68.誓いを守る兄
人工精霊イサミ、そして救助者のおっちゃんたちのおかげで、俺は助かったみたいだ。
俺は自分が、依頼を受けてこの人らを助けに来た冒険者であることを明かした。
「おれらここから出れなくて困ってたんだ。救助に来てくれて、あんがとなぁ、坊主」
おっちゃんらが安堵の息をつく。
一方で、俺の胸の中にわだかまる不安は、ぬぐえない。
一刻も早く、マイとルイスさんを助けに行きたい。
けど……。
ーールイスさんとマーキュリーさんの顔が、ちらつく。
ーーそして、マイの笑顔。そして……。
ーー一緒に、最強を目指そう! という……誓い。
それらが渾然一体となり……俺の心を動かした。
ぐっ、とこらえ……言う。
「……ここから、脱出する。ついてきてくれ」
「! そんなことできるのかい?」
「ああ。他の救助者の連中も、同じ方法で外に逃がした。多分この部屋にも同じ仕掛けがあると思う」
「「「おおおー! すごい!」」」
おっちゃんたちは安堵の息をつき、歓声を上げる。
俺は直ぐに行動へと移す。
なるべく、迅速に、こいつらを脱出させるのだ。
部屋を探索すると、案の定石碑があった。
前に見たのと同じ文面が書いてある。
俺は呪文を唱えると、ポータルが起動。
「おっちゃんら、ここに乗れば外出れるから。俺はちょっとやることあるから残るけど」
「ありがとう、少年! 恩に着る!」
がしっ、とおっちゃんが俺に握手してきた。
何度も頭を下げながら、何度も……感謝の言葉を述べてきた。
「感謝なんて別に……俺はただ、仕事しただけだよ」
俺には俺の目的があるのだ。
「それでも……ありがとな、少年。このオンは一生忘れない!」
おっちゃんは俺をハグすると、ポータルに乗って外に出て行った。
全員が出ていったあと、俺はため息をつく。
『意外ね』
すぅ……とイサミが俺に近づいてきた。
『妹バカなあんたのことだから、てっきりあのおっさんたち置いてくのかとおもった』
まあ、そう思われてもしかたない。
現に今まで、俺はずっと妹以外どうでもいい、そう思いながら生きてきた。
『どういう風の吹き回しなのよ』
「別に。俺は誓いを守っただけだよ」
『誓い?』
「ああ、妹俺、二人で……最強になろうってさ」
現在、俺たちパーティは昇級のためにテストを受けている最中だ。
ここであの救助者らを置いていったら、減点は免れないだろう。
評価点が下がると、それだけ、俺たちの夢から遠のく。
そんなの嫌だった。
……それに、俺たちを推薦してくれたマーキュリーさん。
俺たちを評価してくれる、ルイスさんに、申し訳が立たない。
『ふーん……あんたも、人らしい部分あるのね』
「やかましい。……だいぶ出遅れた、さっさと行くぞ。案内しろ、羽虫」
『羽虫!? ひっどーい! 乙女になんて言い草!』
「うるせえ。さっさと案内しろ」
こうして俺はおっちゃんたちを助けたあと、いよいよ本命、マイとルイスさん救出にむかうのだった。
待っててくれ、マイ……!
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