06.最大手ギルドからスカウトされる
俺たちは拠点としてるノォーエツという街へと戻ってきた。
そこの冒険者ギルドに、ことの顛末を説明。
それから、数日後。
ノォーエツ冒険者ギルドにて。
ギルドマスターの【コモノクス】に、俺たちは呼び出された。
「なっ!? い、慰謝料を請求!? どうして俺たちが、ムノッカスに慰謝料を払わないといけないんだよ!」
ギルマスのコモノクスがふんっ、と鼻で笑う。
「シーフ。おまえたちが嘘の報告をしたからだ」
「な!? う、嘘の報告……だと?」
コモノクスの隣には、ムノッカス(と取り巻きの女ども)が座っている。
「シーフ。おまえの報告だと、ムノッカス様がおまえたちを置き去りにした。そして、ヒッチおよびバーズレが、荷物を盗んでいった……とあるな」
「ああ、そうだよ……コモノクスさん。俺は事実を客観的に述べた」
はんっ、とコモノクスは鼻で笑う。
マイが書いて提出した、報告書類を手に持って、俺の前でわざわざビリビリに破いて見せやがった!
「て、てめえ……! マイが作った報告書になにしやがるんだ!?」
「報告書? こんなの嘘まみれの妄想日記だ」
ビリビリにやぶいて、地面に捨てるコモノクス。
……こ、こいつ! マイが書いたモノを、破いたうえ、嘘だって!?
「まあ、おまえたち二人を、ムノッカス様が追放したというのは事実だろうな。なにせ、貴様らはムノッカス・パーティのお荷物、Dランカーだものな」
ムノッカスのパーティのなかで、俺たち兄妹だけが、不当に低く評価されている。
かなり頑張って、パーティに貢献したのに、未だにDだからな。
ヒッチ、バーズレですらAランクだというのに。
……そう、ムノッカスもコモノクスも、俺たち兄妹を評価してくれてないのだ。
「俺たちのランクが低いから、証言に信用性がないって言いたいんだな?」
「そのとおりだ、お荷物兄妹。むしろ、虚偽の報告をしたことによる、慰謝料を払ってもらいたいくらいだ。ムノッカス・パーティは、我がギルドのエースパーティ。その評判を落とすようなことをしたのだからな」
……だから、慰謝料を払え、と?
ふざけんな……ふざけんなよ!
「ということだ、シーフ。僕らに金を払え。そう言えば、こないだ大金が入ってきたんだろうぉ?」
ムノッカスのやろうが、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら言う。
ダンジョン攻略で手に入れた素材を売って、結構な大金を得た。
こつらは、それを俺たちから搾り取ろうとしてやがるんだ!
「ま、君らがごめんなさいして、この先一生、僕のパーティで奴隷のように働くっていうのなら、慰謝料の請求を取り下げてやってもいいけどなぁ~?」
……なんて野郎だ。
ヒッチ、バーズレも、後でムノッカスと同じく、ニヤニヤ笑ってやがる。
俺たち……というか、マイが助けた恩も忘れやがって!
この野郎!
「シーフ兄さん……あきらめよう……私たちじゃ……発言力がないもん……」
……確かに。
所詮俺たち兄妹のランクは、Dだ。
社会的な信用は、ムノッカスのほうが上。
俺らがいかに、自分たちの正しさを訴えたところで……信じてはもらえないだろう。
そのときだった。
「失礼する」
ばんっ! とギルマスの部屋の扉が開く。
「だ、誰だね君は……?」
「ほぅ、私を知らないのか? Sランクパーティのくせに」
突如として、スーツ姿の美しい女性が入ってきたのだ。
がたっ! とコノモクスが立ち上がる。
「へ、ヘンリエッタ・エイジ様!」
「ヘンリエッタ……?」
スーツ美人はヘンリエッタというらしい。
「ぎ、ギルマス? 誰だね、ヘンリエッタって……?」
「ぎ、ギルド協会副部長にして、Sランク冒険者ギルド! 天与の原石のギルドマスターだ!」
「な、なんだって!?」
なんか色々新しい単語が出てきたな……。
コモノクスのリアクションから、どうやら偉い人なのがわかった。
「バーンデッド兄妹だね?」
「あ、はい……あの、あんたは?」
「私はヘンリエッタ。王都にあるSランク冒険者ギルド、【天与の原石】でギルドマスターをしてる」
「はぁ……って、王都のギルド!?」
王都にあるギルドって言えば、冒険者ギルドの中でも花形的な存在だ。
「に、兄さん……すごいよ。Sランク冒険者ギルドの人だ」
「マイよ。冒険者ギルドにもランクってあるの……?」
「あるよ!」
そうだったんだ……。
「その、Sランクギルドのギルマスが、なんの用なんです?」
「バーンデッド兄妹を、スカウトに来たんだ」
「俺たちを……ですか?」
「ああ。うちに来れば、君たちをAランクパーティにしてあげられる」
「! ホントですか!?」
「ああ。私はそこのクズとちがって、君たちの功績を、高く買っているからね」
マジか……。
ヘンリエッタさんはコモノクスに、ゴミを見るような目を向ける。
「コモノクス。それにムノッカス。君たちは、報告をねつ造した疑惑がある」
「「してないですっ!」」
二人そろってすっとぼけてやがる。
するとヘンリエッタさんは懐から、小型の魔道具を取り出した。
カチッと中央のボタンを押すと……。
『シーフの報告書は嘘。ムノッカス様が二人を奈落に置き去りにし、ヒッチたちが道具を盗んだのも、なかったことということで、ギルド協会に報告しておきます』
『頼むよギルマス。置き去りにしたことがバレたら僕の地位が危ういからね。しかしくく……君も悪だねえ』
『いえいえ。あなた様たちには稼がせてもらってますからぁ』
……ムノッカス、コモノクスの会話が流れる。
「さて、ギルマスとギルメンが、裏で手を組んでいたという物的証拠がここにあるわけだが……何か申し開きがあるかね?」
ヘンリエッタさんが言うと、馬鹿二人が青い顔をして震える。
「ギルマスは、ギルドメンバーを公平に取り扱わねばならない。と、ギルド協会の規則にある。コモノクス、おまえはこの規則に違反してる」
「えっとぉお~……そのぉ~……」
続いて、ムノッカスを見て言う。
「君たちはメンバーをダンジョンに置き去りにしていった。しかも、非戦闘員をだ。これは明確な殺人未遂行為だ」
「さ、殺人未遂だなんて大げさな!?」
「大げさなものか。バーンデッド兄妹がたまたま強かったから、帰還できたものの、他のサポート職だったら死んでいた」
確かに、ヘンリエッタさんの言うとおりだ。
「それにヒッチとバーズレは、他人のパーティの持ち物を盗んだ。窃盗罪だな」
「「違います! 同じパーティメンバーの持ち物を借りただけで!」」
「おや? ムノッカスは二人をパーティから追放した。ここまでは事実だと、そこのバカ2名が言っていたが!?」
「「あ……!」」
じろり、とヘンリエッタさんが、バカどもをにらみつける。
「ギルマス、そしてムノッカス・パーティには、重いペナルティが課される。心しておくように」
「「「そ、そんなぁ……!!!!」」」
青ざめた顔で叫ぶ馬鹿ども。
「ゆ、許してください!」
「お願いしますぅ!」
「「このことはなかったことにしてぇ!」」
ヘンリエッタさんが彼らをにらみつけていう。
「バーンデッド兄妹を、大切に扱わなかった、おまえたちが悪い。彼らがこのギルドに大きな貢献をしてきたというのに……それを理解しないなんて……まったく度しがたいことだ」
やれやれ、とヘンリエッタさんが首を横に振る。
「お、俺たちのこと……知ってたんですか?」
「前々から目をつけていたんだ。君たちが優秀なのは知ってるよ。……改めて、我がギルドに来てはもらえないかな?」
……どういう経緯で俺らを知ったのかは、わからない。
でも、俺たち、Dランカーの言葉を信じてくれたのは事実だ。
それに、バカの陰謀から守ってくれたことも、事実。
……俺は、この人についてきたい。
「シーフ兄さん。私も……」
マイも同意見のようだ。
俺はヘンリエッタさんに頭を下げる。
「ぜひ、ギルドに入れてください!」
「ああ、大歓迎だ」
こうして、俺たちは元いたギルドを離れて、新しい、王都のSランクギルドで、厄介になることにしたのだった。
【★☆大切なお願いがあります☆★】
少しでも、
「面白そう!」
「続きが気になる!」
「すごい人にスカウトされて良かったね!」
と思っていただけましたら、
広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】から、
ポイントを入れてくださると嬉しいです!
★の数は皆さんの判断ですが、
★5をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、
最高の応援になります!
なにとぞ、ご協力お願いします!