55.リッチーも余裕
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
俺は迷宮主の元へ連れてかれた、マイとルイスさんの元へむかうことにした……。
「いいや、ルイスさんも一緒に居るとは限らないか……一旦、彼女らの居場所をマッピングするか」
……冷静だ。
命より大事な妹が取られたというのに。
……いや、冷静にならないといけないって、わかってるんだ、俺。
ここで焦って、動揺してしまったら、妹を永遠に失ってしまう。
だから、焦ってはいけない。
冷静に行動しないといけない。頭より体が、そう理解してる。だから、俺はいつも通り、動ける……と思う。
「ふぅ……」
俺はダガーの刃を、壁に打ち付ける。
しーん……。
「!? 反響音がない……?」
壁を金属で叩いたのに、音が響かないのだ。
「おい人口精霊」
【つーん】
「死にたいのか? イサミさんよ」ちゃきっ。
【ひいぃ! おたすけー!】
「じゃあ質問されたことには、素直に答えろ」
【わかったよぉう……こわぁ……】
何が怖いか。
怖いのはおまえの主だろうが。ったく。妹をどうするつもりだっての。
【今この迷宮内は、主が異界化してるの】
「異界化……?」
【物質世界とは切り離された、別の世界ね。ここでは、迷宮主の作ったルールが適用される。あんたが居た世界の物理法則が通用しないわ】
……よくわからないが、ここでは音波によるマッピングができないってことか……。
耳を澄ます。
風の音も聞こえない。
でも、人口精霊の言葉は聞こえてくる。
「おい、なんでおまえの声が聞こえるんだよ」
【それ普通にこっちのセリフなんですけど……?】
役に立たない精霊だ。
「で、イサミ。主の元へは連れてけるんだよな?」
【そ、それは……まあ。主から力の供給を受けてるし、居場所はわかるけど……】
「よしわかった。連れてけ」
【ええ……でもあんた、主のもとへ連れてったら、殺したりしない?】
「しないな」
マイが無事ならな。
【な、なんか怖い……あんた信じられないんですけど……】
「信じようが信じまいがどうでもいい。さっさと連れてけ。でないと……」
ちゃきっ。
【ひ! わ、わかったよぉ……】
ぱっ、と俺はイサミを離してやる。
俺の目には、透明なこいつの姿は見えない。
が、翅の音と、そして声から、位置がわりだせる。
【でも、あんた気をつけることね。ここは、さっきまでとは、まったく異なる場所。別のダンジョンよ。難易度が桁外れなんだから】
たしかにマッピングができないし、攻略難易度は跳ね上がってるだろう。
「出てくる敵も、さっきまでと違うってことか?」
【そうよ! ご愁傷様ね。あんたが主の元へたどり着ける確率はゼロ! 絶対にたどり着けないんだから!】
そのときだった。
ぼぅ……!
「なんだ、これ……? 炎……?」
空中に、青白い火の玉が出現した。
そいつは人の形を取り出す。
【リッチーよ! しかもただのリッチーじゃないわ! 上位リッチー!】
冒険者ギルドで聞いたことがある。
たしか、高位の呪術師や魔法使いが死に、その魂がモンスターになった姿……ってな。
【見えないだけのアタシと違って、リッチーには実体がない! だから、あんたお得意の奪命の一撃は通じないわよ! 死んだね! きゃはっはあ!】
リッチー……。
一見すると、骸骨がフードをかぶっている、死神みたいな見た目をしてる。
たしかにこいつからは、強者の音が聞こえる。
けど……それ以上に、悲しい音が聞こえてきた。
無理矢理、この世にとどまっている。
そんな音。
「おまえの命を、解放してやる」
【はい無理ですぅううう! 物理攻撃は効かないんですぅうう!】
ぱきぃん!
すぅうう……。
【って、ええええええええ!? リッチーが消えかけてるぅううううううう!?】
リッチーの体がさっきよりも透明になっていた。
こっちを見て、ぱくぱくと口を開け閉めした。
多分、お礼をしていたのだろう。
そんな音が聞こえてきた。
【あんた何したの!? リッチーには物理攻撃通じないんですけど!?】
「リッチーをこの世界に留めてる、呪縛を破壊した」
【呪縛の破壊!?】
「ああ。リッチーからは、なんか鎖みたいな音がしたんだ。多分それが魂を抑留する、呪術的なもんだったんだろ?」
マイがそうしたように、俺は魔法……というか、その呪術だけを破壊したのだ。
奪命の一撃で。
【呪術の破壊!? なにそれ! あんたの妹以外にも、そんな規格外なことできるやついるの!?】
「ここにいるだろ。バカかおまえ?」
【むきぃいいいいい!】
しかし、マイ。おまえのおかげで、助かったよ。
おまえが、魔法を破壊した。それを見て、俺は【できる】という確信を得たのである。
人間以外のものも、破壊できるって。
ありがとう、マイ。
兄ちゃん、おまえを絶対に助けるからな。
待っててくれ!
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