51.ムノッカス視点 5
《ムノッカスSide》
バーンデッド兄妹が順調にダンジョン攻略している、一方そのころ。
彼らのもとパーティパーティリーダー・ムノッカスはというと……。
「ここはどこだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
彼はシーフたちと同じダンジョンにいた。
彼は戦力外通告され、シーフたち救助隊から除外されたのである。
しかしシーフたちより優れている、と思い込んでいるムノッカスは、単独でダンジョンに入った。
そして、入ってすぐ道に迷っていたのだ。
「ちくしょう! 出口はどこだよぉ! ここはどこなんだよぉ!」
マッピング&道案内を担当していたシーフがいないのだ、迷宮内で迷子になって当然である。
また、このダンジョンは短時間にすごいスピードで再構築されている。
通路が時間経過とともに姿を変えるのだ。
盗賊が仲間にいたとしても、ダンジョン攻略は不可能。
このダンジョンを突破するためには、超優秀な盗賊が必要だった。
「くそぉ……シーフがいたときには、ダンジョンで迷子になったことなんて、一度もなかったのにぃ~」
一向に外に出れない焦燥感にかられながら、ムノッカスはバーンデッド兄妹の有用性を痛感させられていた。
「ぜえはあ……やたら荷物が重いし、体の動きもわるいしよぉお~……」
重量を下げる付与、速度や筋力を上昇させる付与を、細かくかけていた付与術師がいないのだ。
そうなって当然だった。
「はぁはぁ……ちくしょう……おれは……おれは……無能じゃない……」
自分にそう言い聞かせながらも、迷子になりながら、ムノッカスは頭の片隅でこう思っていた。
自分は、優秀なサポーターがいたから、すごかったんだと。
マイとシーフ、二人がそばにいない自分なんて、ただの無能のカスなんじゃないかと……。
ヒッチ達、そしてカスワン達が言っていたとおり……。
と、そのときである。
「GOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
頭上から、巨大なゴーレムが振ってきたのだ。
感知型トラップにひっかかってしまったのである。
もちろんシーフが居ればトラップは回避できただろう。
だが、今の彼では仕掛けに気づくことができなかった。結果……。
「え!? うぎゃぁああああああああああああああ!」
ぐしゃり、とムノッカスはゴーレムに、のしかかられる。
超重量の塊が、頭上から降ってきたのだ。
ばきごき! と体から嫌な音と、激痛が襲う。
「がは! いで……おも……や……め……」
気を失いそうになりながらも、ムノッカスはゴーレムから脱出を試みる。
だがゴーレムは重すぎて、ムノッカスの腕力ではどけることができなかった。
……ムノッカスは在りし日の自分を思い出す。
巨大な熊の魔物のこぶしを、ムノッカスは片手で受け止めることができたはず。
ゴーレムくらいどけることだって、できるはず。
でも、できない。それはどうしてか?
……もう、確定的だった。
あのときには、そばに優秀な付与術師がいた。
マイ・バーンデッド。
彼女が欲しい時に、欲しい付与をくれていたのだ。
「まいぃい……まいぃいいい! ごめんよぉおお!」
ここにいないマイに対して、ムノッカスは謝罪する。
「僕が悪かったよぉお……おまえがいないと僕なんてぇ……無能のカスだったんだぁ~」
死の淵に立たされ、彼はようやく、おのれの過ちを認めたのである。
だが、もう遅い。
今の彼のそばには、もうマイ・バーンデッドはいないのだ。
彼に付与をあたえ、超人にする力を持った優秀なサポーターは、もう……。
みしみし、ばきばき!
ムノッカスの体の骨が折れ、それが内臓に突き刺さる。
口からは血がもれ、意識がもうろうとしだす。
「ごめ……ごめぇん……ゆる、してぇえ……マイぃ」
と、そのときである。
「ふむ、貴様はあの付与術師とゆかりのある人物であるか?」
すっ、とゴーレムが体からどいたのだ。
何が起きたんだ、とムノッカスが見上げると……。
そこには、浅黒い肌をした、若い男が立っていた。
「ダーク……エルフ?」
長くとがった耳に、浅黒い肌。
彼らはダークエルフ。現代では砂漠エルフと呼ばれる亜人だ。
「吾輩はこの迷宮の主である。吾輩は、あのマイとかいう小娘に大変興味がある。が、なかなか罠に引っかからぬのでな。困っていたところである」
にぃ、と迷宮の主と名乗ったダークエルフが笑う。
「ちょうどいいところに、エサとなる蟲が転がっておったのである。これをエサに、どれ、釣りと行こうかな」
ムノッカスは、迷宮の主から漏れ出る、莫大な量の魔力におびえるしかなかった。
そして、理解する。自分は助かったのでは決してないと。
「い、いやぁ! いやだぁ! た、たすけてぇええええええええええええ!」
「五月蠅いぞ」
ぺた、と迷宮の主が、ムノッカスの頭に触れる。
その瞬間、ぼこぉ! とムノッカスの肉体が膨れ上がり、粘土のように形を変えられていく。
「あが……が、がぁああ……」
ムノッカスは後悔していた。
もしもマイを、バーンデッド兄妹を追放していなかったら、今頃こんな酷い目に会わなかったのに……と。
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