07.ギルド試験で目立つ〜妹・魔力測定編〜
Sランク冒険者ギルド、【天与の原石】ギルドマスター、ヘンリエッタさんからスカウトされた。
俺とマイは、王都へとやってきた。
「おぉお……ここが、天与の原石……す、すげえ……!」
巨大な、白亜の建物が目の前にある。
立派すぎて一瞬、神殿かと錯覚してしまった。
が、ここがギルド会館らしい!
なんて立派な……。
「ギルド所属メンバーは100名。みな精鋭揃いさ。Sランカー、Aランカーがゴロゴロ居る」
「「す、すご……」」
「そしてこのギルドに所属すると、特典として、寮をただで利用できるうえ、ギルド会館の酒場では飲み食いがタダだ」
「「ええええええ!?」」
寮……ってことは、宿代も飯代も、ただ!?
「さ、さすがSランクギルド……」
「あの……ヘンリエッタさん。わたしたち、ホントにここに入っていいのでしょうか……? シーフ兄さんはともかく、私なんてクソ雑魚ナメクジですし……」
マイが恐縮してしまっている。
無能カスのせいで、彼女はすっかり自信を失ってしまっているのだ。
「大丈夫。私はシーフくん、マイくん、二人の実力を認めている。君たちは、私がこの【目】で選んだ、才能の原石さ」
ヘンリエッタさんの目は、きれいな
黄金の色をしていた。
「君たちはこのギルドにふさわしいだけの力を秘めている。私が保証しよう」
……俺よりも、マイをしっかり評価し、ほめてくれたことが、うれしかった。
この人は……信用できる人だ!
「……でも、反対する人がいるんじゃ」
マイはまだウジウジしていた。
仕方ない、ずっと否定され続けてきたんだ。自己肯定感が低くなるのはしょうがない。
「心配無用さ。父の代から築きあげた、この最高のギルドに、君たちを否定するような無粋な輩はいないよ。さ、中に入ろうか」
ヘンリエッタさんが前を歩いて行く。
俺とマイがそれに続く。
中に入ると、これまた凄い広くて豪華だった。
まるで一流のホテルに来てるのかと錯覚するほどの、エントランスだ。
「あ、ギルマスー!」「おつかれさまです!」「その子たちが新しい原石ですかぁ!」
ギルメンの皆さんは、わっ……とこちらにやってくる。
「ああ。シーフ・バーンデッドくんと、マイ・バーンデッドくんだ。みな、仲良くしてあげてくれ」
「「「よろしくねー!」」」
ギルメンの皆さんは、みな……俺たちを好意的に迎えてくれた!
良いところだ、ここ……!
マイの実力を認めてくれるギルマスに、最高の環境。
俺、ここに来てホントに良かった……!
と、そのときである。
「待っていたよ、ヘンリエッタ・エイジ!」
「……これは、【ヨコヤリー】ギルド協会監査員」
ヨコヤリーと呼ばれた、ちょびひげの30くらいのおっさんが、こちらにやってくる。
声の感じから、苛立ち、そして……。
「そこのガキ二人が、Aランクにこのたび推薦するという、やからかね?」
「そうだよヨコヤリー。彼らの実力は、この【ギルド協会副部長】ヘンリエッタ・エイジが保証しよう」
ヨコヤリーからは、俺らへの不信感が伝わってきた。
多分……俺たちのことを認めてくれてないのだろう。
一方ヘンリエッタさんからは、俺たちを馬鹿にされて、本気で怒っている音が聞こえてきた。
ギルメンを守ってくれる、いいマスターに出会えたことを喜びつつ……。
しかし、一定数、俺たちのことを認めないやからもいて、嫌な気分になった。
「ふん! 本部長の娘であり、最年少で副部長になったからって、調子乗るんじゃあない! 君の申し出は却下だ! こんなガキをAにしてなるものか!」
どうやら、このギルド審査員さんは、俺たちの昇進を認めようとしないらしい。
なるほど、確かにこのギルドには、俺たちを否定する人はいないか。
「ついこないだまでDのガキが、いきなりA? しかも、コモノクス・ギルマスからは、こいつらが虚偽の申告をしたと報告を受けているがね?」
「それは手違いで……」
「言い訳無用!」
どうやらヨコヤリー・ギルド協会の審査員は、俺たちをどうしたって認めてくれないようだ。
ヘンリエッタさんからは、本気でキレてる音が聞こえてきた。
俺たちのタメに怒ってるのがわかって、うれしかった。
だからこそ、俺は言う。
「じゃあ、実力を示しますよ、俺たちが、ここで」
「し、シーフ兄さん!?」
ヨコヤリーからは、言葉で言っても、絶対に信じないぞっていう硬い意思の音が聞こえてきた。
言って聞かないなら、実力を見せれば良い。
「ほぅ……良い度胸だ、小僧」
にやぁ……とヨコヤリーが邪悪に笑う。
「貴様、この元Sランク冒険者、ヨコヤリーにケンカをふっかけたこと、後悔させてやるよ」
「あんたが元Sランク? そんな弱そうな音しかしないのに?」
この男から伝わってくる色んな音(心音、筋肉の収縮音など)からは、強者のそれをまったく感じられない。
一方、ヘンリエッタさんをはじめ、天与の原石のギルメンさん達からは、きちんと、強い者が発する音を聞ける。
多分、こいつも他ギルドのギルマスにこびうって、Sにしてもらったんだろう。
「いいだろう……では、バーンデッド兄妹に、2つの試験を課す。一つは魔力測定、もう一つは実技! このヨコヤリーと戦ってもらおうか!」
試験をすると言われても、俺は別に動じなかった。
一方、マイの心音がめちゃくちゃに乱れまくる。
「し、しし、シーフ兄さん! 無理だよぉ~……。試験なんてぇ~……。私……本番に弱いタイプだから……」
マイはホントに自己肯定感が低い。
見てて可哀想になるくらいだ。
俺が励まそうとする前に……。
そっ、とヘンリエッタさんが、マイの肩に手を置く。
「心配ないよ、マイくん。君は凄い子だから」
「ギルマス……」
ああもう、ギルマス大好きだ。
マイを認めてくれるんだからな。
「じゃあまずはマイくんの魔力測定から行こうか」
「ふふん! ではこの魔力測定器を使うと良い!」
ヨコヤリーが懐から、懐中時計のようなものを取り出す。
こいつ準備いいな。
最初から試験をやるつもりだったのだろうか。
俺たちの実力を、白日の下にさらして、馬鹿にしようって魂胆でさ。
クソだなまじで。
「この測定器に魔力をこめたまえ。針が指し示す数値が、君の体の中にある魔力量だ」
測定器は懐中時計みたいな構造をしてる。
「ヨコヤリー。その魔力測定器で、十分かい? うちの古竜の魔力量すら測定できる、頑丈な測定器を貸そうか?」
そんなのあるんだ……。
「ふん! けっこうだよ。測定器に細工されても困るからね」
「忠告はしたよ。さ、マイくん。やってごらん」
ギルマスから測定器を渡される。
ちら、とマイがこっちを見てくる。
「おまえなら大丈夫さ。見せつけてやれ、おまえの本気」
「……うん。私、自分に自信ないけど……兄さんがそういうなら……がんばるっ」
マイが俺を信じて、試験を受ける気になったようだ。
大丈夫、兄ちゃんはおまえが凄いこと、誰よりもわかってるぜ。
俺だけじゃない、ヘンリエッタさん、そして俺たちを迎えてくれたギルメンの人たちにも、見せてやってくれ。
おまえの、すごさを。
「い、いきます……!」
「ああ。やってみたまえ。ま、どうせたいした魔力量じゃ……」
「えーい!」
ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!
「ほんげぇえええええええええええええええええええええええええ!」
測定器がぶっ壊れ、衝撃で、ヨコヤリーが背後にぶっ飛んでいった。
「あ、あわわ! 壊れちゃいました……!」
「どどどお、どぉーなってるんだね!? 測定器がぶっ壊れた!?」
ふふん、馬鹿め。
だからヘンリエッタさんが言ったのだ。それでいいかって。
「信じられない……この持ち運び用の魔力測定器で、測定できないレベルの魔力量っていうのか……?」
「じゃ、この古竜の魔力量も量れる測定器を使ってみようか。マイ君」
ヘンリエッタさんが、今度は振り子時計みたいな感じの、大きな測定器を持ってこさせる。
マイが魔力を込める。
「えいやぁ!」
ぐるんっ!
「針が一回転した……だとぉおおおお!?」
「え!? その……わ、私……またやっちゃいましたぁ?」
マイが怯えながら尋ねる。
一方、ヘンリエッタさんは笑顔で、マイの頭をなでる。
「合格だよ。古竜の魔力量を測定できる機器で、針が一周するほどの魔力量を見せた。十分すぎるよ」
「え、で、でも……前のギルドでは、測定結果0って……」
するとヘンリエッタさんがニコニコしながら答える。
「たぶん針が0を示したから、なしって思われたんだろうね。微動だにしなかった0と、一周して0とじゃ、意味合いが違ってくるのに。結果だけみて判断したんだろう」
ヘンリエッタさん……!
あんた……やっぱりいい人だ!
そう、前のギルドの試験の時も、今回みたいに針がぐるんと(前はぐるぐる何周も回ってたけど)回った。
でも、0を針がしめしていたから、なしって思われたのだ。
結果しか見なかった前のギルドと違って、ヘンリエッタさんは……凄いいい人だ!
「ぐ、く、くそぉ……! なんだこの魔力量……化け物か!」
「ふふ……さて、じゃあ、もう一人の化け物具合も、テストしてもらおうかな」
ぽんっ、とヘンリエッタさんが俺の肩を叩く。
「どうしたヨコヤリー。二つ目の試験は実技だろう? シーフくんと戦ってみたまえ」
ヨコヤリーは汗を拭うと、顎をあげて言う。
「ふ、ふん! こんなクソガキ……ボクがけちょんけちょんにしてやる! このSランクのボクがなぁ!」
悪いな、ヨコヤリー。あんたからは、まったくすごみを感じない。
「シーフくん、わかってると思うけど」
「はい。妹が全力を見せたんです、俺も……手は抜きませんよ」
にこりと笑って俺が言うと、ヨコヤリーは「ひっ」とちょっと怯えた音を発したのだった。
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