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56.不死者も余裕で倒す



 人口精霊イサミに、迷宮主のもとへと案内させることにした。

 イサミは俺の前を飛ぶ。


【うう……どうしてアタシがこんなことを……】

「おい間違った道教えたら、どうなるかわかってるな?」


 俺は音から、相手が嘘をついてるかどうかわかる。

 イサミが嘘の道を教えた瞬間、直ぐに殺すことができる。(まあほんとに殺したら、主の場所がわからなくなるからな。脅すだけだ)


【ひっ! わ、わかってるわよぉ~……】


 しばらく通路を進んでいくと……。

 石でできた、奇妙な棺桶が、道のど真ん中にあった。


「なんだ? 棺桶……?」

【この遺跡内部には、モンスターだけじゃない、ああいうのもあるのよ】


 ぎぎぎい……と棺桶の蓋がずれる。

 そこから出てきたのは、全身に包帯を巻いた……。


「ミイラ男……?」

「UGOOOOOOOOOOO!」


 ミイラ男の身長は2メートルくらいだ。

 結構ガタイがいい。ただ、顔を含めた全身を包帯が包んでいるため、相手の年齢やら性別やらはわからない。


「UGOGOGOOOOOOOOOO!」


 ミイラ男が俺に気づいて襲いかかってきた。

 デカくてつい萎縮しそうになる。だが、相手は動きが遅い。


「縮地!」


 俺は一瞬でミイラ男の間合いに入る。

 

「雷掌!!!!!!」


 相手に触れ、ダガーに付与されたスキルを発動。

 くっ、マイがいないと攻撃パターンが限られちまうな……。やっぱマイがいないと……。


 雷掌は相手を一時的に麻痺させるスキル。

 俺はそのすきに奪命の一撃ヴォーパル・ストライクを当てようとして……気づく。


「こいつ……まさか……」

「UGOOOOOOOOOOOOO!」


 雷掌による麻痺が溶けたのか、ミイラ男が俺にパンチを放ってくる。

 俺は回避し、ダガーで腕を切り飛ばす。

 ボトッ!


 だが、予想通り、切断面からは血が一滴も垂れていなかった。


「アンデッド系モンスターか!」


 俗に言う、不死者である。

 命がない相手には、奪命の一撃ヴォーパル・ストライクは通じない。


【あはは! アンデッド相手じゃ、あんたの必殺技は通じないわねえ! やっちゃえミイラ男ぉ!】


 イサミのやつ、あとで覚えておけよ……。

 さて、相手はアンデッド、俺の奪命の一撃ヴォーパル・ストライクは通じない……。


 と、思うだろ。


「UGOOOOOOOO!」

「シッ……!」


 俺は縮地を駆使して拘束移動しながら、ダガーで切りつける。

 四肢が切断される。


 が。

 うぞぞぞぞ……と切断面から、新しい肉が生えてくる。


 再生までするようだ。

 ……再生、ね。


【きゃっはー! ミイラ男は不死者! あらゆる攻撃もこいつには無効! さぁ、終わりよぉ!】


「なにが終わりだ」


 俺は縮地を使い、ミイラ男に特攻。

 ダガーで【それ】をくりぬく。


「こいつが、再生の核……なんだろ?」


 俺の手には小さな宝玉が握られている。

 こいつからは、かなりの力の波動を感じた。


「不死者だって? 死なない、どんな攻撃を受けても再生するか。なるほど……」


 ぱきぃん! と俺は宝玉を握りつぶす。

 すると、ミイラ男が砂となって崩れ落ちた。


「この宝玉が体に生命力を吹き込んでいただけだったんだろ?」


 こいつは死なないどころか、再生して見せた。

 そんな凄い力を持ってるんだったら、そもそも最初から死なない。

 

 前提が違うんだ。

 死体に、命が吹き込まれた、それがミイラ男(不死者)なのだ。


 だとすると、命を吹き込んだ【何か】が存在するはずである。

 やつの体の音を聞いて、命を吹き込む宝玉を見つけだした。


 あとは、それを取りだして破壊すれば良い。


【なんてやつだ……信じられないわ。普通、不死のミイラ男にみんなびびってしまうのに……】

「こんなのにビビるわけないだろ」


 俺が唯一恐れるのは、マイの命が脅かされるというシチュエーションのみだ。

 

「さ、いくぞ」

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