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72.キレる、兄



《シーフSide》


 人工精霊イサミに案内させ、ついに、迷宮主の元へとたどり着いた……俺。


 広いホールには、マイ、ルイスさんがいた。

 二人とも無事で良かった……と思ったのもつかの間。


 マイが、迷宮の主に殺されそうになっていた。

 俺は縮地で間合いを詰め、敵の攻撃をダガーで防いだ。


「邪魔だぁあああああああああああ!」


 俺は右足で、迷宮主の土手っ腹を蹴りつける。

 どごぉおん!


 迷宮主は壁際までぶっ飛んでいった。


「マイ! 大丈夫か……マイぃ!」


 振り返って、俺は改めて、マイを見やる。


「シーフ兄さん……」

「マイ……」


 ああ、マイ……体が、ボロボロじゃないか……!

 マイをこんな風にしたのは……。


 言うまでもない、あいつだ……。

 あの……野郎だ……。


「ふはは! 素晴らしいなマイ・バーンデッド!」


 俺が結構な勢いで蹴っ飛ばしたはずなのだが、迷宮主はピンピンしてやがった。

「瀕死の重体をおっているというのに、そこのガキに一瞬でバフをかけるとはな!」

「! マイさん……バフをかけてたなんて……」


 ルイスさんが驚いてる。


「くっく……恐ろしく素早いバフ。吾輩でなければ見逃してしまっていたところだろう……。やはりマイ・バーンデッド。貴様は……」

「黙れ」


 ……マイを、この迷宮主がいじめやがった。

 マイの綺麗な肌に、傷をつけやがった。

 こいつが……マイを。

 俺の大事な……大事な。


 大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な妹を!


 傷つけやがった……!


「【おい、神】」


 俺は神の言葉……天界語で、俺に執着するクソ女神に話しかける。


【なぁに♡】


 女神の姿は見えない。

 この声を聞こえるものもいない。


 耳の良い……俺以外。


「【来い】」

【うふ♡ うふふふふふぅ~~~~~~~~~~~~~♡ いいよぉお~~~~~~~~~~~~~~♡】



 俺はもう、力を使うことに躊躇しなかった。

 ただこいつが憎かった。


 マイに痛みを、恐怖を味会わせたであろう……。

 こいつを、ただただ、殺したかった。


「【神降ろし】!」


 俺はダガーを振り上げる。

 瞬間、俺の頭上から落雷が落ちる。


「室内だというのに、落雷が発生した!? 自然現象ではない……あれが、マーキュリー先輩の言っていた……神降ろし!」


 マイが見てるとか、このあとどうなるのかとか、どうでも良かった。

 俺は今この迷宮主とかいうクソ野郎を、殺すことができれば、それでいい。


 神をこの体に下ろしたことで、俺の体が変化する。

 髪の毛が青白くなり、獣耳が生えてくる。


 神の雷を下ろした姿になる。


「兄さん……その姿……」


 マイが震えている。

 こんな姿になった兄ちゃんを、恐いと思ってくれてもいい。


 でも、俺は。

 マイに怖がられようと、この体がどうなろうと……。

 

 妹を傷つけたこのクソ野郎を、許せない!


「いくぞぉ! 死ねぇえええええええええええええええ!」


 俺は雷をまとって、跳ぶ!

 縮地に加えて、神の力を載せた跳び蹴りを食らわせる。


 今の俺は雷と同等の速さを手に入れてる。

 避けるのは絶対に不可……のはずだった。


 ドゴォオオオオオオオオオオオン!


「ふむ、なるほど。雷によって体を強化する術か」

「な、て、てめえ……」


 ……迷宮主のやつ、俺の蹴りを避けてやがった!

 耳の良い俺にはわかる。


 やつは俺の蹴りが当たる瞬間、ほんの少しだけ半身をよじって、攻撃を回避しやがったのだ!


 つつぅ……と、迷宮主の頬から血が垂れる。


「ほぉ……完全に回避したとおもったのだがな。ふむ……まあまあ面白い。マイ・バーンデッドと比べたら、全然だがな」


 ……なんだこいつ。

 神の力が通用しない……相手だと?


「少し、遊んでやろう。小僧」

「くそっ……! 調子のんな!」



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