01.決意
……俺、シーフ・バーンデッドは夢を見ていた。
まだ、キルマリア師匠の元で修行していた
ときのことだ。
『ぜえ……はあ……ぜえ……』
『シーフさぁ……あんた雑魚すぎ』
月面にある、師匠の基地。
俺が倒れて星空を見上げている。
ここは宇宙? ってところらしい。
本当なら呼吸もできないそうだ。が、師匠の魔法のおかげで、できるんだと。
『シーフ……悪いけど、あんたには何の才能もないよ』
『…………』
師匠から突きつけられる、残酷な真実。
ぎり、と俺は思わず歯がみするも、しかしあっさり受け入れられていた。
『わかってるさ……マイと比べりゃ、俺なんてカスだってことくらい』
俺の妹……マイ・バーンデッドは、超有能な付与術士だ。
マイ以上に凄いやつを俺は見たことがない(師匠は例外)。
そんな才能あふれる妹と比べてたら、俺なんて……。
『シーフ。あんたの目標……妹とSSランクになることだって?』
『ああ……マイと約束したんだ。二人で最強になろうって』
『はっきり言おう。無理だ。マイと並ぶことは、今のおまえじゃ無理』
はっきり言われて、ぎりっと歯がみする俺。
それでも……。
『それでもなお、前を向く……か』
『ああ……俺は強くなりたい。マイを、守れるくらいに』
『そうかい……』
師匠は少し躊躇した後、俺の前までやってくる。
『シーフ。才能の無い人間が、強くなる方法は一つっきゃない』
『努力?』
『それは、やって当然のことだよ。才能のあるやつは等しく努力をしてる。例外なく、ね。おまえはこの先一生、努力しなきゃ行けない。これは大前提だ』
その上で、強くなるためには……。
いったいどうすりゃいいんだ?
『特化することだよ』
『特化する……?』
『そう。長所をより伸ばし、短所は切り捨てる。おまえの長所は、耳が良いってこと』
確かに俺は生まれつき異常なくらい耳が良い……。
『でも、耳が良いなんて、長所でもなんでもんないだろ?』
『今のままならね。だから鍛えるんじゃないか』
『耳の良さを?』
『そうさ』
そんなの鍛えて、一体なにになるっていうんだろうか……。
『シーフ。この世界にはね、目に見えないけど、居るってやつらがごまんといるのさ』
急にオカルトめいたこと言いただしたぞ、この人……。
『目に見えない連中ってのは、たいていヤバい連中だ。人外のバケモノさ。シーフ、おまえの耳なら、そのバケモノたちの声を聞こえるようにできる』
『!? そんなこと……できるのか?』
『ああ。これからおまえは耳を鍛えろ。そして、そこに居る連中の声を聞き、対話し、そして……力を得るんだ』
バケモノ並にすごい妹に並ぶためには、同じく、バケモノの力を借りるしかない。
俺には才能がない。
時間もない。もたついてる間に、妹は前に進んでしまう。
だから……俺は決意したのだ。
どんな手段を使ってでも、強くなろうって。たとえ、そのやり方が王道ではない、邪道だとしても……。




