立ちあがり、俺たちの前へとやってくる。

 黒い帽子をかぶった、眼鏡の美女だ。


 年齢は20くらいだろうか?

 めちゃくちゃ美人だし、胸も大きく、露出の多い服を着ている。


「初めまして。あたしはマーキュリー。マーキュリー・ペンドラコ」


 マーキュリーと名乗ったその人は、俺に握手を求めてきた。

 ……心音から、彼女がヨコヤリーのように俺たちを侮っていないのがわかった。


「シーフ・バーンデッドです。こっちは妹のマイ」

「…………」


 マイがぺこっと頭を下げる。

 マーキュリーさんは「そ、二人ともよろしく」といって、俺にだけ握手をした。


「すみません。妹はちょっと」

「ヘンリエッタから聞いてるわ。コミュ障なんでしょう? なら、無理しなくていいから。よろしくね、マイちゃん?」


 マーキュリーさんはニコッと微笑みかける。

 マイが警戒を解いたのが、心音からわかった。


 ……ギルマスといい、マーキュリーさんといい、このギルドにはいいひとばかりが所属してるな。


「さて、バディの説明に入ろう。バディとは、この天与の原石独自で導入されてる、新人育成制度の一つなのだ」

「新人育成……?」


「ああ。新人は最初右も左もわからないだろう。そこで、ギルド側から、ベテラン冒険者を新人に付けて、あれこれと教育してもらう。これが、バディという制度なのだよ」


 なるほど……。

 つまり教育係兼、お目付け役みたいなものか。


「バーンデッド兄妹は、全くの素人というわけではない。が、このギルドのことは何もわからないだろう。よって、バディをつけさせてもらった」

「わかりました。色々その、気をつかってくださって、ありがとうございます」


 バディ制度はどうやら、新人全員につけられるものだ。

 俺たちだけが特別ってわけではない、が。


 こうして、新人が困らないように、配慮してくれるギルドなんて、初めてだ。大切にされてる感じがして、好感がもてる。

 なにより、マイも喜んでいる。それが重要だ。


 良いギルドに妹を入れることができて、兄ちゃんもうれしいぜ。


「ということで、しばらくはマーキュリーくんとバディを組んで活動してもらう。彼女は優秀なSランカーだ。安心して教育を受けたまえ」


■マーキュリー・ペンドラコ(年齢不詳)

種族:人間

性別:女

職業ジョブ:魔法使い


「彼女はこう見えて、長い年月を生きる魔法使いだ。さらに鑑定眼を持っている。とても優秀な人材だ」


 20歳くらいに見えるけど、もっと長生きしてるのか、この人。

 なるほど、確かに普通の人間とはまたちょっと違った、不思議な音がするしな。


「ここに所属してから、色々知ってるわ。だから、疑問があれば遠慮なく聞いてちょうだい」

「あ、じゃあ年齢はおいくつなんですか?」

「し、シーフ兄さん! じょ、女性に年齢を聞くのはし、失礼だよ!」


 マイがツッコミを入れる。


「え、でも何でも聞いていいって……」

「それでも、だめ! めっ、だよ!」

「うう、すまん……」


 マイがぺこり、マーキュリーさんに頭を下げる。


「ごめんなさい。シーフ兄さん、ちょっとデリカシーない人なんで……」


 え?

 なにそれ、兄ちゃん初耳だよ?


「あはは! 大丈夫大丈夫。あたし、失礼なクソガキの相手、慣れてるから」


 と笑って許してくれるマーキュリーさん。

 さすが年長者、このくらいじゃ動じないんだな。


「ではマーキュリー。バーンデッド兄妹をよろしく」


 俺たちはバディのマーキュリーさんとともに、ギルマスの部屋を出る。

 この部屋は建物の二階にあった。


「2階は会議室やギルメンの部屋がある。あたしたちギルメンが使うのは主に1階よ。1階は食堂、酒場が併設されてて、全部ただで飲み食いできるわ」


 こつんこつん、とマーキュリーさんが階段を降りていく。


「ほんとにただで飲み食いできるんです? どうして?」

「スポンサーがたくさんついてるのよ、このギルド」


 どうやらこのギルド、めちゃくちゃ金持のようだ。

 うーん、すごい……。


 建物の手前が食堂・酒場になっており、奥には受付カウンターがあった。

 これは、どこの冒険者ギルドでも同じだな。


 マーキュリーさんが受付カウンターへと向かう。

 そこには、かわいらしい受付嬢さんがいた。


「【マーズ】。仕事したいんだけど」

「あ、マm……!」

「んんっ。マーズ? 仕事中よぉ?」


 ? なんだろう、マーキュリーさんが凄い怖い顔を、受付嬢さんに向ける。


「あ! バーンデッド兄妹ちゃんね! はじめまして! 受付嬢のマーズ・ケミストです! よろしくです~!」


 マーズさんがびしっ、と敬礼する。

 元気ないい子だな。この人も、マイを見下してる感じの音がしない。ほんとにいい人ばかりのギルドだなぁ。


「最初は薬草拾いかな? あ、でもシーフちゃんマイちゃんは元々Dランカーなのよねぇ。こんな簡単なクエストじゃ退屈でしょ?」


 そうだな、とうなずきかける。

 が、マイがくいくい、と俺の腕をつかむ。


「あ、し、シーフ兄さん……あのあの」

「なるほど。マーズさん。それでいいよ。正式なコンビ組んでの仕事、初めてだし。最初は軽めのほうがいいって」


 こくんこくん、とマイがうなずく。

 マーキュリーさんが目を丸くしていた。


「シーフ君、いまので、マイちゃんが何言いたいのか、わかったの?」

「え、わかるでしょ? 声の感じで」


「そ、そう……? いやいくら超聴覚もちだからって、普通わからないと思うけど……。兄妹だから、以心伝心なのかしらね」

 

 まあいいわ、とマーキュリーさん。


「じゃ、初めてのクエストは薬草拾いってことで! 鑑定の魔道具貸し出します?」


 とマーズさん。

 鑑定の魔道具って、たしかすごい高価なものだった気がする。


「あ、大丈夫っす。マイが鑑定スキル持ってるんで」

「え……!?」


 驚愕の表情をする、マーズさん。

 あれ?


「ま、マイちゃん!?」

「わわわ、ま、マーキュリーさん、なんでしょう?」


 マーキュリーさんもまた、驚いた表情で、マイの肩をつかむ。

 一瞬ナイフに手がのびかけたが、別に害意はないようなので、やめといた。初日で問題は起こしたくないしな。


「鑑定スキル持ちなの!? 付与術師じゃなかったっけ!?」

「あ、あ、あ、はい。スキルあります。付与術師、です。えと……それが、どうしました?」


 困惑顔のマイ。


「あ、あのねぇ。鑑定スキルって、超レアスキルなの! 勇者の職業ジョブか、鑑定眼の、どちらかの人しか、鑑定スキルって使えないのよ!」


 あれ?

 そうなのか……?


「勇者の職業もちって、たいしたことないんでしょ?」


 だって無能カス野郎は、たいしたことないやつだったし。


「勇者は希少職レア・クラス! 1万人に一人の割合の、すごく希少な職業ジョブよ!」

「「ええ!?」」


 そうだったのか!?


「多分だけど、マイちゃんは鑑定眼持ちなんじゃない?」


 確かに勇者の職業じゃないとなると、消去法で、鑑定眼持ちになるな。


「それがマジならすごすぎよ……マイちゃん」


 マーズさんがカウンターから身を乗り出して、マイの目を見る。


「え、えっと……何が凄いんですか?」

「「鑑定眼持ちとなると、100万人に一人の割合、勇者以上に希少なのよ!」

「ええ!?」「ま、当然だな」


 妹はすごい。

 はっきりわかってんだからね。

 

 マーキュリーさんがじっ、とマイを見つめる。


「ってこれ! S級鑑定眼! 【妖精の目】じゃない! 秘匿されてる情報すら鑑定が可能な、超超レアな鑑定眼よ!」


 どうやらさらに妹はすごかったようだ!

 だろぉ?


「マイちゃん……すごい!」

「あ、あうぅう……」


 マーズさんに褒められて、マイが赤面してしまった。

 褒められ慣れてないからな。しょうがない。でもよかったなぁ。俺以外から褒めてもらえて!


「しかし超聴覚にS級鑑定眼持ちって……。こんなにも優秀なサポート能力を持ってる二人を、無能扱いとか、元パーティリーダーはどんだけ無能なのよ」


 ん? とマーキュリーさんが首をかしげる。


「そういえばシーフ君、超聴覚持ちなのよね? 耳当てとかしてないようだけど、大丈夫なの?」


 え?

 何を言い出すんだろう急に……。


「まmー……、マーキュリーさん。どういうこと? 耳当てって?」

「超聴覚スキルは、パッシブスキルなのよ。つまり、任意ではなく常時発動してるスキルなの」


 え!? とマーズさんが驚く。


「じゃ、じゃあ日常生活、大変じゃん? 色んな音を全部拾ってちゃ、頭おかしくなるよ!」

「そのとおりよマーズ。だから、超聴覚持ちは、耳当てとかで、音の入る量を調整するの。でも、シーフ君は耳当てしてないし……」


 えっと、何を言ってるんだろうか?


「スキルをオフにすればいいだけじゃないっすか」

「「はいぃ!?」」


 マーズさんとマーキュリーさんが、そろって驚いている。

 え、な、なんだ?


「ぱ、パッシブスキルをオフに!?」

「え、何驚いてるんです?」


「あ、あのねえ! スキルは二種類あるの! 常時発動型のパッシブ、任意発動型のアクティブ! で、超聴覚は前者! オンオフが任意でできないの!」

「え、できますけど……」


「だから! おかしいって言ってるの!!!!!!!!!!!!」


 マーキュリーさんが頭を抱えて叫ぶ。

 あれ? おかしいのか、俺の超聴覚……?


 マーキュリーさんは頭を抱えた状態でしゃがみ込む。


「しまった! こいつらどっちも無自覚最強パターンだ! またこの手合いかぁあ!」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] Aランカーに薬草拾い? これ又酷い設定
[気になる点] 又なのね
[一言] だからいつもエリクサー出されるんだよ。 無自覚最強型に常識を求めちゃ駄目だって。 黒鉄しかり、リーフしかり。
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